「13」出発
力で押さえつける王は暗殺される。
それは、おそらくどこの国も同じくそうなのだろう。
なので、俺はある行動に出た。
放課後、中学校のあき教室に、俺は三人を呼び出した。
「さてさて」
俺はそう言いながら手を叩く。
「今から、俺たちはエルボ山に向かおうと思う」
「エルボ山?」
チゼがどうしてと言わんばかりの顔をする。
なぜ彼がそんな顔をするかは、想像がつく。
なぜならエルボ山は国外にあるのだから。
普通の子供だけで国外へと足を伸ばすのは、普通は考えない。
しかし、エルボ山がある大森林は、どこの国の土地でもない。
空白地帯だ。
外国かどうかというのは、判定が曖昧だ。
俺は、怪訝そうな顔をする彼に、こう返答した。
「あそこの頂上には、第二浮遊城へ行くための橋が架かっている」
前にも説明したが、浮遊城は名前の通り浮いているわけではない。
高い山の頂上にあるのだ。
しかし、この第二浮遊城は、巨大な柱の上にあるため、そのすぐ数キロ北のエルボ山の頂上から橋を渡って行くしかないのだ。
「そこから、第二浮遊城へ行く」
そこで、フレアが手をあげた。
「なんだ?」
「なぜ、浮遊城へ行くんだ?」
彼女は怪訝な顔で、そう聞いてくる。
普通は、そんな危ないところへ自ら進んで行こうなんて思わないからな。
当然の質問だ。
「テンブ国で今、大量殺人が行われていることは知っているな?」
聞くと、三人とも首を縦に振った。
「その殺人鬼を殺すためには、そこの頂上にあるという魔具、ティータニアが必要なんだ」
「ティータニア?」
「飲めば体をもうひとつ作ることができる能力を手に入れられるという、大昔の聖遺物だ」
彼女たちが聞いているのはそこではなく、なぜその殺人鬼を殺すのか、ということだろう。
犯罪者なら、警察や公務員がなんとかしてくれるだろうと思うのかもしれない。
しかし、あいつにはそんなことは関係ない。
だからといって、俺たちで勝てる保証はない。
閑話休題。
さて、浮遊城のことだが。
ここから先は予測になるが、おそらく、それを守るための魔物がいると考えた方がいい。
たしか、浮遊城には、各階層を守るための守護獣がいて、そいつを倒さない限り、次の層には行けないようになっていたはずだ。
守護獣が魔具を守っていても不思議はない。
「あの、それなら、魔法発動工程の『用途』に分身を設定すればいいのでは?」
魔法発動工程というのは、魔法を発動させるための式を書き込む作業のことだ。
分かりやすく言えば、魔法陣を書く作業のことだと思ってくれればいい。
『用途』とは、魔法を発動させる際の設定項目、『座標』『色彩』『用途』の内のひとつで、魔法の使い方を設定することを言う。
最適化とは、この内容を単純にする事で、消費魔力を押さえつつ大きな力を発動させるテクニックだ。
例えば、魔法発動工程に『用途』の所にただ『燃やす』だけを設定すると、座標を設定していない場合は原点である自分が『燃える』。
『色彩』だけに白と設定すると、座標で設定した場所が白くなる。
ただ、座標だけを設定しても何も起こらない。
この式の設定が複雑になればなるほど魔力をより消費し、さらに、その際の魔法発動工程の式を組み立てるときのイメージにかかる時間の量が多ければ多いほど魔力を消費しやすい。
「だが、これだと魔力を使うだろう?これを手に入れれば、魔力の消費は無しで行ける。何せ、魔具自体が式のようなもので、能力を手に入れるとは、その力を代償無しで扱えるようになるっていうことだからな」
説明すると、彼女らはなるほどと納得した。
正確に言えば、それは納得ではなかっただろうけれど。
「それじゃ、今からエルボ山へ向かおうか」
こうして俺は、この三人を無理矢理巻き込む形で、復讐の道を歩き出すのだった。
次回「14」




