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絶滅種族の転生譚《Reincarnation tale》  作者: 記角麒麟
復讐と山羊 Revenge and goat
22/159

「22」鍵の揃い目

「で、こんなところに呼んだんだ。何か用があるんじゃないか?」


「そう!それなんだけどね。私、チホが探してた奴のことを、あのあと色々調べてたんだー」


 楽しそうにしゃべる彼女。


 しかし意外だな。そういうことをするような娘じゃないと思ってたんだが。


 散々、そいつ関連で俺と口喧嘩したのに。


 いや、それはお互い様か。


「それでね!その人、どうやら魔法が全く使えないらしいの。代わりに、真理術しんりじゅつを使うらしいよ?」


「いったい、どこからそんな情報を集めてきたんだよ?」


 真理術。


 魔法がイメージを具現化する技術とするなら、真理術は、知識を具現化する技術だ。


 魔法はイメージによって式を組み、魔力を流し込むことで発動する。


 しかし、真理術は、その場にある材料を元に、自身の知識から結果を組み立て、それを変成させる。


 いわば、錬金術の上位互換で、時間や道具を全くと言っていいほど、ほとんど必要としないものだ。


 こんなのは、伝説や神話でしか聞いたことがないぞ。


 それも、7000年ほど昔の....。


「チホ?どうしたの、ボーッとして?」


「あ?いや、何でもない」


 少し考え込みすぎてしまったようだ。


 ククルカンも言っていたじゃないか。奴は異次元の人間だって。


 それなら、この世界の道理が何でも通じるとは限らないだろう。


「あ、それと私、すごい魔法が使えるようになったんだー!」


「すごい魔法?どんな?」


「へっへーん!聞いて驚け見て驚け!....えーっと、確か」


 どこかで聞いた台詞を口走り、彼女が魔法の詠唱を開始する。


 結構長い。


「───っと、出来た!」


「なっ!?それ、もしかして!」


 彼女が詠唱を終了させると、目の前の空間に穴が開いた。


「空間歪曲魔法、ピンポイントホール!」


 ピンポイントホールと彼女が呼んだ魔法。それは、バルスではこう呼ばれていた魔法だ。


「異次元生成....」


 異次元生成。


 この魔法は、バルスの限られた上級神官のみが扱うことができた魔法だ。


 その作られた空間は、入り口を拡大、縮小させることで、あらゆる物質を収納することができる。


 言ってしまえば、エア四〇元ポケットみたいなものだ。


「何、それ?」


「お前が使ってるその魔法の名前だよ。どんなものでも収納できる、最強の格納魔法だ。伝説では、ここに魔神を封印したことのある神官がいたともされているらしい」


 彼女は、目をキラキラさせて、俺の手をとった。


「さっすがチホ!何でも知ってる!」


「そうでもないよ....は、ハハッ....」


 なんだか魔術師として負けた気がした。






























 その後、俺たちは教室へと向かった。


「どこいってたんだよ?」


 俺の姿を見つけると、チゼが走りよってきた。


「ちょっと旧友をみつけてな。話をしてたんだ」


 俺は彼にそう言うと、ククルカンの所へと向かった。


「ククルん、今は奴の情報が手に入ったとだけ話しておくよ。家でまた話すから、詮索は今は無しで」


「わかったわ」


 俺はそういうと、割り振られた座席へと移動した。廊下側の一番後ろだ。













 最初のホームルームで、時間割表が配られた。


月曜日、午前中は座学、午後から魔法の実技訓練。

火曜日も、午前中は座学、午後から魔法の実技訓練。

水曜日は、午前から午後にかけて魔法の実技訓練。

木曜日の午前は、格闘による戦闘の実技訓練。

金曜日は全部座学だ。


(実技訓練主体の時間割とは、なかなかハードだな)


 それに、午前と午後で割り振られている。


 配られた時間割を確認しながら、俺はそう感じた。


「ま、いっか」


 その日の学校は、それでお開きになった。












 帰宅後。


 俺たちはリビングに集まり、約束していたことを話した。


「奴は、真理術が使える代わり、魔法が使えないという情報を得た」


「魔法が、使えない?」


 チゼがそう呟く。


「もしかして、魔力障害、ですか?」


「ちがうわ。あいつらは異次元人よ。魔法が使えないくらい、不思議じゃないわ」


 オルメスの出した予想を、ククルカンが否定する。


「真理術か。魔法の知識を持ってたなら、魔法を無効化される可能性があるな」


 チゼはそう言うと、顎に指をあて、しばらく沈黙した。


「なら、倒すには一撃しかないわね。相手の認識できないもので」


 ククルカンはそう言って目をつぶった。


「でも、難しいかもしれませんよ?相手はひとつの国の軍隊を、一人で相手にできるような人物です。そう簡単にいくとは思えません」


「....それもそうね....」


 結局、その日はひたすら対策を考えたものの、それだけでは情報が不足しているということで、早々に会議は終了した。














 翌日、火曜日。


「えー、今日から魔法に関する座学全般を担当する、シーラです。よろしくお願います」


 イルス国立第一浮遊城前高等魔法学校、通称イル校の一年一組の教室の教卓前で、薄緑の入ったシルバーブロンドの髪の女性が、短い自己紹介をする。


「それでは、今日から早速授業を開始したいと思います。それでは、教科書1ページ目をめくってみてください」


 シーラがそう言って授業を開始する。


「それでは、一番前の席の人、えーっと、ホームズさん、読んでみてください」


「先生、スペルはあってますが、読みが違います。私の名前はオルメスです」


 オルメスが指摘すると、彼女は顔を真っ赤にして、言い直した。


「ご、ごめんなさい、オルメスさん....それでは、オルメスさん、読んでくれますか?」


 オルメス、という名前はHolmesと書く。シーラがホームズと読み間違えるわけだ。


 オルメスは首肯すると、教科書を開いて、そこに書いてある文章を読み始める。


「魔法は、八種類の属性にわかれており、それは魔法属性と呼ばれている。魔法属性は、それぞれ、火、水、風、電気、土、光、影、空という属性をもつ。これら八種の魔法属性を基本属性と呼ぶ。これらの魔法属性の根本にある、どの属性にも当てはまらない属性を無属性と呼び、また、基本属性の上にある属性を、上位属性と呼ぶ」


「はい、ありがとうございました。ここまでの間でわからないことがあったら、質問してください」















 午前の部は、魔法属性についての話だった。そして現在、昼休み。


「何よ、あの授業。魔法の属性とか相対関係とか。そんなの気にしないで、魔法なんか斬っちゃえばいいのに」


 食堂のテラスで、紙コップの中に入ったオレンジジュースを、音をたてながらククルカンがストローで吸い上げる。


「そんなことができるのはククルんだけだぞ?」


「え!?ククルん、魔法斬れるの!?」


 それを聞いたオルメスが、信じられないという表情をする。


「簡単よ?魔法ってのはそもそも、私たちの一族じゃ、攻撃になんか利用しないわ。起動点が見えるもの」


 彼女の耳が、ピコピコと楽しげに動く。


「起動点?」


 チゼが頭の上に疑問符を浮かべる。


「そ。曾祖父から聞いたけど、バルスの人もこれが見えなかったらしいわね。ちょうどいいわ、説明してあげる」


 彼女は皿に乗ったサンドイッチを平らげると、ジュースで喉を潤した。


「起動点っていうのは、簡単に言うと、魔法が発動する座標のことよ。正確に言うと、発動している魔法の『作用点』と『支点』ね。これがある所に、魔法が発動するわ」


「じゃあ、何で避雷針は斬らなかったんだ?」


 あの時、彼女は避雷針を斬るのではなく、弾こうとしていた。


「あの魔法、起動点が全く見えなかったのよ。あんな魔法、初めて見たわ」


 避雷針は魔法発動地点を投げる魔法だ。


 避雷針そのものが、彼女の言う起動点になっていた。


 だから、彼女には避雷針の起動点が見えなかったのではないだろうか。


 俺がその推測を伝えると、彼女はなるほど、と手を打った。


「起動点を投げる魔法、か....。私の一族にとっちゃ、驚異の魔法ね....」


 眉を潜めて、猫耳をしゅんと萎らせていた。


 しばらくそんな風に雑談をしていると、ガラーンゴローンという鐘の音が聞こえてきた。


 この高校のチャイムだ。


「──もうすぐ午後の授業が始まるな。着替えもしなきゃいけないし、もうそろそろ行くか」


 そうして俺たちは、食堂のテラスを後にした。


 次回「23」

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