「15」焦り
俺たちは各々戦闘態勢になって、フォーメーションを組んだ。
ドラゴンには魔眼というドラゴン特有の特殊能力が備わっている。
この能力は個体により様々な効果を発揮するが、群れをなしている彼らは、それぞれの弱点を補う形で群れを組んでいることが多い。
そのため、討伐するのは愚か、龍災に巻き込まれないようにすることすら困難だ。
本当に面倒な話だ。
いずれ人類絶滅するんじゃないか?
俺たちは隊列を崩さず、できるだけ早くドラゴンへと近づいていく。
ドラゴンは視覚、聴覚、嗅覚が共に鋭く、100m圏内なら余裕で感知されてしまう。
そのため、逃げることすら難しい。
(こっちには調教用のハイグラビティがあるけど、重力無視とかの能力だったら、ほぼ確定的に全滅コースだな)
そんな不穏なことを、俺は心の中で呟いた。
少し進むと、森の茂みの奥に、鼓動のように脈打つ壁が見えた。
いや、これはドラゴンの鱗だ。
それは、闇を思わせる漆黒の色をしており、その黒い鱗の一枚一枚が、まるで巨大な盾の様に見えた。
(バルスにいたドラゴンはこんな大きくなかったぞ!?せいぜい2、3メートル程度だったはずなんだが....)
思ったより大きい。これが魔力濃度の差ってやつか。
「────!!」
俺はそれを見るなり、大きく息を吸って、出せる限りの音を口から放った。
同時に、魔法を使って音の波を増幅させ、人間に聞こえない位の高音へと変化させる。
所謂高周波って奴だ。
ドラゴンはその高すぎる聴力のせいか、大きな音に弱い。だが、耳の硬化というドラゴン独自のアクションのせいか、その弱点を克服してしまっている個体もいる。
「──!」
どうやら逆効果だったみたいだな。
「何すんだよヤナギ!?」
オリガヤが叫びながら逃げる。
「だってしょうがないじゃないか!ドラゴンは耳がいいから、そこをつこうと思ったんだよ!」
「二人とも喧嘩はやめてください!」
オルメスが顔を真っ青にしながら全力疾走する。
すると、目の前に金色の壁....いや、ドラゴンの鱗が見えた。
その光景に、そこにいた誰もが絶望を覚えた。
逃げることは許されないと、絶対命令を食らった気分だ。
絶体絶命だ。
ドラゴンに挟み撃ちをされる。
相手の土俵たる空へ逃げるのは逆効果だろう。
となれば、残る選択肢はあとひとつだ。
「全員、戦闘態勢!」
あのドラゴンを倒す。
それしか道が残っていなかった。
次回「16」




