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絶滅種族の転生譚《Reincarnation tale》  作者: 記角麒麟
因幡の白兎 いなばのしろうさぎ
134/159

「15」因幡の白兎

 屋敷に戻ると、そこは火の海だった。


(デスヨネー)


 それを見ながら、俺はそう思った。第一、あんなところにホンモノが出てくるわけがないのだ。倒したと思ってたのは、影武者か何かだろうな。


 そして、現在起こっているこの状況。


 界災。


 それはすなわち、世界と世界の融合によって生じる、空間のブレ。それが原因となって起こるあまたの災いだ。副産物という言葉から想像がつくように、災いのほとんどは、あちらの世界からやって来た魔物たちによる被害だ。


 それが天災ではなく人災というのだから、あの麒麟とかいう人間は呆れたものだ。


「因幡さん!無事でしたか。どこを探してもいなかったので....その方は?」


「仲間だよ、俺の。華望らが遠ざけていたあの世界でのな」


「!?」


 彼の驚いた顔を見やりながら、俺は災害の副産物を探した。


 それは、すぐに目に留まった。


「ドラゴンとは、また懐かしいな、フレア」


「そうだな。チゼとオルメスがいた頃を思い出すよ」


 その台詞で、どうやら彼女は何をするべきか悟ったようだった。


「言っておくが、俺は以前のような力は出せない」


「どうする気だ?」


「一匹俺に任せろ」


 俺はそう言って、前に出た。


「危険です!」


「華望さん、槍とか剣って、ありますか?」


 俺は上空から火を吐き散らす赤い西洋風のドラゴンをにらみながら、そう聞いた。


「小刀なら、手元にありますが」


 小刀ね。なら、陰刀流のあれが使えるな。


「貸してくれ。潰したらごめんよ」


 俺は、小刀を受け取って、火の海へと入っていった。












(小刀っていうより、ちょっと大きめのコンバットナイフみたいだな)


 サイズは、だいたいそんなものだった。重さも、そんなにない。体感で2ポンドほど位か?しかし、この軽さでこの強度は凄い。


 手入れは行き届いていて刃こぼれひとつ有りはしない。そして、この異様に赤い刀身。


 いったい、どんな金属なんだろうか。


 やがて、俺はドラゴンの真下に来た。


(だいたい25メートルくらいかな。周囲に上がれる場所は....っと、あったあった)


 俺は、近くに倒れていた木材の山の上に上った。固まってそこにあったためか、燃焼率は悪く、そんなに燃えていない。


(暑いから、さっさと済ませるか)


 俺がすんでた、バルストリクトーニ国では、龍災によって、多くの人が犠牲となって死んだ。しかし、それは昔々の話だ。


 今では、ドラゴンの急所である逆鱗を突かずに、一瞬にして殺す方法を、俺は知っている。


(一か八か)


 俺は、少し助走をつけて、ドラゴンに向かって跳び上がった。


 そして、空中で一回転して、弱い気流のむらを作る。


 同時に、小刀を奴の肩口の鱗と鱗の隙間に突き立てる。


 ドラゴンは、その硬い鱗で身を守っているが、その下には、分厚い硬い筋肉と、柔らかいゲル状の筋肉で覆われている。


 ドラゴンは、うまく体を動かすために、駆動部分は比較的柔らかく、且つちぎれないように少し固めな皮膚が張り付いる。


 また、翼のつけねと肩のつけねは、ほぼ同じなため、滑りをよくする粘膜が覆われており、常に周囲の気流を一定にしておくことで、乾くことを防いでいる。


 この粘膜が乾くと、周囲の鱗はガラスのようになり、周囲が暑いと、溶けやすくなる性質を持つ。


 そこに、鋭利な刃物を突き立てられると、筋肉の駆動がうまくいかなくなり、制空権を失い落下する。


 さらに、制空権を失ったドラゴンは、一瞬混乱して、スタン状態になる。この時間は、短くても一秒と長い。


 この間に、片方でも魔眼を潰すことで、相手の能力を封じる。後は、ただの空飛ぶとかげなので、やりたい放題にできる。


 俺は、落下中に目を潰して、背中にのった。


「──!!」


 ドラゴンが大きな声で鳴き叫ぶ。いや、これは泣き叫んでいるのかもしれない。


「ふん!」


 まっすぐに、頭に向かって垂直に小刀を降り下ろした。


 すると、ドラゴンの頭は、内側から粉砕した。


「陰刀流対獣剣術、発破はっぱ


 降り下ろした回数、二回。しかし、傍目に見れば、一回に見えただろうスピードだった。


 この技は、一撃目で放った技の振動を、二撃目の技の振動に当てて、中で爆発させるというものだ。


 大方予想はしていたが、反動で肩と腕がじんじんと痛む。すごく痛い。


 何せ、一瞬ではあるものの、脳のリミッターを解除して行ったのだから、腕の皮膚はほとんど弾け飛んでしまっている。


(できないことはしないことだな)


 俺は、その痛みが熱に焼かれてヒリヒリと痛むのを、口を噛み締めて耐えながら、迅速克つ敏速にその場から離れた。



次回「16」

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