「01」進級試験
その日の放課後、俺たち三人は校長室に呼び出されていた。
「君たちは、例の大量殺人鬼の討伐に成功した。その成績には、相応の手当てが必要だと、私は思っている」
この高校の校長は、猫だった。
灰色のトラネコみたいな感じの猫だ。
声は若い男性だった。
「そこで、私は君たち三人に、進級試験を受ける権利をあげようと思う」
「進級試験、ですか」
国からは明日、爵位と領地を与えられるって言われてたけど、学校からは進級試験の権利が貰えるのか。
「そうだ。何か不満かね?」
俺は、いいえと首を横に振った。
この言動はちょっとイラッて来たけど、まあ進級できるならと、俺はその話にのった。
ちょうど、某昔話の如く、めでたしめでたし(自分はそうは思っていない)と終わるところだったし、別に悪くはないだろう。
「それで、進級試験の内容は?」
チゼが彼にそう聞くと、校長は待ってましたという顔をした。
いや、正確には、俺には猫の表情を読み取る能力はないので、そんな雰囲気を感じたといった方が正しいだろう。
それにしてもこの感じ。
嫌な予感しかしない。
「この高校の正式名称を覚えておりますかな?」
「たしか、イルス国立第一浮遊城前高等魔法学校、だったわね。まさか、試験って浮遊城の攻略、とか言わないわよね?」
まさか、という風に、体をこわばらせる彼女。
しかし、それに対して彼はとても楽しそうにこう返答した。
「察しが早くて助かります、ククルカン・エンテナートさん」
マジかよ....。
「なるほど、それで、この高校から生きて卒業できると思うなよ、ですか」
チゼが近くにあったパンフレットの見出しを見て、ため息をついた。
俺はてっきり、面白くするための売り文句に過ぎないと思っていたけど....。
だってさ、マジで命の危険がありますよーって宣言するような告知が、フツーにパンフレットの表紙にでかでかと記載するとは思わないじゃないか。
「でもまぁ、第二浮遊城を攻略し、殺人鬼を倒したあなたたちなら、楽勝でしょうね、頭のネジがとんだ狂気の英雄さん?」
校長は、そう言って不適な笑みを浮かべた。
校長、その呼び方俺には悪口にしか聞こえないっすよ....。
次回「02」