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絶滅種族の転生譚《Reincarnation tale》  作者: 記角麒麟
我は千里の道を行く I begin to walk the very long way
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「20」我は千里の道を行く2

 翌日、俺たちが旅館を出ると、外に高級そうな黒い車と一人の女性がいた。


 年齢はコナタくらいだろうか。


「ルーナ様!」


 女性は、ルーナを見るなり、声を張り上げて、こちらに近づいてきた。


「げ、アンナ....」


「何が、げ、ですか....全く。ようやく見つけましたよ。さ、一緒に来てください」


 彼女が帝王の友人の孫というあたりの話を聞いてから薄々予想はしていたが....。


 まさか『観光』が実は『脱走』だったとは。


 しかしルーナを連れ去ろうとするアンナと呼ばれた女性を、チゼは呼び止めた。


 面倒なことになりそうだ。


「ちょ、ちょっと待ってください。状況を説明してくれませんか?」


「あなたたちは?」


 まるで、そこに居たことを知らなかったかのように、アンナと呼ばれた女性は彼に聞き返した。


「俺はオリガヤ・チゼといいます。彼女とは、旅の道中で出会いました」


「ヤナギ・チホだ。これでも歳は17だ。こいつには貸しがある。理由も知らずに連れていかせることはできない」


 そういえば、まだあの殺人鬼の件は解消された訳じゃなかったしな。


 こいつがいれば、餌さとして利用できそうだし。


 俺はさらっとルーナを餌断定した。


 すると、案の定ルーナが目を輝かせて、飛び付いてきた。


「さすが私の嫁!」


「嫁!?」


 ルーナの台詞に、アンナが驚いたような表情をした。


「こら、くっつくな!」


 マイペースな奴だな。


 アンナさんもちょっと引いてるじゃないか。


「....仕方がありません。理由は車でお話ししましょう。さぁ、乗ってください。帝都テイラーに向かいます」


 彼女は諦めたように息をついて、車の扉を開けた。















 中は結構広かった。


 後部座席がコの字型のソファーになっていて、真ん中には四角いテーブルがついていた。


(白金貨何枚使ったんだろう?)


 そんなことを思いながら、俺たちは言われるがままに席につく。


 運転席には、また別の人が座っている。


「ペンドラゴン家ルーナ・ペンドラゴン様専属執事の、イルグイツと申します。以後、お見知りおきを」


 彼はそう言って名刺を一人一人に差し出していった。


 イルグイツはそれ以上何も言わず、車を出した。


 おそらくこれ以降会うこともあるまい。


 家に帰ったら、倉庫の中にでも放り込んでおくか。


「さて、現状を説明してほしいとの話でしたが、それを今から話そうと思います。ご静粛に」


 彼女はそう言うと、一つ間を置いてから話始めた。


「ルーナ様は、2ヶ月ほど前に家出をしました」


 やっぱりか。


 今までの彼女の台詞を色々照り会わせて思考すれば、だいたいそんなところだろうとは思っていたよ。


 アンナの話によると、2ヶ月前にルーナが家出をした。


 その理由は、頭のネジがとんだ狂気の英雄ヤナギ・チホに会いたかったから、ということらしい。


 現在、彼女は13歳なので、この国の法律的には、国内を好きに歩き回ることができる。


 しかし、彼女一人だけでは、国外に出られなかったため、アンナとイルグイツと共に、旅行という名目で外に出ようとしたらしい。


 そこまでは良しとしよう。


 ちゃんと周りの人に相談したんだしな。


 しかし、アンナとイルグイツに反対され、渋々一人で行くことにしたそうだ。


(ていうか、何でそんなことを彼女が知ってるんだよ)


 当時、手持ちのお金は、腕時計型端末に、電子マネーとして、白金貨30枚分持ち出していたそうだ。


(さすが貴族だな。あ、俺も一応貴族だった)


 それからの行方は、腕時計型端末のGPSをつかって探索していたらしいのだが、あるとき、信号の発信が途絶えた。


 もしやと思い、最後に信号を出していたところを探索するも、彼女は見つからず、これはもしや、人拐いにあったかと冷々していたらしい。


 しかし、とある喫茶店の常連客によると、『頭のネジがとんだ狂気英雄たちについていく白髪の女の子を見た』『踊る骨折の死神が出禁を食らった』という話を聞いたものだから、これはもしやと思い、その周辺で情報を集めていたらしい。


 そして、今に至る。


「──ご清聴、ありがとうございました」


 今の話の中にあった、GPS の信号が切れたの、たぶん俺のせいだわ。


 火鎚カグツチ使ったときの余波で電波混乱したんだわ、たぶん。


 そんな罪悪感を心に秘めながら、俺はルーナを横目で見る。


 ルーナは何やらばつの悪そうな顔をしていた。


(家出な....)


 正直、俺に会いたくて家出するなんて、誰が予想できようか。


 いや、彼女がそう言っていたってさっき言ったっけ。


「それでは、あなたたちがルーナ様と出会ってからの事を、話してもらいましょうか。無論、拒否権はありませんよ」


 アンナさん、なんか怖いな。


 一応、俺も公爵だし、執事やメイドであるこの二人よりは、地位的には高いんだし断ってもいいんだが....。


 でも、断る必要性皆無だし、いっか。


 そして、チゼはこれまでのこと、ルーナと会ってからのことを話した。


 途中、俺も補足を入れながらだけどな。


 説明が終わる頃には、帝都テイラーの中で、3番目に大きい建物、ハーレイ・ペンドラゴンの所有する屋敷に来ていた。

 次回「21」

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