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絶滅種族の転生譚《Reincarnation tale》  作者: 記角麒麟
人形劇 にんぎょうげき
147/159

「12」難易度星五つ

「んじゃ、まずは基本技から教えようか。ジズ、包丁を持ってきてくれ」


「わかったー」


 あの後、俺は京馬に修行をつけてもらうことにした。


「包丁?いったい、何をする気だ?」


「ふむ。まずは基本技であるところの、無敵化を教えようと思う」


 それは本当に基本技なのだろうか。


 俺の怪訝そうな目を見て、彼はニヤリと微笑んだ。


「俺も、師範代から教わったときは、度肝を抜かれたからな。俺が教える技の数々は、先ずこれの上になりたっている。つまり、これができなければ、何も使えないってことだ」


 と、なると、彼の技はとんでもなく高度なものなのだろうか。


 少しワクワクする。いや、違うか。俺は、アスタロトを殺すための技を覚えられることが嬉しいのだ。


 しばらくすると、ジズが、その身の丈を越えるサイズのアタッシュケースを2つ持ってきた。


(中にあるのって、本当に包丁なんだよな?)


 京馬はそれを受けとると、中から一振りの包丁を取り出した。


「イナバ、これでおもいっきり、俺の腹を刺してみろ」


「わかった」


 彼が言うことだ。何か考えがあるのかもしれないし、それが無敵化の技かもしれない。


 俺はそう思って、躊躇なく、今出せる限り最速最強の一突きを繰り出そうと構える。


 数分かけて、大気の流れを掌握した。


(いける....!)


 包丁の刃先が赤紫色に輝く。そしてその輝きは、包丁全体に広がり、一際輝きを増す。


 そして俺は、技を放った。


 吸い込まれるようにして放たれた包丁の刃先が、彼の腹を触れた瞬間、しかし予想に反して、包丁の刃が真ん中から折れて弾けた。


「なっ....?!」


 刃先が腹部に触れた一瞬。いや、それよりもっと短い刹那の間に、触れた場所から同心円状に赤紫色の波紋が広がったのが見えた。


 しかし、この驚嘆の声をあげたのは、俺ではなく京馬だった。


「おもいっきり、と言われたので、その様にしたんだが....間違っていたか?」


 目を見開いたまま硬直している彼に、俺はそう尋ねた。


 さっきの現象。


 鉄格子でやった時の波の広がりとは違う。あれは包み込まれるようにして光が広がったが、今回は、池に意思を投げ入れた時のような波紋が広がった。


 いったい、何が違うのか。


 彼は、俺の問いに数秒遅れて、返事を返した。


「い、いや....違いないんだが....」


 彼は、何かを言おうとしたものの、何を話してよいかわからないようだった。


「イナバ、さっきの技は、どこで覚えたんだ?」


「覚えた....っていうよりは、杏子に閉じ込められたときに、なんとか脱出する方法を探ってたら、なんか使えるようになった、というか、なんというか──」


 説明しろと言われても難しいんだよな....第一、俺もそれがなんなのかは理解的ないわけだし。


 しかし、わかることと言えば、その技が、俺の持っている、使える中で最大威力の技であると直感していることくらいだ。


 なんせ、神気道の天変地異を応用して作ったわけだし。


 俺が、悩んだようにそう答えると、彼は口を開いたまま、固まってしまった。
















「それでは改めて、無敵化について説明しようと思う」


 仕切り直すように、彼は手を打ってそう言った。


「無敵化とは....んー。難しいな。あらゆる攻撃を無力化させる、というより、エネルギーの伝達制御、って言えばわかるか?」


 エネルギーの伝達制御?


「ほら、さっき包丁をこうやって腹に刺そうとしただろ?あれは、作用するエネルギーの振動を、体内を通して大気に受け流して、受け流したエネルギーを倍加させて同じ方向へと投げ返しているんだ」


(どゆこと?)


 つまり、崩壊剣は体振動で空気の刃を作り出して(正確には、気圧を特殊な体振動で受け流して、そのエネルギーを発散させているのだが)攻撃しているのに対し、こちらは、放たれたベクトルを、向きだけを反面させて、そのエネルギーを大気に流して倍加させ、体振動を使って全く同じか、もしくはそれ以上のエネルギーを叩きつけている、ということか?


 なるほど、崩壊剣の応用技か。


 となると、技の発動にはタイミングが合わないといけないってことだな。


 一瞬遅ければダメージを負うし、早ければ技はミスする。


 タイミングが命か。


「わかってくれたか?」


「──何となく。しかし、かなり高度な技だな。これが基本って、他の技はどうなってるんだよ?」


「この技術を利用した、ほぼ筋力を必要としない技術だな」


 針流だって、基本は相手の虚をついたり、エネルギーの向きをずらして威力を削減したり、速さによる威力の増強だったりするのに。


 こいつのそれは、エネルギーの振動を支配することが基本なのかよ....。


 習得に時間がかかりそうだ。


 そうして、俺の長い修行の日常が始まった。

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