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絶滅種族の転生譚《Reincarnation tale》  作者: 記角麒麟
我は千里の道を行く I begin to walk the very long way
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「02」目標

 第一浮遊城の攻略か。


 ここの校長は本当にクレイジーなことを考える。


 今日は水曜日。


 午前から午後にかけて魔法実技だ。


 俺たちは朝のホームルームが終わると、体操服に着替え、体育館へと移動した。


 担当のアライが、今回練習する魔法について説明している。


 今回練習するのは、初級水魔法だ。


 この魔法は、魔力で水を発生させる魔法、つまり、物質を作り出す魔法だ。


 変換した方が効率いいのに。


 前回やった風の魔法はエネルギーを作り出すことに観点を置いていたが、今回は物質の生成が目的だ。


 水を作り出すには、水素と酸素を魔法で作り出し、魔力で強制的に化合させ、水を作る。


 魔法を発動させるには、イメージに魔力を流し込むことで完成するが、そこにそれなりの対応した知識があれば、巨大な水を作り上げられる。


 しかし、その際には、知識を検索するための魔力を消費してしまうため、バルスで扱われていた最適化法では、ただ、漠然と水があることを想像する。


 それによって、検索費用をなくし、命令文を短略化することで、魔力の消費を押さえるのだ。


 なのでスペルは短くこう詠唱するのだ。


「Water」

(水よ)


 詠唱すると、空中に巨大な水滴....いや、水の玉が発生した。


 周りからスゲー、とかいう感想が聞こえてきた。


 次に、俺は変型の命令文を加える。


「Become the sword the form」

(剣の形を成せ)


 この命令文の内の「剣」とは、自分が想像した形の武器を指し示している。


 俺は、細かい針のような剣を想像して詠唱した。


 すると、俺が作り出した水が、大きく波打ったと思うと、大量の水滴に変わり、前後に伸びて針のような形になった。


(ヤバイ、この量を制御するのは結構しんどいな)


 そんなことをして遊んでいると、アライが様子を見に来た。


「ヤナギさん、今は中級魔法の練習をする時間じゃありません。もとに戻してください」


 アライはそう言うと、その場を離れた。


 ここから先に命令文を付け加えた方が早いだろうが、そうすると魔力を消費してしまう。ここは一旦キャンセルして、作り直した方が効率がいい。


 そう判断した俺は、その魔法をキャンセルした。


「water!Wind!」

(水よ!風よ!)


 遠くから、体育館の外から、そんな声が聞こえてきた。


 チゼの声だ。


 最適化法と結合法を使っているのだろうか?


 結合法とは、自分の支配下にある魔力と、もう一種類の別の魔力の両方に対して扱うことができる、混合魔法の使い方の1種だ。


 例えば、俺が使った魔法は、


1. 水を発生させる魔法

2. 形状を武器の形に変形する魔法


の二つだ。


 この二つの魔法を、同じ座標に発生させることで、魔法の効果を混ぜる。


 これが結合法だ。


 チゼは水を発生させる魔法と風を発生させる魔法を用いた。


 もし、二つの魔法が同じ場所に発生した場合、ウォータースプラウトが完成する。


 これよりもっとすごいものといえば、違う座標に発生させることだ。


 これは二つの魔法に集中力を分けなければならないため、常に二本の糸で違う方向へ引っ張られるような感覚を覚えることとなる。


 俺はそんなことを頭の隅で考えながら、魔法の練習を開始した。














 その頃、チゼは、チホの読み通り、結合法を用いた混合魔法の練習を行っていた。


 イルスでは、結合法という方法は全く珍しくない。


 基礎と言っても差し支えないくらいだ。


 だから、学校でもそれを教えるのだ。


 大概の人は、二つ目の魔法を発生させる前に、最初の魔法の集中力が途切れてしまい、完成させることが困難だ。


 今回アラヤが準備した内容は、結合法を用いて、三つ以上の魔法を合成することだ。


 チゼは、二つ以上のことを同時に思考することができる技術、同時思考演算スーパー・タスカーの初歩、二重思考演算ダブル・タスクまでしか扱えないため、三つ目を繋げることに困を極めている。


 イメージに魔力を流し込む。


 しかし、発動後は、それを意識によって保ち続けなければならない。


 故に、多くの魔術師は、単発の魔法を得意とする傾向にある。


 チゼもその例には漏れなかったようだ。


 この授業では、もう既に十人もの生徒が魔力切れを起こして倒れている。


(俺もそろそろ限界だな....)


 チゼはもう息切れ仕掛けていた。


しかし、隣で三つ目の結合に試みるアムは、まだまだ余裕そうだ。


(負けるものか!)


 チゼはそう決意し、三つ目を重ねかける。


 余計なことは考えない。


 そして追に、チゼは三つ目を重ねることに成功したと思った。


 しかし、水→風→と来て、火を生み出した結果、火と水の量のせいか、蒸気の渦が発生。


 それは次第に広がっていき、チゼはキャンセルできなくなった。


 現象化現象げんしょうかげんしょう、又は、単に現象化げんしょうかと呼ばれる現象だ。


 しかし、それはアラヤ先生の仙術『魔力妨害ジャミング』によって蹴散らされた。


 チゼはアラヤにこっぴどく叱られた。












 放課後、俺たちはまっすぐ寄り道せずに帰宅した。


「「「ただいま」」」


「おかえり。遅かったね、どこいってたの?」


 家の中に入ると、リレルが出迎えてくれた。


「学校です。そう言えばリレルさん、マジカルハントって仙術以外、どんなものが使えるんですか?」


 ふと気になったので聞いてみることにした。


「ん?ボクが使える仙術、知りたいの?」


「はい。マジカルハントを間近で見ましたから、他にどんなものがあるのかと気になって」


 すると、彼女は意気揚々と答えた。


「ふーん。それじゃ、教えてあげよう!ボクが今使える仙術は4つ!みんなもご存知、魔術強奪マジカルハント、そして君たちがよく使う歩行術、縮地しゅくち。そして、体外にある魔力の一切合切を蹴散らして、魔法を無力化する魔力妨害ジャミング。そして最後に大技!自分が契約している『眷霊けんれい』を召喚する、眷霊召喚コール!この4つが、ボクの使える仙術だよ!」


 知らないものも入っていた。


 伊達に200年生きてないな、こいつ。


「眷霊ってなに?」


 ククルカンが質問する。


「眷霊っていうのは、えーっと、君たちの認識だと、神姫シンキが近いかな」


 神姫。


 それは、この世界のどこかにいるという、神器ジンキを操る七人の魔女術師ウィッチクラフターのことだ。


 ウィッチクラフターとは、サモンと呼ばれる悪魔と契約した魔女のことを指す。


 なぜ、魔女かというと、そのサモンの特性上、女性としか契約できないからだ。


 まぁ、契約の内容に必ずと言っていいほど、『汝は我の糧となる~~を~~とするため、魔力の方向性を~~に限定する』という内容が入っている。


 そのためか、九割九分の魔女術師は一種類の魔法しか扱うことができない。


「言ってみれば、神姫を霊体化して、圧縮して、それを自分の魔力の支配下に置いたものだよ。だから、コールが使える者は必ず、魔力強奪マジカルハントが使える」


 そもそも、使えないとコール用に契約できないってことか。


 っていうか、こいつさらっと神姫を支配下においているって言ったぞ。


(リレルさんマジパネぇ....)


「他に聞きたいことは?」


「じゃあ、どうすればマジカルハントを習得できるんですか?」


 俺は、まず、次の目標として、五仙になることにした。

 次回「03」

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