「05」通り魔の軌跡
俺は家につくと、公爵の印であるロンドを机に立て掛けた。
「なあリレル」
「何?」
「俺たち、いつの間にか公爵になってしまったな」
「そうだね」
リレルは異次元生成を詠唱した。
「その魔法、リレルも使えるのか」
「もって、ボク以外に使える人を知っているの?」
俺は首を縦に振った。
「俺の旧友のリーシャって子が」
「リーシャ....」
彼女は何か考え込むような素振りを見せるが、すぐに頭を振って、まぁいいかと言いながら部屋を出ていった。
なんだったんだ?
閑話休題。
暫くすると、髪を乱してフレアが帰ってきた。
「どうした?あいつ、そんなに強かったのか?」
フレアがそうなるほどの強敵だったのか、気になったので聞いてみると、彼女の口から、予想外な返答が返ってきた。
「あぁ。崩壊剣食らって死ななかったくらいだ。避けられた訳じゃない。防御してた」
崩壊剣を防御って、化け物かよ....って、ちょっと待て。今こいつ、崩壊剣を使ったって言わなかったか?
「なあ、お前、崩壊剣使ったの?」
聞くと、彼女は視線をそらした。
あんな場所で使ったら、モノレール使えなくなるじゃん!
明日の学校どうすんだよ!?
歩いていけっていうのか?
「ふざけんな!」
「だ、だって仕方ないじゃん!範囲技使わないと、避けられた可能性だってあったんだぜ?そんなときに範囲技使うなってのが難しいだろ!?」
「お前の超音速を、誰が見切れるんだよ!?超人でもあるまいし!」
前に説明した通り、フレアは魔法がからっきしだ。
だから、俺みたいに、『生物だけにダメージを与える』ということが出来ない。
「人じゃねぇよ、魔物だよ!町中に魔物が出たんだ。退治できて何よりだろ!?」
「あぁ、そうだな!でも魔物の被害よりお前の被害の方が絶対デカイけどな!」
「じゃあどうすればいいのさ!?」
「町から連れ出すなりなんなり、考えがあるだろ!?どれくらい壊したんだよ?」
フレアは、こちらを真正面から見て、堂々と言った。
「あまりよく見ていなかったからわからないが、だいたい想定される金額は、白金貨3000枚相当かと思う」
白金貨は一枚十万円。
それが3000枚。
実に三億円。
現在の手持ちでは、到底白金貨3000なんてあるはずない。
親も、そんな大金は易々と払えるわけがない。
さらに懲罰金がかかれば、そんなものではすまないはず。
「....どうする気だよ、そんな大金ないぞ?」
「う....」
彼女は、自分のやったことを後悔した。
そして、それなりに考え、結論を出した。
その答えとは。
「ま、魔物のせいにしようぜ。それなら問題ないだろ」
「お・お・あ・り・だ・よ!この糞野郎!監視カメラに映ってるからそれもう意味ねぇし!」
「は、ハッキングすればいいんじゃね?」
「罪を重ねるなああっ!」
はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、もう....疲れた....。
精神的ダメージがでかすぎる。
「俺はもう寝る。事後処理はお前がやれよ」
「えーっ!?」
「えーっ!?じゃねぇ。俺もう疲れてるんだよ」
俺はそう言って、布団に潜った。
次回「06」




