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絶滅種族の転生譚《Reincarnation tale》  作者: 記角麒麟
我は千里の道を行く I begin to walk the very long way
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「12」後悔

 二年生の授業を初めて受けたとき、俺は、「飛び級なんてするんじゃなかった」と後悔した。


「──で、あるからして、この魔法陣には、同一平面式クローツタイプが用いられる。クローツタイプの作り方は、一年生の時に習ったと思うが──」


 正直、俺は魔法陣に関しては、無知と言って良いほど知識がなかった。


 ククルんはフツーに授業を受けていたが、神官ってやっぱり魔法陣に詳しかったりするんだろうか?


「は?魔法陣の種類とか作り方位、知ってて当然よ。四則演算みたいなものじゃない?」


 と、ククルんはノートを畳んだ。


「俺、正直クローツタイプとか複合式とか二重演算型とか意味不明なんだけど」


 教科書に書いてあることは、発展系のものばかりで、基礎的な知識は一切載っていなかった。


 一年最初の半年では、まだ詠唱、無詠唱の魔法しか習っていなかった。


 魔法陣については、一年生後半に習うものだったのだろう。


「まず、魔法陣には、それに見あった式によって構成されていて、それに魔力を流し込むだけで、魔法を発動させることのできる、いわば公式のようなものよ」


「魔法陣に描かれている模様や文字列のことを、魔法式と呼ぶわ。魔法式とは、魔法の命令文のことよ。チホが魔法を使うとき、イメージに魔力を流し込んでいるわよね?そのイメージを文字や模様にしたものと思ってくれていいわ」


「クローツタイプは、一つの陣に一つの魔法を組み立てるための魔法式が描かれている、最も簡単なものよ。特徴は、式が1つしかないことから、必然的に効果が一種類しかないところね」


「複合式は、二種類以上の魔法陣を、同じ座標に重ねて描いたものよ。分類としては、平面式と同じね。特徴は、見かけ一つの魔法陣なのに、二種類以上の効果があることよ」


「二重演算型は、二つの魔法式を同時に演算することで、複数種類の効果を同時に発動することのできるものよ。欠点としては、反発しあう効果を持つ魔法式同士は、同じ力で同時に発生できないことね」


 と、こんなところよ。と、彼女は説明した。


「魔法陣の基礎的な知識はこんなものよ。あとは、書き方を覚えるくらいね。これは家に帰ってから教えてあげるわ」


 ククルカン先生による、魔法陣の講座の予定が決定した瞬間であった。


 俺は内心、面倒くさく思っていた。













 その日から、俺はククルカンによる魔法陣の勉強と、リレルによる仙術の授業が始まった。


「まずは、ジャミングから覚えた方がいいね!その方が後々、マジカルハントを覚えやすそうだし」


 リレルは、講義を開始した。


「ジャミングっていうのは、自分の支配下、又はそれ以外の意味のある魔力を、無意味な魔力に変換することをいうんだ。覚えていてね?」


 俺はノートにメモをする。


「まず、思い出してほしいのは、魔法を扱う上で、もっとも大事なもの、魔力についてだ。これさえ理解できれば、後は実践するだけだよ?」


「はい」


「魔力は、空気中の魔素まそと呼ばれる物質を取り込んで、体内の熱エネルギーや水分、精神エネルギーなんかを混ぜ合わせることで、魔力というエネルギーに変換されている。この魔力は、体のどこに貯められると思う?」


 思考から魔法式を組み立てるのだし、やっぱり頭部にあるんじゃないか?


「....脳、ですか?」


「おしいな。貯められるのは脳は脳でも、この部分。脳幹に貯められるんだ。脳幹に貯められた魔力は、体のどこを通って、全身に流れるか?」


 しばし思考する。脳幹を通って、どこへ行くか。


「....脊髄、ですか?」


「残念ながら違う。通るのは、血管、又は、細胞の表面を通って、全身へと運ばれるんだ。ここまでで質問は?」


 俺は首を横に振った。


 リレルが講義を続ける。


「よし。じゃあ、次のステップだよ!よくよく聞いておくように!」


 なんか、リレル楽しそうだな。そう思う一日だった。












 数日が経った。俺たちは今、グラウンドにて、魔法を使わない戦闘訓練をしていた。


 俺の相手は、二歳年上の白い髪の女子生徒だ。


 二歳年上と言うが、小3並みの体格の俺と彼女では、そんなことは寧ろ関係なかった。


 彼女の正体は、遠くイルスの北の地方、ペンドラゴン領の領主、アーサー・ペンドラゴンの5女、ヒレイ・ペンドラゴンという。


 彼女の家は、代々剣術に強く、また、魔法剣に関しても、上級者であった。


「はあーっ!」


 ヒレイが長剣を大上段から降り下ろす。


 かなり早い。


 しかし、俺はそれを片手で止める。


 キャッチした瞬間に、その力の線をわずかにずらし、エネルギーをからだの外に弾いた。


 故に、軽くなった長剣は、それ以上こちらに降りてくることはなく、軸のずれた相手の体が、わずかに宙を舞った。


「私の剣を片手で止めた!?」


「バカなの?」


 受け止めたんじゃなくて、流したんだよ。


 俺はそうとは口にせず、次のアクションに移る。


 俺は剣を地面に叩きつけるようにして後ろへと払い、陰をかけて彼女の重心の制御を奪う。


 すると、彼女は面白いように上へと飛んでいき、体勢を崩した。


 隙を逃さず、体操服の裾を掴んで、地面に引きずり下ろし、叩きつけた。


 彼女から剣が離れる。


「勝負あり!勝者、ヤナギ・チホ!」


 審判をしていた二年生実技担当のヤマイが、勝者宣言をした頃には、彼女の首筋には、剣先が突きつけられていた。


「くそ!」


 ヒレイは悪態をついて、列に戻っていった。


「あれくらい、チホなら楽勝よね」


 そう言ってきたのは、後ろの方から見ていたククルカンだった。


「あぁ。そうだな」


 でも、もう少し誉めてくれてもよかったんじゃないだろうか。











 一方その頃、フレアはと言うと、領地を作り終えたという報告を、リレルと共に、王城の応接間で聞いていた。


 次回「13」

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