「02」性悪説と転生
先天歴2015年、バルストリクトーニ国で、とある事件が発生した。
大量殺人事件だ。
バルストリクトーニ、通称バルス国は、ノホニ列島ノホニ大陸最南端に位置する国家だ。
この国は、世界で最も広いと言われている樹海、ノホニ樹海の最南端にあり、ここの国の人たちは、皆頭が白く、目が赤い。
身長は中学から高校の一年生ほどで止まり、その頃には老化も止まってしまう。
そのためか周りからは、悪魔と呼ばれたり、あるいは神と呼ばれたりと、周囲からは奇異な目で見られることもしばしばある。
どこの国も同じで、自分と違うものは排除したくなるし、自分たちより優れれば崇拝したくもなるものだ。
あの殺人鬼を除いて。
あの殺人鬼だけは、崇拝することはできない。
(絶対に、それだけはない)
──俺は死んだ。あの殺人鬼によって。一家皆殺しだ。奴はなんのためにそんなことをしたのか。
(許せない。絶対に許してたまるものか!)
気がついた頃には、俺は転生しているらしかった。
真っ暗になったと思えば、光が見えたのだ。
ぼやっとした光だ。
そこに、俺とは違う、黒い髪をした奴らが、こちらを覗き込んでいた。
「──!」
敵!と叫ぼうとしたのだが、その口からでたのは、まるで生まれたばかり赤子のような、間の抜けた声だった。
そこで生前から賢かった(自分で言うな)俺はあることに思い至った。
(転生している!?)
そう気がつくがはやいか。
俺は作戦をたてていった。
(ラッキーだ。これで、念願の復讐を果たせるかもしれない!)
そう思うと、俺は嬉しくて堪らなく幸福だった。
(先ずは戦うための力をつけないとな)
そう考えた俺は、まずはこの状況に馴れ、力を身に付ける術を探すことに決めた。
(絶対に、今にこそ殺してやるからな!)
次回「03」