「03」その日
一日目、俺は重大なことに気がついた。
食事の問題だ。
まず、当然なことに、生まれたての人間というのは、歯がない。そのため、噛んで物を咀嚼することができない。
だから、当然のように、俺はミルクを飲むことになる。当然ながらに、人のを。
まあ、これは大した問題じゃない(と思いたい)。問題なのは、言語がわからないということだ。
言葉がわからなければ、色々と不便だ。
人は、ずっと同じ言葉を聞いていると、それが必要な情報として記録され、結果的にその言語で喋れるようになるらしい。
赤子が言葉を覚える原理が、確かこんな感じだったはずだが....。
なので、俺はひたすら言葉を真似することで、それを覚えることにした。
月日が経ち、俺はようやくこの国の言葉で話せるようになった。
3年半かかった。
意外、というよりかは、思っていたより長く時間がかかった。
次は、やはり文字も覚えておきたいな。
というとで、その日から俺は母親に文字を習い始めた。
話がそれるが、どうやら俺は女に転生していた様なのである。
性別が変われば、身体的な構造も幾分か変わる。
まずはそれに慣れることだな。そして、それに都合のいい動きを覚え直すことだ。
俺はそう心で呪文のように繰り返しながら、文字を習い始めたのだった。
次回「04」