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絶滅種族の転生譚《Reincarnation tale》  作者: 記角麒麟
復讐と山羊 Revenge and goat
20/159

「20」ティータニア

 ビンゴ。やっぱり、ここにはあれがあったんだ。


「もういいでしょ?私疲れたわ」


 ククルカンがだるそうに床にへたりこんだ。


「まだ聞いてないことがある」


 オリガヤが床に伏せる彼女にそう話しかける。


「もう疲れた。何も答えない──」


「ククルカン・エンテナート、お前、俺たちと一緒に来ないか?」


 数秒の沈黙。


「は?」












 いや、驚いた。


 ナンパか?


 まさか、あのチゼがそんなことを言うとは。


 ほら、もうククルんがキョトン顔からどんどん表情が険しくなってきてるぞ?


 また戦闘になるんじゃないか?


 と、思っていたが、どうやら杞憂だったようだ。


 彼女は、いつまでここにいても面白くないから、という理由で、ついてきてくれる様だった。


 それでいいのかよ!?


(おい、チゼ。どういうつもりだよ!?)


(は?何が?)


(お前、もしかしてあーいうのがタイプなのか!?)


(は!?ちげーよ?!ただ、連れてって欲しそうな顔してたから....)


 俺たちは小声で話し合う。


(お前、怖いぞ。いずれ人拐いになるぞ!?)


「なんねーよ!」


 急に大声を出したせいか、ククルカンが驚いていた。


 あれ?


 こいつ最初と何か雰囲気ちがくね?


「ぜ、全部丸聞こえなんだけど...」


 彼女はそう言って、頭の耳をピクつかせている。頭の耳が、だんだんと萎れていく....。


 それを観察していると、彼女は見られていることに気がついたのか、両手で耳を隠した。


「なによ!じろじろ見ないでよ!」


 彼女は赤面し、若干涙目になりながらこちらを見上げる。


 可愛い....。


「なんか、フレアとオルメスがくっついたらこんな感じになりそうだな」


「同感」


 俺たちはしばらくの間、その可愛い生き物を見ていたのだった。













「いい?本来、私はティータニアを異次元のやつらの手に渡ることを阻止するのが仕事なの。だから、ちょっとあなたたちの記憶を覗かせてもらうわ!」


 しばらくして。ククルカンはそんなことを言い出した。


「好都合。やってくれ」


 俺の記憶を知ってもらったほうが、余計な説明が省けて助かるしな。


 俺はそう言うと、彼女の前へと躍り出た。


 彼女は、俺の頭の上に手をのせると、血相を変えてすぐに手を離した。


 なんか、少し傷ついた。


「....わかったわ、あなたに力を貸すわ。利害の一致ってところかしらね」


 俺は彼女のその言動を不審に思ったので、聞いてみた。


「どういうことだ?」


「さっきも言ったわ。利害の一致よ。あの黒い髪の人は、7000年前の生き残りよ。だってあの武器、こっちの世界にはない物だもの」


 そういうことか。


 俺を殺した奴の正体を、こいつは知っている。


 さらに、そいつは彼女の敵でもある。


 利害の一致か。


 それをはたから見ていた彼は、不思議そうな顔をして、こちらを見ていた


 まぁ、不思議にも思うだろうよ。


 何せ、彼女は前世の俺のことも見てきたのだから。


 同じように、チゼの記憶も確認して、俺たちは彼女と一緒に魔具を回収に行った。





















「それじゃ、まずは私の転移で魔具のあるところまで移動するわ。二人とも、私に捕まって」


 彼女はそう言うと、両手を広げた。


 俺は彼女の手を握った。同じく、チゼも逆方向の手を握る。


「それじゃ、いくわよ──転移、最深部!」


 彼女が叫んだ瞬間、がらりと景色が変わった。


 そこは、無機質な部屋で、中央には石の台があり、その正面の壁はくぼんで、そこに、見覚えのある、赤い液体の入った小瓶が置かれていた。


「これって....マロックスの時の....」


「いや、あれとは違うものよ」


 彼女はそう言って、あの小瓶をこちらに渡す。


「これを全部飲んで。そうすれば、チホは分身の能力を得ることができるわ」


 バルスとの共同開発。いったい、バルスがどこと組んで作ったのかはわからないが。


(あいつを殺せるなら、それくらいやってのけさせる!)


 俺は意を決し、小瓶の中の液体を一気に飲み干した。


「!?」


「大丈夫か、ヤナギ!」


 複数の感情や人格が、波のように、いや、もっとすごい、津波のような勢いで、俺の中に流れ込んでくる。


(これくらい、あいつを殺せるのなら!)


 すると、突然その波が沈んだ。


 拒絶をしたことが、波の原因だったのだろう。


「....大丈夫だ。このくらい、どうということはない」


 俺はそう言うと、ククルカンに、空になった小瓶を渡した。


「ありがとな」


 そう、一言付け足して。






















 彼女と共に浮遊城を出ると、既に空は明るくなっていた。


「ふあー....なんか、今日は疲れたな」


「だな」


 朝日を見て、俺たちはあくびをした。


 そう言えば今日は一睡もしていなかったのだから、当然か。


 そのときだった。


 突然、お腹の鳴る音がしたのだ。


「お、お腹空いたわね。何か食べるものはないの?」


 犯人はククルカンだった。


 ぐー、と、再び腹の虫が鳴き出した。


「そうだな、今日はそろそろ家に帰ろうかな」


 俺はそう言うと、分身を3つ作り出した。


「お、初使用か。何に使うんだ?」


 チゼが聞いてくる。


「オルメスとフレアの捜索をな。あいつら、ちゃんと連れて帰らないといけないだろ?」


 俺はそう言うと、2体の分身を放った。


「あれ、残りの一人はどうするのよ?」


「こいつは、先に家に帰らせて、事情を説明させる」


 俺はそう言って、最後の分身を放った。


「なるほどね。じゃ、帰りますか」


 そう言って俺たちは、家路についたのだった。


 といっても、ククルカンは違うかな。


 細かいことは気にしない、気にしない。














 大森林を抜けて、フォレオス県まで来ると、俺が放った2体の分身と一緒にいるフレアとオルメスを見つけた。


「「ヤナギ!」」


 俺の姿を見ると、分身たちは、お役御免とばかりに、霧となって消えた。


「事情は聞いたぜ。まさか、本当にあれを手に入れてくるとは思わなかったぞ!やっぱお前はスゲーよ!」


 フレアは興奮した風に、そう言った。いや、叫んだといった方が近いかも知れなかった。


「そっちのがククルカンか。これからよろしくな!」


「え、あぁ。よろしくね」


 高すぎるテンションに付いていけなさそうに、ククルカンが苦笑いを浮かべた。


 こうして、俺たちの一夜だけの冒険は、次なる物語へと、幕を開けるのであった。

 次回「21」

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