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絶滅種族の転生譚《Reincarnation tale》  作者: 記角麒麟
人形劇 にんぎょうげき
150/159

「15」場面の駒と掌の道化

「着いたぞ」


 翌日、俺は京馬と共に、屋敷跡に来ていた。


(ひどい有り様だな)


 その跡地を見た最初の感想はそれだった。


 もはや元の形を残してはいない灰となった木片が焼け野原のそこら中に飛び散り、未だにそこかしこから煙が上がっていた。


「漸くだ」


 彼は小さく呟いた。その声音には、若干の怒りと、悲しみが混在していた。


 彼の過去に、いったい何があったかは知るよしもないが、おそらく、これからのこと、すなわち界災関連──いや、記角麒麟関連で、何かトラブルがあったのだろう。否、もしかしたら、トラブルと言うのも生ぬるい、厄災──これ以上は考えてもわからないだろう。


 俺は、深呼吸をすると、瓦礫の方へと歩き始めた。


 俺の予想が正しければ、あの屋敷には地下へと続く階段のようなものが降りているはずだ。


 なぜなら、地上に残していれば、今回のように思いがけない事態に遭遇して──いや、待てよ?この探し物は不要じゃないのか?


 たしか、俺はここにはあのゲーム機に関する資料がまとめられているはずだと踏んでいたはずだ。しかし、今となっては、その資料は不要じゃないのか?


 なら、行くべきはここではなく、あの研究施設のはず。


 ふと、俺は京馬の方を向いた。


 彼は瓦礫をあさっていた。そして、その瓦礫の裏から出てきた隠し通路のような穴を見つけて、ニヤリと微笑んだ。


「あった....!」


 彼はいったい、何を探しているのだろうか?例の資料か?いや、彼の話し振りから推測するに、その話はすでに知っているはず。


(何を考えているんだ?)


 俺は、歓喜に滲む彼の目を見て、考えを変えた。


(京馬は、その向こうにあるものを知っている?そして、その奥には何かもっと重要なものがあるのか?)


 俺は、彼の方へと駆け寄った。


「行くぞ、イナバ」


 彼はそういうと、その穴へと足を踏み入れた。


 瞬間、彼の姿が消えた。


 掻き消えたと言ってもいい。とにかく、すっと消えたのだ。


(転移装置?!)


 俺は、彼が消えたその穴まで駆け寄った。


 穴は、さほど深くはなかった。といっても、約二センチほどの深さだ。そして、その穴の底には、見たことがある。転移魔法陣が描かれていた。


(なるほど、界災か)


 おそらく彼は、それによってどこかへと飛ばされたのだろう。そして彼は、その行く先を大方予測していた。いや、もしくは知っていたのかもしれない。


(行くしかない、か)


 魔法陣を見るに、一方通行型の転移魔法陣だが、ここでためらってはならない。


 俺は、早鐘を打つ鼓動を、深呼吸をして抑えた。とたん、自分の体に安心感がみなぎる。


「よし」


 俺は、そうして彼の後を追ったのだった。


















 降り立った場所は、とある牢屋の中だった。


 そこでは、京馬が待っていた。


「遅い」


 彼は小声でそう言った。


「すまん。それで、ここはどこなんだ?」


「奴の研究施設の中だ。記角の野郎、ご丁寧に裏ルートを用意していやがった」


 裏ルート?どういうことだ?


「話は後だ。兎に角、これから最上階へ行って、アリスゲームの第四エンディングを終わらせにいく」


「ちょ、ちょっとまってくれ。いったいどういうことだ?」


「話は後だ。....そろそろアリスが来る。戦う準備をしておけ」


 え?ちょっと待ってほしいんだけど。どういうこと、これ。え?俺はあっちの世界に戻って、血の石をぶち壊してから、アスタロトと対戦....って流れだったんだけど....もしかして、アスタロト討伐が先?


 嘘だろ、聞いてないぞ、そんなの!


 俺は混乱する頭を、とりあえず切り替えることにした。


 何にしても、アスタロトを殺れる日が早まったのは良いことだ。


 俺の世界を狂わせた張本人を、ぶちのめす!


 すると、複数人の足音が聞こえてきた。アリスだ。


「行くぞ!」


 京馬はそう言うと牢屋から躍り出た。


 続いて、俺も外に出る。


 するとそこには、全く同じ姿をした少女たち──目の色や髪の色等は朔とは違うが、雰囲気は彼女そのものだった。


 彼女たちは、俺たちを見つけると、こちらへと接近してくる。そこに害意も殺意も見受けられなかった。


 しかし。


「ッ!?」


 彼女たちは、こちらへと攻撃してくる。


「二人固まっていたらやりにくい。俺が向こうへ突っ込むから、イナバはそれについてきてくれ。なるべく戦闘は避けていく!」


「了解!」


 彼は襲いかかってくるアリスを無敵化で弾きながら、作戦を伝えた。
























 京馬について、その細い地下牢の廊下を走る。


 アリスたちも、戦闘の学習を積んだのか、もう襲いかかってこない。


 少し拍子抜けだな。もっと襲いかかってくると思ったのに。


 いや、それほどにこの無敵化という技術が優れているということか。


(まるでマ〇オの無敵状態だな)


 俺はそんな感想を抱きながら、地下牢から脱出する出口へと向かう。


「そういえば、裏ルートってどういう意味だ?」


 そういえば、まだ彼からその答えを聞いていなかった。


 裏ルートってどういうことだろうか。


「....そのままの意味だ。これは、あいつなりにシーンを作ってるんだ」


『──なんせ、場面というものを作りたかったからね──』


 記角麒麟の言葉が甦る。


 ということは、これも彼の手の内ってことか。


「....癪に触る野郎だ」


 つまり、彼はこの現状を予測──いや、もしかしたらこうなると、百パーセント知っていたのかもしれない。


 と、なると、この現状も、彼の予知の範疇。つまり、これから起こることは大体予測できる。


 そう。彼は場面を作りたいと言っていた。なら、彼はつまらない展開には絶対にしたくはないだろう。だから、あからさまなことはせず、ということは、十中八九ない。


 広すぎる地下牢を駆け巡ると、そして追に、上へと上る階段を見つけた。


 同時に、そこを門番のように守る、一人のアリスも見てとれた。


 そのアリスから感じられる雰囲気は、明らかに他のアリスとは一線を越えていた。


「待っていました、東京馬。そして、因幡六花」


 彼女は、そう感情のない声で、話しかけてきた。


「手加減はしません。全力でここを通ってみなさい」


 彼女は腰の刀を抜いて、自然体で構えた。


 こちらも、それぞれ構えた。


 そして、彼女はそれを確認すると、次のように言って、こちらに向かってきたのであった。


「用意ができたみたいですね。それでは、アリス第222番試験体ツツジ・アスタロッツ・アリス、参ります!」

次回「16」

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