「13」ゲーム2
しばらくの間、手持ち無沙汰だなと思いつつ、俺は自室に戻った。
さて、何をするか。存外暇なものだな。
ふと、俺は机のひきだしを開けた。
(写真?)
引き出しの中に入っていたのは、一枚の写真だった。
写っていたのは、一人の男と、小さい頃と思われる因幡六花、つまり俺の二人が写っていた。男性の方は見覚えがある。病室で、例のゲーム機について調べていた頃に見た。
(記角麒麟....なんでこんなところに写ってるんだ?)
写真を裏に返してみると、そこには
『The game of Arice No.006//2039/12/02//try』
と、筆のようなもので書かれていた。
「アリスのゲーム、ナンバー006。2039年12月2日実行?」
どういう意味だ?
俺は、次にその写真の背景に注目した。
(どこかの研究施設か?いや、見覚えがあるな。これは、もしかして、俺が入院していた病院か?それと、この男....。連想できるのは、おそらく、あの『眠り』か?とすれば、このアリスのゲームってのは、もしかして──)
もしかして、『最初の犠牲者』は、犠牲者じゃなくて、アリスゲームの最初の被験者?なら、俺は、文から察するに6番目の被験者ってことか?
ふと、界災という単語が、脳裏に開いた。
(もしかして界災は、自然災害ではなく、人工的に起きたモノ──つまり、人為的な結果?)
この二つが関係していることは確かだ。
そして、その二つを操っているのが、記角麒麟であることも間違いない。
(しかし、界災ってどんなものなんだ?)
何らかの災害であることは間違いなさそうだが....。
これ以上ヒントは見つからないか。
俺はため息をついて、ベッドの上に寝転んだ。
界災についての情報を俺から避けるということは、あの世界と何か関係があるんだろうな。なら、界災を調べれば、答えにたどり着ける気がする。
しかし、このままでは、何もならないだろう。何か分かれば....。
そう思っていると、部屋の扉がノックされた。
俺はベッドから起き上がって、入室を許可した。
「なっ?!」
入ってきたのは、先日の黒いフードを被った人だった。
俺はとっさに跳び上がって、ペン立ての中からハサミを抜き取った。
今のか弱いこの体には、武器となりうるものが、とても頼もしく思えた。
フードの人は、そのまま俺に突進してくる。それを俺は軽くステップを使って回避する。
奴の袖に、よく研がれた刃物の鋭利な切っ先が垣間見えた。
(反撃、してもいいよな?)
俺は、敵の右フックの死角に入り込んで、二の腕に肘打ちを放つ。そのまま肘を伸ばして、手に持っていたハサミを、相手の脇腹にぐさりと突き刺して、引き抜き、バックステップで後ろに跳ぶ。
相手は反動でよろめくが、なおも俺を捕まえようとして、大振りの攻撃を仕掛ける。
大振りは攻撃がよく見える。がしかし。
当然ながら、俺の体力の消耗は早い。技術力に満たない体力ってのは、案外厄介なものだ。
だからなのだろう。必然的というか。不意を突かれたという場の悪さもあるだろうが、俺は、奴に気絶させられた。
次回「14」




