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絶滅種族の転生譚《Reincarnation tale》  作者: 記角麒麟
我は千里の道を行く I begin to walk the very long way
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「06」浮遊城

 翌日、第一浮遊城前に、チホ、ククルカン、チゼの三人はやって来ていた。


「それでは皆さん、集まりましたかな?」


 猫の校長が、こちらを見上げて言う。


 いくら台の上に乗っているからといっても、その視点の位置は相変わらず低い。


 しかし、この校長は、話しかけられなかったら、ただの野良猫にしか見えないな。


 俺のそんな心情は塵一つとして知らずに、彼はルール説明を始めた。


「試験内容はいたって単純。ここを生きて攻略することです。まぁ、あなたたちなら楽勝でしょう」


 この言い方には、何か裏があるな。


 例えば、楽勝という言葉を覆すようなトラップ。


 瞬間的な、的確な思考が必要な状況とかな。


「因みに、二年生に進級できた者は、わが校には30人ほどしかいません。その他は、リタイアしたか、死んでしまったか。はたまた、まだ城内にいるかもしれません」


 リタイアできるのか。


 っていうか、マジで死んでる人がいるとか、この学校ホントにクレイジーだな。


「が、しかしあなたたちなら、きっと戻ってこれると信じております。それでは、行ってらっしゃい」


 校長の長くも短い話を終えて、俺たちは浮遊城へと足を踏み入れた。


 












 気がつくと、俺は突然の息苦しさ、いや、窒息感を関した。


(!?)


 上も下も理解できないまま、俺はもがいた。


 すぐに、自分が浮いているのではなく、池の水にうつ伏せになっていることに気がついた。


「っぷは!」


 水深は足首くらいまでだろうか。その水は、妙に温度を感じさせなかった。


 回り見回すと、ちょうど二人とも上がったところだった。


 ふと、足元に何かがぶつかった。


「うわっ!?」


 あったのは、白骨死体だった。


 俺は驚いて、すぐに陸へと上がろうとした、そのときだった。


 池の周りにあった燭台上の炎が、隣の燭台の炎を伝って池の中に流れ込んできた。


(ヤバイ、これもしかして!?)


 火は水によって消えるだろう。


 と、普通なら思うだろうが、俺はそう考えなかった。


 急いで岸へと向かって走り出す。


 しかし、火がその水にぶつかった瞬間、面白いほどの燃焼速度で、こちらへと迫ってきた。


「「「うおおおおおおっ!?」」」


 三人が岸に上がる頃には、池の水はごうごうと音を立てて燃えていた。


「あのままあそこにいたら、あの白骨死体みたいになってたんだろうな....」


 俺は、背中に冷たいものが走るような気がした。


 これが、俺が最初に懸念していた、楽勝を覆すようなトラップということか。


(マジで殺す気かよ....)












 池の外は洞窟だった。


 というよりは洞穴に近い。


 外は神殿のようになっており、低い石造りの天井は、煉瓦のように違い違いに組み込まれていた。


「なんか、異質な感じがするな」


 チゼが呟いた。


 その声の後ろに、何か音が聞こえた。蛇が舌をチロチロ出すときの、シーッって感じの音。


(....蛇?)


 俺は足元を見た。するとそこには、何十という数の、小さな赤い蛇が、石畳の隙間から這い出してきているではないか!


 ククルカンはそれを一別すると、魔法を詠唱して、蛇を焼き散らした。


「蛇は不味いのよ。食べるなら、ネズミの方がまだマシだわ」


(....猫だからかな?)


「まるで食べたことのあるような言い方だけど、猫だからそう思うだけだよな?」


「さあね?想像に任せるわ」


 彼女はそう言うと、柱のひとつに触れた。


 ヤバイ。


 この言い方は、食べたことがある口だ....。


 ククルカンの触れた柱の一部が凹み、天井から階段が降りてくる。


「こっちよ」


 ククルん、やっぱり本当に浮遊城の住人だったんだな。


 流石、どこかの誰かさんとは違って便りになる。













 ククルカンによると、さっきの場所は侵入者を足止め、できれば皆殺しにするための罠と牢屋の役割を果たしているらしい。


 あの場所にはうっすらと毒の霧が撒かれており、長時間その場所にいると、まず神経伝達が著しく低下し、筋肉が硬直する。


 最終的には心筋が硬化して、心停止に陥るらしい。


 第二浮遊城より遥かに恐ろしいな、あそこは。


 いや、あそこが甘すぎるんだよ、絶対。


 ほら、入り口にたどり着く前に、あんなに馬鹿みたいに大きなドラゴンが二匹もいるんだしな。


 城の警備が甘くなるんだろう。


 閑話休題。


 俺たちは階段を上がると、ジャングルのような場所に出た。


「またえらく雰囲気が変わったな?」


「そんなことないわ。あの牢屋をよく見てなかったの?天井から木の根っこが所々降りてたじゃない?」


 全く見てなかった。


 俺も観察力はまだまだだな。


 そう思いながら彼女についていくと、一台のトロッコが用意されていた。


「乗って。そこから私が合図したら、ジャンプするのよ、いいわね?」


 彼女は猫耳をくるくると回しながら言った。


 何かを感知しようとしているのだろうか。


 俺たちはトロッコへと乗り込んだ。


 親切にも、そこにはベンチとベルトがついていた。


「言い忘れてたけど、そのベルトはしない方がいいわ。とれなくなるもの」


 ククルカンは手に持った斧を立て掛けると、ベンチに座った。チゼは二本の戦斧を背中にかけたまま、その場に立つ。


 俺も腰かけようかな。


 と、俺がベンチに座ったときだった。


 いきなり、トロッコがみずから動き始めたのだ。


 最初こそゆっくりだったが、だんだんと速度を増していき、チゼも立っていることが困難になったのか、その場に腰を下ろした。


(立ってるんじゃなかったのかよ....)


 そのまま待っていると、ククルカンが言った。


「二人とも立って。20秒後におもいっきりジャンプするわ....5、4、3、2、1、今!」


 彼女の合図で、俺たちはジャンプした。


 すると、さっきまで動いていたトロッコが、壁にぶつかって爆発した。


 俺たちはというと、ジャンプした時にその壁の上にあった足場に着陸していた。


(危ねぇ....)


 俺は内心、冷や汗を掻いていた。


「さ、行くわよ」


 俺たちは、その足場の向こうにあったトンネルの奥、その場所にあった扉を潜り、次のステージへと旅だった。


 次回「07」

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