「14」遭遇
俺は、フレア、オルメス、オリガヤの三人を半ば強制的に引き連れ、トマヤ国を抜けて、大森林の入り口まで来ていた。
「森で動く際のフォーメーションを確認する。まず、魔法主体のオルメスが後衛、魔法も拳も使えるオリガヤが中衛、近接戦しか出来ないフレアが前衛。俺は、案内として前衛につきつつ誘導する。いいな?」
すると、三人はわかったと首肯した。
「それでは、ここから東北東方面、エルボ山に向けて出発する」
森の中を歩いている間は、驚くほど静かだった。
獣の鳴き声ひとつしない。
そのせいか、会話すら始まらず、沈黙が辺りを支配していた頃、オルメスが一言呟いた。
「これなら、安心してエルボ山まで行けそうですね」
ガス、ガスという、草を掻き分け前進する四人の足音が、周りに響く。
「いや、静かすぎる。これは何かあるかもしれないぜ?」
オリガヤがその言葉に、脅すように返す。
「フレア、どう思う?」
「わかんねーな。ただ、異様な圧迫感は漂ってくるんだがな」
そこで会話が途切れた。
再び、草を掻き分けて進む音が、辺りを支配した。
どのくらい歩いただろうか。
もうそろそろ、日が落ちかけている。
これ以上は危険だな。
そう判断した俺は、三人にテントを張って、今日はここで休むことを伝えた。
だって、もう一回戻ってたら、それこそ時間の無駄で、いつになっても着きそうにないだろ?
その夜。
俺たちは交代で見張りをした。
そしてそれは、俺がちょうど見張りの番に回ってきたときだった。
「──!」
獣の吠え声が聞こえてきたのだ。あれは、バルスに居たときに聞いた覚えがある。
「ドラゴンが、近くにいるな」
それはドラゴンの雄叫びだった。
ドラゴンは基本、2から3頭の群れをなして行動することが多い。
そのため、バルスでもドラゴンを押さえるのには大人が数十人程必要だった。
しかし、その多くは、ドラゴンの持つ特殊な力、魔眼によって、大抵は全滅させられていた。
バルスでは、それを龍災と呼んでいたっけか。
「ドラゴン!?なんでこんなところにいるんですか!?」
オルメスが飛び起きた。
「やっぱり、魔物が居なかったのはそれが原因か。ヤナギ、どうする?このまま行くのは、少し無理があるぞ。一旦引き返してフォレオス県のギルドに報告した方がいいんじゃないか?」
そう提案してきたのは、オリガヤだった。
「そうだな。チゼ、ここからドラゴンの位置はどれくらいかわかるか?」
「だいたい50メートルってところか」
「運が悪いな。こっちは風上、もうすでに匂いで気づかれてる。逃げてもすぐ捕まるな」
つまり、戦うしかないということだ。
すると、フレアが挑むところだ!と枕元の剣を手に取った。
「よし、陣形を整えろ。フォーメーションは覚えているな?」
俺の問いに、各々が頷く。
そして、その予想外は始まりを告げた。
次回「15」




