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絶滅種族の転生譚《Reincarnation tale》  作者: 記角麒麟
王姫と執事 Und der Butler
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「20」扉

 気がつくと、俺は大海原のど真ん中に居た。


「へ?あれ、俺なんでこんなところにいるんだ?」


 辺りを見渡すも、真っ青な海ばかりで、それ以外の情報は何もない。いや、どういう風に流されたかくらいはわかった。おそらく俺は、海流に乗って、南東方向へと流れていったのだろう。なら、この海流から方角を割り出すこともできる。


(ふむ。それにしても、少し肌寒いな)


 俺は方角を割り出すことを後回しにして、まずは大きな陸地を作り出すことにした。


(これ位でいいかな)


 作り出した陸地、というより島は、半径十メートルほどの簡素な島だった。俺は腹の上で寝ているエディスタを島にあげて、自分もその陸地へと足を踏み込む。


 体についた水滴をはたいて、エディスタに服を着せた。自分も体を拭いて服を着ると、海流の向きから方角と時間を割り出す。


 だいたい一時くらいといったところか。時間と気温、そして海流の速度から推定するに、すでにサンアシロの圏外、しかしアシロの近くであることには代わりないか。この星の形と半径から推測するに、西に約六百キロに陸地があると推測。転向力を無視してまっすぐ進んだ場合、クォンツ領とその真南のツェドグン領との境目辺りにきたらまだラッキーな方かな。下手したらチンテの岬辺りまで飛ばされてそうだが...。


 と、そこまで考えて、俺はふとあることに思い至った。


 物質生成と異能生成を組み合わせて、どこで〇ドアみたいなの作れば、もとの場所に帰れそうだな。けど、圏外になりそうだな。空間を繋いで距離をゼロにしてしまおうか。


 俺はそう考えて、2つの扉を作り上げた。


(まずはテストだ。ちゃんと機能していれば、もとの場所に戻れるはず)


 俺が利用した方法。それは、量子もつれを利用した量子テレポーテーションだ。知りたきゃ量子もつれでググっとけ。


 二つの扉の距離は島の端と端。つまり、約20メートルだ。


 まずは、扉の動きの同期確認。......問題なし。二つの扉は同時に開いた。


次はちゃんと量子もつれが起こるかどうかのテスト。俺は片手に石をその扉から投げた。......問題なし。ちゃんとテレポートできている。


 次は異能そのものも転移できるかどうか。俺は『発光し続ける』石を作り出して、扉の向こうへと投げ入れた。すると、投げ入れた石は、扉を潜った瞬間に、その光を失った。実験は失敗に終わった。


(なぜだ?)


 異能という情報は伝わらなかったのか?たしか、素粒子にのっている情報がコピーされて向こうへ出ていくんだよな?投げ入れた瞬間ボトンと石が降下しなかったことを鑑みるに、エネルギーの伝達は可能。しかし、異能は不可能...。


 何がどう違うんだろうか。


 と、そこまで考えて、自分のバカらしさ加減を罵った。


(無理なら無理じゃ無くならせればいいじゃないか!)


 そして、再び実験した。


 実験は成功した。


「おしっ!じゃああとは、片方を向こう側へ作って...。あれ、俺はなぜ、最初からそれをしなかったんだ?自分自身にそれをすればよかったのでは?」


 俺はそう口に出して、はたと気づいた。俺は、最初の実験による、異能を無くすリスクを解消したかったんだ。


 そこまで考えたところで、隣でエディスタが起きる気配がした。


「チホ様?」


「起きたか、エディ」


「んぅ」


 彼女は頷いて、ぶるりと身を震わせた。


「寒い...」


 確かに、少し寒い。彼女に着せていた服は少し薄かっただろうか。俺は彼女に厚めの毛布をかけてやると、俺はエディスタの隣に腰かけた。


 彼女は耳を嬉しそうに、しかし不安そうに垂れて、こちらを見上げた。


「チホ様、ここ、どこ?」


 彼女の不安そうな目が、俺にそう訴えかけている。声には出していないが、何となく伝わった。


「チホ様、ここ、どこ?」


 ついに彼女はそう言った。


「さぁ、どこだろうね」


 予想はできてはいるが、確実ではないので俺はどことは言わなかった。


 現在の時刻は、この島を作り上げた頃から数十分しか経っていない。


 そろそろ帰ろうか。俺はそう思って立ち上がり、先程作った扉の片方をおそらくもといた場所であろう所へと転移させ、扉を開いた。


(命中命中。流れてくる風の温度に向こうの風景からして確実に命中したな)


 俺は再度光る石を投げ入れて、異能が消滅するリスクの有無を確認した。


「エディ、先入ってて。俺も後から行くから」


「うん」


 そして、俺は彼女のあとに続いて、扉を潜った。

次回「21」

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