表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絶滅種族の転生譚《Reincarnation tale》  作者: 記角麒麟
因幡の白兎 いなばのしろうさぎ
131/159

「12」ゲーム

「そういえば、普段華望さんたちは何して過ごしてるんだ?暮らすにしても、資金とかは必要だろ?」


 俺は、隣に座る宮崎からトランプのカードを引き抜きながら聞いた。


 現在は、王様ゲームは終了して、ババ抜きに移行している。


「資金調達は、基本的に政府からの依頼で賄ってますね。因幡さんは、西暦2034年に起きた『界災かいさい』についてはご存じですか?」


「カイサイ?」


「はい」


 華望の手から、二枚のカードが棄てられる。


「界災。もしくは、世界の融化、または次元震災じげんしんさいとも呼ばれている災害現象のことです。基本的には、僕達はそれを『なんとかする』ことが、仕事ですかね」


「ふぅーん」


 2034年というと、病室であのフルダイブゲーム機についてあれこれ本で調べた時に見た、「最初の犠牲者」を思い出す。


 2034年。日本の暦では、新和しんわ4年と書かれていたか。その時代から約二年前に、例のゲーム機が、記角麒麟きすみきりん博士によって、その原型となる軍事兵器、F.D-0.1.1が開発された。それが、現在の国際法によって、戦争で使用することを禁じられ、以後、ゲーム機や医療機器として扱われることとなった。


 そして、その翌年。初めて医療機器として、それが使用された。が、それが問題だったのだろう。患者は意識を取り戻さなかった。死んだわけではない。いや、ある意味では死も同然か。脳や体は生きている。いわゆる長い昏睡状態に陥った。


 世の中には、難病や奇病として、クライン・レビン症候群、または、眠れる森の美女症候群と呼ばれるものが存在するが、この状態は、それとは全く違った。


 この病気は、ときどき目を覚ます(夢遊病みたいになることもある)ことがあるが、これに関しては全く目が覚めない。また、大人になれば自然治癒するとも言われてはいるが、これに関してはそれも当てはまらない。


 斯く言うこの因幡六花もその1人だったらしい。


 原因は何か、すぐにわかった。あのゲーム機だ。


 以来、あれでプレイしている最中には、寝落ちしないようにするよう警告されている。


「それに、あの武力は関係あるのか?」


「ありますよ?」


 界災というのは、俺の予想だと、その眠りについてだと思うのだが、違うのか。


 まあ、災いというよりは病だしな。ハズレか。


「どういう関係が?」


 桐野がカードをすてる。


「俺の上がり!さて、昼飯の材料買い出しにいってくるわ。霧葉、荷物持ちに任命な」


「えーっ!わかったよ、仕方ないなぁ」


 立ち上がった彼に、渋々といった様子で、彼女は後を追った。


「まあ、関係については後々話すとして、宮崎さん。プランターの方はもういいんですか?」


「......あ、忘れてた。ありがと、今行ってくる!」


 華望の言葉にしばし考え込む素振りを見せて、何か合点がいった様に立ち上がり、その場をあとにした。


(なんか、この話は俺から遠ざけられている感じがする)


 そんな風に思いながら、俺はゲームを止めた。


















「やあ、ヤナギ・チホさん。いえ、今はシステムと呼んだ方がいいのかな?」


「お?珍しいな、麒麟。何か用か?」


 とある金髪の幼女、システムもとい、すでに死したはずの少女、ヤナギ・チホ──いや、レレム・リルだった人格が入っていた肉体、それに、夢を使って語りかけていた彼女に、とある男性が話しかけた。


 彼の肉体は物理的にはこの世界に存在していない。彼の、彼女の視点で視るそれは、いわばデータの塊だった。


「用事なんて、ひとつしか無いでしょうに。面白いAIですね?」


「それを言うなら、それこそ貴殿の方こそ面白いというものだが?」


 システムは、なにやら情報をウィンドウに移して、彼へと送った。


「......ふむ、そしたら、アリス計画は半ば成功ってことでいいのかな?」


「いや、まだ蛇の行動が、帽子屋にどうでるかは予測しかねるな。だいたいの予想はしているが、確実じゃない。確定しないと、次の段階は無しだな」


 彼女は椅子の上でんーっと唸りながら背伸びをした。実に人間臭い動作である。


「で、どうする?界災については、そっちではもう成っているのか?」


「問題ない。後は蛇と兎の闘争劇のみだね。あのチキンが帽子屋の邪魔さえしなけりゃ、成功率はほぼ100%ってところかな」


 彼はぎこちなく笑いながら、しかし、その先に見えている数々の事象を計算しながら、彼女にあるデータを送信した。


「うまくやれよ?」


 そう言うと、彼の姿は、彼女の前から霧のように霧散して消えた。

次回「13」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ