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絶滅種族の転生譚《Reincarnation tale》  作者: 記角麒麟
黄泉帰りの使徒 Apostle of the vampire
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「06」運命の誘導

 鑑定屋の情報によると、アマイ・サクは、トマヤ国の西にある、大森林との境にあるフォレオス県にいることが判明した。


 ここ、スバル県からは、モノレールや電車などで行けば、数時間かかる。


 しかし、それほど長い時間乗り物に乗っていれば、ククルカンが酔って死ぬと主張するので、現在議論しているところなのだが──。


「ダメよ!あんなに長く揺らされたら、また吐くじゃない!」


 ククルカンがまた、と言っているのは、アシロ帝国からトマヤ国のアラズ県までの長い乗り物旅で、ひどい車酔いをしていたからだ。


 思い返せば、彼女はあの時顔が真っ青で、まるで血の気が抜け落ち、さながらゾンビのようだった──というのは言い過ぎだな。


「でも、それなら走っていけっていうことになるけど?」


 フレアが机に頬杖をたてる。


 確かにそうだ。


 しかし、思い出してみれば、最初はよく走って大森林に行っていたからな....。


 体力がかなり必要だったし、精神力の鍛練にもあれはうってつけだったのだが、いつからか乗り物に頼ってしまっていたけど。


「それくらい楽勝でしょ。たかが40キロでしょ?」


 たかがって....お前の中の距離感どうなってるんだよ。


「でしたら、そのたかが40キロ、私の車で移動しませんか?」


 そう名乗り出たのはコナタだった。


(いやいやいや、さっきククルん乗り物は酔うからダメって言ってたじゃん!)


「....コナタ、お前いつから免許とってたんだよ?」


「師匠がここを離れてしばらく手持ちぶさたになっていたもので」


 俺は車のことはよく知らない。


 電気を使って走る、速い、免許がいるの三つくらいしか知らない。


 バルスにいた頃は、道が自然なものだから、馬車すら無い。


 というより、馬すらいない。


 何故なら、馬が棲めるような地形ではなかったからだ。


 代わりに大山羊はよく運搬に使ってたかな。


 足遅いけど。


 だから代わりに、遠くへはドラゴンに乗って移動していた。


 俺はコナタのそれに驚きつつ、それでいいだろ。とククルんの方を向いた。


 正直面倒くさいのだ。


「そういえば、アシロでルーナの所の車乗ってたときは大丈夫だったしな」


 チゼがそう言うと、彼女の猫耳が諦めたようにシュンと萎れた。


「わかったわよ、乗ればいいんでしょ、乗れば!」


 そんな様子の彼女を見て、俺は心の中でこう呟いた。


(ククルん、ファイト!)


 こうして、ククルカンがコナタの車で移動することが決まったのだった。


 













 それから数時間後。


 俺たちはコナタの車で、フォレオス県のとあるマンションの前についた。


「師匠、着きました。エンテナートさん、お疲れ様です」


 彼女はマンションの前に車を停めると、後部座席へと声をかけた。


 コナタの合図に過敏に反応したククルんは、すばやく外に出ると、その萎れた耳を若干元気そうに伸ばして、深呼吸をした。


「死ぬかと思ったわ....」


 現在の季節は秋。


 トマヤ国は秋と冬はかなり湿っぽくなる。


 だからか、密閉された車の中はしめじめとしており、窓を締め切って暖房をつけているため、熱が籠りやすく湿りやすい。


 猫科の特性の強い彼女にとって、車の中は非常に最悪な環境なのだろう。


 ククルカンは深呼吸をして背伸びをすると、周りを見回した。


「もしかして、この建物1つが、そのアマイって子の家じゃ無いわよね?」


「違うよ。このマンションの最上階が全部、だよ」


 うわぁ....と唸る彼女に、車から出てきたオルメスがそう答えた。


「金持ちの考えることは解らないわね....」


 彼女はほーっと感心したような声を出して、マンションを見上げた。


 そういえば、神官って金持ちじゃないのだろうか?


 あの廃協会も結構な大きさだったと思うんだけどな....。


「──はい、....え?あ、そうですか、わかりました。では、失礼します」


 誰かと電話でもしていたのか、コナタがそう言って端末を耳から離した。


「師匠、鑑定屋のおじからです。今、フォレオス県は治安が悪いらしいので、気を付けてください。との連絡です」


 コナタは大丈夫ですよね!と笑った。


(こういうのって、フラグって言うんだよな?)


 俺はその台詞に不安を覚えた。


 未来視を発動しておこう。


 何かあったら、直ぐに対応できるようにしないと。


 俺はそう心に決めて、魔法を発動したその直後。


 まるで、コナタが車を降りてその話をするのを見計らったかのようなタイミングで、車が盗まれていった。


 唖然とする俺を尻目に、車は遠く、南へ向かって走り出していった。


 え、何これ?


 何かのコントか?


(ぜんっぜん笑えない!)


 俺は、急いで車に向かって走り出した。


 車の音が出ない!という性能を逆取りされたせいか、それに気がついたのは俺以外誰もいなかった。


 なぜか、俺以外は皆、後ろを向いていたからだ。


 それは、まあ、そこに目を引くものがあったからなんだが。

 次回「07」

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