「11」浮遊城 6
家を作ったのはいい。
けど、次の方針はまだ考えていない。
まずは、それを決めなければ。
と、いうことで、俺たちは今、次にどこへ行くべきかを検討していた(テイク2)。
「このフロアはおそらく、方向感覚を失わせて、迷わせること、そして、自我を崩壊させることが目的のはずよ。早々に見つけないと、自分を保てないわ」
そう切り出したのはククルカン。
確かに、それもそうだ。
俺だって、ずっと草原しか続かないような所にいたら、気が滅入ってどうにかなりそうだしな。
「でも、何も考えずに動くのは愚策」
チゼはため息をついた。
「いっそ、前みたいにドラゴンにでも遭遇した方がましだな」
フレアは剣の素振りをしながら、そう答えた。
「ってか、お前、家の中で素振りするなよ。家が崩れたらどうするんだよ!?」
「そのときはまた、ヤナギが回復魔法でパーッとしてくれればいいさ」
って返ってきた。
(ふざけんなよ!?)
俺の魔力は無限じゃないんだぞ!?
と、そんな感じでウンウン唸って方針を決めていると、ふと、空気に成り下がっていたリーシャが、うわーっ!と叫びだした。
「お腹すいたー!私帰る!」
彼女はそう言うなり、異次元生成を発動、中から転移鏡を取り出した。
....待てよ?
今、帰るって言わなかったか?
たしか、転移鏡は行ったことのある場所ならどこへでも転移出来るんだよな?
「それだ!」
「「「え?」」」
30分後。俺たちは見事、第一浮遊城を攻略した。
え?どうやったのかって聞きたい?そうだな、特別だから教えてやる。
まず、俺たちは前のフロアにいた、あのククルカン似の男の場所へ転移鏡を利用して移動した。
リーシャの話によれば、いったことのある場所の指定は、「記憶の中の座標、又は、あったことのある人を中心とした、その人の周り(いったことがある場所)の座標」の二種類で行うことができる。
例えば、俺が海にいたとしよう。
でも、その海には、ククルんは行ったことがなかったとしよう。
しかし、ククルんは俺の周りには行ったことがあるので、ククルんは俺の周囲に転移できる。
これを使えば、行ったことがない場所でも、出会ったことのある人を座標軸に設定することで、行ったことがない場所にも、転移できるのだ。
この原理を利用して、俺たちはあいつの周囲に転移。
すると、偶然、あいつは宝物庫にいた。
なので、交渉して、例の魔具を入手、宝物庫を出てしばらく歩き回った末に、脱出用の魔法陣を発見。
見事帰ってくることができたと言うわけだ。
ちなみに、ククルカン似のあの男の名前は、レンビと言うらしい。
レンビは、仕事なのであそこで俺たちと適当に戦っていたそうだ。
あいつが本気を出せば、俺なんて蚊を潰すより簡単に倒せたそうだが、後始末が面倒なのと、一族の数少ない友であり、同じ敵をもつ仲間として、殺さなかったらしい。
っていうか、蚊って結構すばしっこいし、案外、そっちの方が難しいのかもしれない。
まぁ、要するにだ。
面倒だから負けてやった、と彼は言うわけだ。
本当に腹が立つ話だ。
なので俺は、レンビと再戦の約束をしておいた。
強くなったら絶対に勝って、負けたと言わせてやる!と、俺はひそかに心に誓った。
ちなみに、同じ敵を持つ、という部分で疑問に思い、聞いてみたが、ククルんが俺の記憶を漁ったのと同じ方法だったらしい。
あれからあいつの俺を見る目が、腐った魚みたいになったのはひどく頭に来たが、結果オーライということだろう。
俺だって、まだ手加減されて勝ったような相手に挑む勇気は無いさ。
蚊の様にぺしゃんこも嫌だ。
そうして俺たちは試験に合格し、第二学年へと、入学して半月ほどで進級したのであった。
次回「12」




