表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絶滅種族の転生譚《Reincarnation tale》  作者: 記角麒麟
我は千里の道を行く I begin to walk the very long way
52/159

「23」 我は千里の道を行く エピローグ

 数週間後。


 俺たちは、アシロ帝国皇帝、アルドルフ・テイラーに呼び出され、アシロ城応接間にやって来ていた。


「噂は聞いているぞ。お前がヤナギ・チホだな?」


 応接間の奥には、無精髭を生やした、白髪のオッサンもとい、アルドルフ・テイラーが座っていた。


「もったいないお言葉、ありがたく頂戴します。皇帝アルドルフ殿。して、どのようなよう件で、お呼びになったのでしょうか?」


 すると、彼はハッと鼻で笑い、すぐに真剣な目でこう言った。


「この国にいる殺人鬼を知っているな?」


「ええ、その通りでございます」


 すると、彼はニヤリと笑った。


「そこで本題なのだが、ヤナギ・チホ。お前、一人でその殺人鬼を退治してはくれないかな?」


 は?一人で?なぜに?


「そいつは今、神殿の地下闘技場にてとらえている。ヤナギ、お前が殺せ」


 なぜそんな回りくどいことをするのだろうか。


 おそらくとは思うが、これは、貴族たちの見世物なのではないだろうか。


 殺人鬼と英雄、戦ってどっちが勝つか、賭ける。


 確か、イルスの貴族はそういうことをすると、名前を忘れたイルスの王女が言ってたな。


「拒否した場合は?」


 俺がそう言うと、彼は杖をとんと床についた。


 すると、目の前にスクリーンが垂れ下がり、映像が映し出された。


 そこには、リーシャが縄でぐるぐる巻きにされている映像が映っていた。


 何度か映画で見たことのあるシーンだ。


 まさか、実際に見るとは思いもよらなかったが。


「なるほど、そういうことですか。拒否した場合、リーシャを殺すと」


「話が早くて助かる。無論、引き受けてくれるなら返してやろう」


 うわ、汚ぇ....。


 それでも王かよ。


(....分身を使えば、なんとか捜索はできそうだが、下手に動くと彼女の命が危ない)


 大人しくしたがってやるか。


「....わかりました」


 仕方がない。


 今はリーシャの命が先決だ。


 俺は、その申し出を受けた。


 つーか、何こいつさらっと誘拐なんて犯罪を犯してるんだよ。


 国の一番上がこれでは、世も末だな。












 そして、神殿地下闘技場。


 に、入る前に、俺はこっそり、出入り口に分身を隠しておいた。


 もし何かあったとしても、分身転移で脱出する魂胆だ。


 そして、俺は地下闘技場へと連行された。


 大勢の貴族が歓声をあげる中、有刺鉄線で囲まれたフィールドの中に、例の恥女がいた。


「またあったな、恥女」


「....」


 だよな。


 覚えてるわけないよな。


 彼女を繋いでいた鎖が、がちんという音と同時に消滅した。


 恥女が、狂った様子で、こちらを睨み付けてきた。


(なんか、最近、グダグダだな)


 そんなことを思いながら、俺は彼女に向き合った。


 瞬間、彼女の姿が消えた。


 同時に、剣無しで崩壊剣を使って、闘技場をめちゃくちゃにした。


 一気に歓声がやんだ。


「これでいいですか?」


 俺がそう言うと、周りの貴族たちが、ふざけるな!と口々にブーイングを飛ばしてきた。


「うるさい、黙れ」


 少しだけ気を混ぜて一言そう言うと、やつらはしんと静まった。


 まあ、目的は果たせたし、良しとするか。


 そういえば、あれは誰が捕まえてきたのだろうか。


「ひとつ聞いていいですか?」


 俺は静まり返ったコロシアムの中心から、そこで見ているであろうアルドルフに話しかけた。


 しばらくすると、小太りなおっさんが、台の上から答えた。


「はい、なんでしょう?」


「あれをお前らはどうやって捕まえたんだ?」


 疑問だ。


 あんなにもすばしっこい奴を、どうやって捕まえるというのだ。


「勝敗がついてから、お答えしましょう」


 彼がそう言うと、指笛をひとつ鳴らした。


 すると、崩壊剣の影響で崩れ落ちたコロシアムの瓦礫から、ごとりという音と共に、えの恥女が無傷で現れた。


(初見で回避したのか。それに、それを見破ったあいつの目....)


 フレアでも見切るのは難しいだろう。


 なら、彼のあの答えは、何か裏があるということか。


 恥女がむくりと起き上がると、こちらを見た。


 瞬間、未来視を発動させる。


 目の前に奴が飛んでくる。


 俺はそれを横に体を捻って回避する。


 とても攻撃できる時間なんてなかった。


 少し捻曲がった太い有刺鉄線の檻の天井に足をかけた。


「──」


 俺は魔法を詠唱して、カーボンナノチューブ製のワイヤーを生成し、それを槍状に組み立てた。


 ほぼ同時に、彼女は俺に跳びかかってきた。


 彼女はワイヤーを組み立てて作られた槍に貫通された。


 彼女が、槍を形成したワイヤーに内側から破壊されていく。


 そうして、彼女は死んだ。











 ハーレイの屋敷に帰ってきた頃には、既に空は夕闇に染まっていた。


 俺は、部屋に戻ると、すぐにベッドにゴロリと横になった。


 ピロン、と、端末からメールの着信を告げる音を聞いた。


(なんだろ?)


 メールを確認する。


『例の赤い液体の正体がわかった。至急、トマヤ国スバル県鑑定所まで来るように』


(赤い液体?なんのことだ?)


 添付されていた画像を開く。


 そこには、小瓶に入れられた赤い液体が写っていた。


 チラリと、昔の記憶が刺激される。


 それは、あの冬の日。


 まだ5才位だったころの、大森林で、マロックスを倒した、あの日。


 小学生の頃、コナタとリーシャと共にプールに行ったあのときに倒した、虎の魔物から出たあの赤いドロップアイテム。


(あぁ、あれか。もうどうでもいいや。しかし、鑑定を依頼したのはこっちだしな。なんか金貰えるかもしれないし、一応行っておくか)


 俺は、そんな風に思考をまとめて、旅支度をした。


 だって、アルドルフのせいで、なんかこう、イラッとしたものがたまってたものだから、いち早くこの国から出たかったんだよね、うん。


 そうして、俺はチゼとフレアとククルカンとリレルを連れて、この国を後にした。


 当然のようにルーナもついてこようとしていたが、イルグイツさんにひき止められてしまった。


 よかった、ついてこなくて。


 俺は、心底胸を撫で下ろした。

 ここまで読んでくれた読者に感謝を。


 我は千里の道を行く ━終━


 次章、黄泉帰りの使徒「01」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ