「03」公爵
翌日。
今日は、国王から爵位と領地を貰えるということで、王都カルスティナの王城へと来ていた。
というか、俺たちが行ってる高校もカルスティナにあるんだけどな。
ちなみに、俺たちが住んでるシェアハウスはその隣にあるマーペック領イントの街にあり、モノレールで国中のどこまでも行くことが出来る。
無論、金はかかるが。
今回も、モノレールを使って、登校するときと同じようにカルスティナに来ていた。
現在位置、王都カルスティナ、イルス王国王城、面会室。
そこには、金髪の、十二、三歳位の少女が、真っ赤なマントを羽織って、玉座に腰かけていた。
イーグス・カルスティナ・イルス。それがこの人物の名前だ。
「よく来てくれた、頭のネジがとんだ狂気の英雄たちよ」
だから、それ完全に悪口だから。
誉めているようで実はすっごい悪口だから!
「....ありがたき....お言葉....か、感謝....いたします」
しかし、ここは一国の王の御前だ。
ここは嫌でも下手に回っておいた方が、すんなりすむだろう。
俺は、やや無理矢理といった風にその常套句を吐いた。
「よいよい。そう固くなるな。こちらがやり辛いからの。面を上げよ」
彼女はどうやら、俺たちが緊張しているのだと思っているらしい。
確かにそれもあるが、大半の原因はその敬称だ。
いや、これはもはや敬称というより、蔑称だろう。
深いに感じるそれを押さえながら、俺は俯かせていた頭をあげた。
「ほれ、何しとるか。椅子を持ってこい!」
そこからは、お互いに椅子に座って話し合った。
「それでは、かねてからの約束通り、爵位をやろう。爵位は、世界を救った英雄、と言うことだし、公爵としての地位でよいかな?」
「ありがとうございます」
「よいよい。それじゃ、次は領地なんだが、すまんの。あいにく今は土地がないのだよ。しかし、イルス上空に今、浮遊石を使って空中都市を造っているところなんだ。できたら全部あげるよ」
彼女はそう嘯くと、ウインクと同時にサムズアップした。
浮遊石とは、空気中の魔力、つまり魔素を取り込んで空中に浮いている石のことだ。
現在では、その制御装置が開発され、空中庭園を造ることだって可能とされている。
けどまぁ、そんな代物、王家位しかそんなもの持ってないんだけどな。
彼女は、それを俺にプレゼントすると言っているのだ。
そこらの報酬とは訳が違う。
「....」
呆気にとられて、俺は何も言えなくなった。
いくら実家が金持ちでも、そこまでのことができる金は無かった。
当たり前か。
だってこの人、一国の女王だし。
こんな感じに、俺たちは爵位と土地を手に入れた。
土地と言っても、空中にだけど。
その後、俺たちは全国共通の、公爵の印である長杖をもらい、昼間は城内見学、夜は立食パーティとダンスパーティをした。
正直ダンスなんてしたことがなかったので、相手をしてくれていた小柄なじいさん、アーサー・ペンドラゴンは、俺の下手さに怒って帰っていった。
理由は、俺が彼の足を何度も踏みつけたことと推測される。
因みに、その後俺はそこにいた貴族から『踊る骨折の死神』という称号を頂いた。
その日、俺は出席した貴族の半数の足の骨を踏み砕いたことは、まあ、仕方がなかったことだろう。
そして、夜も更けた頃。
「それでは、俺たちはここでお暇させていただきます」
俺たちはそうして城を後にした。
その帰り道。
モノレールはもうとっくに終電が出ていて、徒歩で帰ることになった。
夏。
草木も眠る丑三つ時。
俺たちは、不可解なものと遭遇した。
次回「04」




