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絶滅種族の転生譚《Reincarnation tale》  作者: 記角麒麟
復讐と山羊 Revenge and goat
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「04」協力者

 この体は女性だということに気がついたのは、転生の二日後だった。それ以来、俺は髪を伸ばすことにしている。


 だってそうだろ?髪を短くして一人称が俺と言うと、厄介事に巻き込まれそうな事は明らかだ。


 だが、心は男のままでいたいので、せめて口調だけは変えずにいこうと思うのである。


 それはさておき、俺はもう5歳になったが、最近では文字を習うこと以外に、バルス国で生前やっていた我流の武術をやっている。


 習っていた陰刀流を派生させて、独自に作り上げたものだ。


 それに、小さい頃から体を柔らかくしていると、いいことがあるのだ。


「チホ、いるか?」


 この家は運のいいことに、結構敷地が広い。親にでも言えば、必要な広さの体育館くらい作ってくれた。


 父親が放送関係の仕事をしていて、それが結構儲かるらしい。


 外国で言えば、貴族並みの資産を有しているだろう。


 セレブチートってホントに役に立つよ。


 そんなときだ。俺がその体育館で型の練習と改良をしていると、入り口から父親のアサヒが声をかけてきた。


 ちなみに、チホというのは俺の名前だ。


「いるよ?」


 そう答えると、奥からまたか....という雰囲気が伝わってきた。


(またかってなんだよ。思うなら建てるなよ、これ)


「チホ、友達が来てるぞ」


 友達、というのはこの国、トマヤ国へとやって来た外国人で、遠く、トマヤ国外の西にある大森林を越えた先のイルス国の子だ。


「チホ!」


 彼女はリーシャ・ハーケット。きれいな金色の髪をストレートに流していて、少々つり目ぎみの目は澄んだ水色をしている。


「リーシャ。情報持ってきた?」


 アサヒが出ていくのを見計らって、小声で彼女に聞く。


「それがね、みんな、なんかちがうこといってきて、わからならなかったの」


 それも当たり前か。どこの世界に5歳の子供、ましてや女の子に殺人鬼の情報を話す大人がいるのだ。


(少し早まったな....)


 俺はそう反省すると、にこりと微笑みながら、彼女に言った。


「ありがと、十分だよ。じゃあ、これからの方針を考えないとね」


 彼女には、あの殺人鬼をに倒すための協力者になってもらう。


 しかし、常識的に考えて、5歳の人間がそんなことを他人に話す訳がない。


 なので、一緒に強くなって、正義の味方をやろうと、あたかも子供の考えそうなことで、彼女を引き込むようにしている。


 その罪悪感は少し高いが。


「つぎのほーしん?」


「そ。今は子供だから、大人は相手にしてくれないだろう?なら、子供の間は鍛えて、悪い奴と戦えるように強くなる」


「じゃあさ、そのつぎは?そのつぎはどうするの?」


「大人になったら、改めて、情報を集める」


「じゃあしゅぎょーしよ!」


 リーシャの一言で、稽古が再開された。











 二時間後。


「チホつよいー!」


 今までの勝敗は、俺対リーシャで9対0。俺の連勝だ。


 彼女は、そこらのワルガキと戦えば、かならず勝てるほど、それも圧勝できるほどの実力がある。例え、それが大人でもだ(ただし心得のある人を除く)。


 それに連勝するこの俺は、一体何なのだろうか。


 自分にふと疑問を持つ瞬間であった。


「リーシャは未来視ができてないからこうなるんだよ」


「そんなことゆわれてもわかんないものはわかんないのー!」


 彼女はそう言うと頬を膨らませて座り込んだ。


 未来視というのは、魔力を目に集中させ、未来が見えるとイメージすることで、未来を視る技術だ。


 バルス国では、普通にこれを使えるように義務教育を受けていたので、俺は普通に使えた。


 なぜ、バルス国で未来視が義務教育されるのかという話は、長くなるので割愛する。


「でもまぁ、それができるようになるのは、もう少し先でもいいかな」


「やだ!」


「じゃあやってみてよ、やり方教えただろ?」


「できない!」


 とまあ、こんな感じにめんどくさいのだが、やってくれなくては困る。


 あいつは、未来視ができても抵抗できるほどの実力者なのだから。


 と、そんなことをしていると、母親のヤチカが呼びに来た。


「チホ、ご飯の時間だから、早く戻ってきなさい」


「はーい!リーシャ、また明日!」


 俺は、彼女とその場で解散した。













 夕食後。俺は魔法の訓練をするために、体育館に来ていた。


 この国では、魔法を使えるものはごく少数だ。しかし、イルス国は、ほとんどの人が魔法を使える。


 そのため、イルスは魔法国ともよばれている。


 と、いうのが一般常識なのだが、実際は、方法さえ知っていれば、そしてそれを小さい頃から使っていれば、誰でも魔法は使えるのだ。


 リーシャは俺と同い年なので、今すぐにでも教えれば使えるはずだ。


 俺は、魔法の訓練を終えて、リーシャの家へと向かった。


 いつも通り、俺はリーシャと一緒に銭湯へ行く。


 その道中。


「やっぱり、なんかいきいても、おかーさんたちそんなまほーしらないってゆってたよ?」


「だろうな。これ、バルス国でしか、使い方教えてないから」


「はめつのじゅもん?」


(なぜお前がそれを知っている!)


「いや、違うから。ここから東にずっと行って、南オルグ海、ノホニ海をいった先にあるノホニ列島って呼ばれてる場所にあるんだよ」


「どこそれ?」


 彼女は笑いながら、俺と並んで歩く。


 そんなことをしていると、いつの間にか銭湯についた。


「おばちゃん、またきたよ!」


 白髪の目立ち始めた女性が、リーシャの声で、カウンターの下へ目を向ける。


「リーシャとチホかい?よく来てくれたね。これロッカーの鍵ね」


「おばちゃん、ありがとー!」


 礼を言って、俺たちは脱衣所へと向かった。


(子供は無料っていいよな)


 そこそこ裕福な家庭だが、この家には風呂がない(気づいたときは本当になんでだよ!って叫んでしまったことはもう昔の話)。


 生前では、家はどこも風呂があったんだけどな....。


 そんな感慨に耽りつつ、体を流して湯船に浸かる。


「チホ、きのーのアニメみた?」


「ううん、見てない」


「そうなんだ、おもしろかったよー!」


「へぇ、どんなの?」


 この国では、魔法があまり発達していない。しかし、通信技術はかなり発達している。


 腕時計や、携帯端末、腕時計型通信機、テレビ、などなど。


 最近では、アニメというものが小さい子の間で流行りだしている。


 ちなみに、そのテレビの放送局は、アサヒの実家の敷地内にあるらしい。


「へぇ、そうなんだ。俺はテレビとかあんまり見ないから」


「あ、それまえにもゆってたー!」


「これで三回目だよ、いい加減覚えてよ」


「ごめーん」


 彼女は謝っているのか、笑っているのか、区別がつきにくい。まぁ、笑いながら謝るのは、別にいいんだけど。


 そんなこんなで、俺たちは服を着替えて銭湯を後にした。


 この国の衣服は、一枚の大きな布と、帯でできている。所謂和服だ。


 この国では和服とは言わずに、巻き服と呼んでいる。帯を巻く服、だからだそうだ。


 銭湯からの帰り道。


 後ろに嫌な気配を感じ、リーシャと共に横へと素早く道の脇にそれた。


 すると、麻袋をもった男の人が、前のめりにこけて横を通りすぎていった。


「人拐いか。最近多いな、それ」


(本当に、いつの時代だよ。時代設定しっかりしろよ)


 俺はそれを見て、ため息をつく。


「リーシャ、腕をみたいから、そいつと戦ってみてくれるか?」


「わかった!」


 そして、彼女は嬉々として人拐いに向かっていった。


 当然、戦う準備もしていない素人を相手にしたのだから、喧嘩と呼べるものにはならなかった。


 リーシャの一人勝ち、相手の攻撃する隙なく、三秒でノックアウトだった。


「弱いな。いや、リーシャが強いのか。5歳で大人の男を三秒で倒すんだもんな。やっぱり半端ないな」


 そう言うと、俺は彼女に、処理の指示を出した。


 麻袋に詰めて道端に転がしておくのだ。


 そして俺たちは何事もなかったかのように家へと帰っていった。


 警察?今回は不問にしておくよ。

 次回「05」

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