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絶滅種族の転生譚《Reincarnation tale》  作者: 記角麒麟
因幡の白兎 いなばのしろうさぎ
129/159

「10」証明問題はご自分で

ピンクな内容が含まれています。ご注意ください。

 この屋敷には、風呂が一つしかない。こんなに大きな屋敷なのだから、2つ用意する事もできるだろうと思ったのだが。


 どうやら、浴場を作るためのスペースが少ないらしい。


 近くに滝があるせいか、排水を大量に、ましてや二種類のルートから流すのは、自然汚染の原因になる、という理由らしい。


 まあたしかに、あの綺麗な滝が汚れるのは、俺としても不満がある。


 そこには賛成しよう。しかしだ。なぜだ。なぜに、混浴という手段を取るのさ?意味がわからないよ。


 俺だってこの体は女だが、心は男だ。立派に男として断と居たいのだ。だから、俺は男より女が好きだ。えぇ、正直に申しますとも。


 第一譚で『俺にとって性別なんてあってないようなものだ』とは言ったが、実を言うと、少々あの頃は嬉しかったさ。


 しかし、だ。


 今はどうだ?


 今は、この現状に慣れきってしまっている。


 そのためか、女性の裸なんて毎日見ているようなものなのだから、今はなんとも思わなくなってしまっているのだ。


 だからといって、男の裸を見るような趣味は断じて無い。


 言い切ろう。大事なことなので二度言おう。


 そんな趣味は絶対にない!


 むしろ、拒絶反応を起こしたいくらいだ。


 なのになぜだ。


「不満そうね、六花ちゃん」


 俺の隣で頭を洗っている白城が、ふと、俺の心境を見抜いたかのように言った。


「当たり前だ。そもそも、なぜ、混浴なんだ?意味が理解しかねんぞ」


「家族みんなで仲良くしましょってのが、小鳥遊たかなしちゃんの発想なんだけどねー」


 ざぱーっと、逆隣で体の泡を流す宮崎。


「小鳥遊って誰?」


「僕に何か用、白兎?」


(お前か!)


 湯船から顔を出して、霧葉が応えた。


「混浴にしようって、霧葉が言ったのか?」


「まさか!」


 彼女は俺の問いかけに、ブンブンと首を横に振った。


「そう解釈したのはなっちゃんと束音だよ!」


「なっちゃん?」


「私のことよ、りっちゃん」


 隣から宮崎がその問いに返事をした。


「何で混浴なんかに?」


「そりゃ、お互い得だからだろうが」


 二つほど離れたところから、桐野がそう言った。


「得?」


「「そう、得」」


 声を揃えて頷く桐野と宮崎。


(得....なのか?)


 今一、得と感じるのは男性側のみと思われるのだが、気のせいだろうか。いやしかし、宮崎をも得だと答えたんだ。女性側にも何か俺の思いもよらない考え方があるんだろう。


 そう考えていると、宮崎は


「だってさ、生物学の勉強として、得になるじゃん。ナマモノを直に見て、さわって、感触を....ぬふふふふふ」


 ダメだ、この人。アブナイ人だ。


 何が直に見てさわってだ。


(こんな人間もいたものかな)


 俺は心底あきれたように、息をついた。その瞬間。


「そういえば、因幡さんは、今日ここに来たばかりなんでしたよね」


「今更ですね、華望さん?!」


 ふと、鏡に映った華望を見て、俺は叫びそうになった。


 こちらに向かって、湯船からおりたって歩み寄る彼。


「では、親睦を深めるため、洗いっこでもしませんか?」


「するかああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 俺の大声が浴場に響き渡った。

























 翌日の朝。


「あー、なんか。悪夢を見ていた気がする」


 俺は布団から起き上がり、眠い目を擦った。


 悪夢の内容は、華望と名乗る変態が、風呂場で洗いっこでもしましょうとか言って、襲いかかってくる夢だ。


「あぁ、嫌な気分だ」


「では、宮崎さんをお呼びしましょうか?」


「いや、遠慮しておくよ」


「そうですか。朝食の準備がもうすぐ整うので、早く降りてきてくださいね」


「うん、了解──じゃねえ。まてコラ。自然と俺の独り言に入ってきて会話すんじゃねえ変態野郎!」


 俺は目を扉の方へ向けた。すると、そこには華望きのうのへんたいやろうが居た。


「あ、わかっちゃいました?」


「わかっちゃいました?じゃねえよ!出てけ!」


 俺はそう彼に怒鳴った。


 昨日に引き続き、俺はとても疲れる一日を送りそうになります。


 などと現状にコメントしつつ、俺は布団から出た。


 なぜか、やけに体がスースーする。


(なぜだ?)


 その理由は、体を見下ろしてから数秒経って、ようやく理解した。


 そういえば、昨日。俺はあのまま浴場を飛び出して、そのまま自分の布団に潜り込んだんだっけ。


 とたん、変な感情が沸いて上がってきた。


『白兎も、ずいぶん変わってると思うよ?むしろ、この中に変人は君くらいのものだよ』


 昨日の夕夏の台詞が、自分自身で肯定してしまった瞬間であった。

次回「11」

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