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絶滅種族の転生譚《Reincarnation tale》  作者: 記角麒麟
復讐と山羊 Revenge and goat
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「29」復讐と山羊 エピローグ

 クローゼットを倒してから、1週間が過ぎた。


 一日目。


 俺たちは、学校に事情を話してから、一度トマヤに戻り、オルメスの家でこれまでのことを話した。


 彼女の葬儀はトマヤで行われることとなった。


 二日目。


 俺たちはチャリナからイルスへ移されたオルメスの遺体を、トマヤに運び、両親に受け渡した。


 三日目。


 この日は、俺も親のところへと戻り、これまでのことを話した。


 ひどく叱られた。


 そりゃ、自分の子供がそんな危ないことしたら誰だって怒るだろうよ。


 そしてその後、力強く抱き締められた。


 あぁ、やっぱり家族っていいな。


 俺は、人の温もりを、再認識できて嬉しくなった。


 その日一日は、家族と共に過ごした。


 四日目。


 丸々一日を使って、皆で葬儀の準備をした。


 その日一日、トライデント家の人たちは何も話さなかった。


 五日目。


 オルメスの親戚が全員集合した。


 葬儀は翌日行われるようだ。


 六日目。


 俺たちはオルメスの葬儀に参加した。


 俺の分身がついていながら、オルメスは死んだ。


 もっとたくさん作って、軍隊みたいにして突撃すればよかった。


 俺のせいだ。


 その日は俺も泣いていた。


 七日目。


 俺たちはトマヤを出発。


 イルスの家に戻った。


 その日は、とても空気が重かった。


 そして、夜が明け、今日が来た。


「もう、こんな時間か」


 俺は端末の時計を確認して、ベッドを降りる。


 今までオルメスが使っていたベッドは、今はリレルが使っている。


 あの後、依頼書の報酬欄を見直してみたのだが、そこには子供っぽい筆跡で『斥候隊に選ばれたチームには、もれなくボクことリレル・トニーがついてくる!』と書かれていた。


 皮肉だな。


 俺がきちんと報酬まで目を通していれば、オルメスを死なすことは無かったのに。


 俺は洗面台に映る自分の顔を見て、情けなく思った。


「死す物は、皆、死すべくして死を遂げる、か....」


 これは、バルスの古くから伝わる教えで、その国の神官がよく、祭の時によく言っていた言葉だ。


 確か続きは、『死者に選ばれたものは、永遠に解放され、次の世界へと試練の旅路に向かう』だったか?


 あまり細部まで詳しくは覚えていないのだが、今の俺からしてみれば、そんな言葉は言い訳だろう。


 俺は、顔を水で洗い、あらかじめ持ってきた制服をその場に置いて、服を脱ぎ始める。


 この家は脱衣所と洗面所がひとつになっていて、そこから浴室へと繋がっている。


 俺は裸になった自分が映る鏡を眺めた。


「ずいぶんと変わったな、俺も」


 生前の自分から比べれはそうだが、それを無しにしても、自分の肉体は成長していた。


 トレーニングで鍛えた筋肉は、薄い脂肪の膜に包まれ、きれいなボディラインを描いている。


 胸筋も鍛えてあるせいか、胸の方は未発達でツルペタだ。


 そして、他にあるとすれば、内臓関連のことだ。


 男性と女性では、大きく体の作りが異なる。


 まるで、自身が別の種の生命体に成り代わったような錯覚さえ覚える。


 時折、ものすごい激痛が急に走ったり、変なことがきっかけで体調を崩すこともある。


 バルスの体と他国の体では、そもそも、身体能力から成長過程、精神のあり方や老化が停滞するなどの違いはある。


 それらを鑑みれば、別種の生命体という表現は、あながち間違いでもないのだろう。


 俺はシャワーを浴びながら、一人ぼーっとそんな風に考えた。


「あ」


 シャワーを浴びて、そろそろ上がろうかと思っい、扉を開けた。


「うわあ!」


 すると目の前に、半裸のチゼが立っていた。


 やせい の へんたい が とびだしてきた!


 なんつって。


 とりあえず、何をしていたのかを聞こうか。


 だいたい予想はつきそうな気もするが、ここはひとつ、遊んでみよう。


 俺は、心の中でニヤリと笑った。


「お前、何してんの?」


「あ、いや、別にそういうことをしようとしていたんじゃないんだ!ご、誤解だ!」


 そんなこと言われてもな....。


 あと、俺がここで叫ばないのは、俺がホモじゃないからだ。


 念のためにもう一度言っておく。


 俺はホモじゃない。


 あ、でも、この場合どうなんだろう?


 これって他人から見れば俺はどう映ってるんだ?


(一応、バスタオルで体隠しとくか)


 こんな幼児体型に興味はないと思うが、一応巻いておこう。


「へぇ、襲おうとしてたのか。意外と肉食系なのな。DTかと思ってた」


「何で知ってるんだよ!?」


「え、お前マジで襲おうとか考えてたの?」


 彼の驚いた顔に、衝撃の事実を聞いた時バージョンの少し引いた顔をした。


「ち、ちがう!そ、そうじゃなくて!」


 チゼが後ろを向いた。


 しかしそこには等身大の大鏡が。


「後ろ向いたつもりだけど、それ、俺のこと見えてるよね?」


「い、いいから服着ろ!」


 ....なんだろ?


 すごい理不尽なこと言われた気がする。


「へぇ、チゼってそういう性癖を持ってたのね?」


 そう言ったのは俺でもチゼでもない。


(ククルんナイス!)


「....じゃ、言われた通り、俺は着替えるとするか」


 チゼの顔がみるみる紅潮していく。


(結構面白いな、これ。もっと弄ってやろうか?)


 俺は隠すのに使っていたバスタオルで、体を拭き始める。


(チゼ、お前はこれから変態呼ばわりされるのだ!)


 俺はそう思いながら、体を拭き終わる。


「チゼ、そこのパンツ取って。お前が邪魔でとれない」


「え!?」


 何で気づかないんだろ?脱衣所から出ればいいのに。


 テンパってると正しい思考が出来ないとか?


 彼は俺のパンツを取ると、っていうかつまむと、恐る恐る俺の方へ渡した。


 なんか汚物みたいに扱われてるようでイラっと来るけど、それも面白いので、面白いままにしてみた。


「ありがと」


 それから、長い時間をかけて、俺とククルカンはチゼを弄りあげた。












「いやー、チホも面白いことするわね!」


 現在、弄られまくったチゼは、リビングにあるソファーでグデッている。


「ククルんも、なかなかのアシストだったぜ!」


 俺は親指を突き立てて、ニッと笑う。


 そこへ、楽しそうな会話を聞き付けてきたのか、フレアがやって来た。


「なんの話をしているんだ?」


「チホがね、思ってたより肉食系の変態だったって話よ」


「おい、ちょっと待て。どうしてそっちに話を持っていくんだ!?違うだろ!」


 おいおい、勘弁してくれよ。


 チゼを弄るつもりが、何が悲しくて俺が対象にされなきゃならんのだ!


「ち....お、お前、もしかして、そういうことなのか!?」


 フレアが話を真に受けたようだ。


「ちげぇよ!俺が朝風呂から上がったら、チゼが半裸で──」


「チゼが、半裸!?」


「も、もう、勘弁してくれー!」


 チゼの悲鳴が、我が家に鳴り響き、その日は始まりを告げた。


 つい先日、仲間の葬式を執り行ったというのに、なんというマイペースなんだろう。


 俺はそう思いながら、ソファーに体を預けて、天井を仰いだ。

 復讐と山羊 ー終ー


 次章、我は千里の道を行く「01」

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