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絶滅種族の転生譚《Reincarnation tale》  作者: 記角麒麟
王姫と執事 Und der Butler
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「13」晩餐会

「おい!てめぇら!客だ!もてなせ!」


 裏路地街を彼に案内されてついていくと、そこにはおっかないと表現できそうなチンピラ(?)が集まっていた。


「「おう!」」


 さて、どうしたものか。


「...」


 俺は椅子と机を作り出して、腰を掛けた。


 作ったばかりの机が少し冷たくていい臭いがする。


「...なんだ?」


 俺は頬杖をつきながら、こちらを見てくる彼ら彼女らに問いかけた。


 物質生成は、あまり人前で使うべきではなかったかな。


 そう思っていると、彼らはざざっと音を立てて膝まづいた。


「?!」


 いきなりで驚いた。なんの騒ぎだよ?不安になるじゃないか。


「も、申し訳ありません、女王陛下!このような無礼な真似をして、本当に申し訳ありません!」


 ガースはそう言いながら、そのまま頭を地につけた。


(マジか。俺の話どこまで広がってるんだよ)


 正直あきれたわ。


 俺だって、バルスにいた頃はそこの王様お姫様なんて知りはしなかったのに、何でこんな...。


「俺を知っていたのか?」


「はい!陛下のご実績は、全国で義務的に教えられておりますゆえ!」


 俺のことを知る義務とか。


(うわー...要らねぇ...)


 そんなことをする義務があるとは、世も末だな。


 しかし参った。


 どうしようか。


「.........あ、そうだ。ここにいるのは全部か?」


「いえ、ごく一部にございますが。何か問題でしたでしょうか?」


 ごく一部か。ざっと見渡しても数十人、下手したら百人はいそうだが、これでごく一部とは。


「ガース、幹部はここに全員いるか?」


「はい」


「では、前へ」


 ここの幹部全員を掌握して、裏で操ろうか。そうだな。ゲーム的な感覚で動かしてみるか?


 必要に応じて、裏工作もさせて、さらにはフェルンとやらのルートのコウモリを眷属にしたうえ、一族ごと乗っ取って......。


 フフフ。面白いじゃないか。


 俺の前に来たのは三人だ。


「名は?」


「マーリンと申します」


と、男。


「スターリンと申します」


と、道化師風の男。


「カラン・アマイと申します」


と、女。


 こいつらだけか。


 んー...。


 裏で操るなら、俺の存在を周囲に知らせるのはまずそうだな。


「よし。では、ここにいる全員に告げる。この事を他の仲間にも伝えろ」


「「はっ!」」


 さて、まずは。


「俺が今日からここのてっぺんだ!」


 まず、権力の取得。


「しかし、俺がそれだと知られるな!」


そして、事実の隠蔽。


「これより、俺が許可した者物ものもの以外の、国外への流出、及び物品、人員の追加を不可とする!」


さらに、流通の抑制。


「もし、これが破られた場合、全員を死刑に処す!」


最後に、脅迫的誘導。


「わかったか!」


「「仰せのままに!」」


 よし。乗っ取り完了だな。


 さて、次はこいつらの監視だな。何がいいか。


 アイテムだとばれるし、かといって刻印もアウトだ。


 そうだな...。


 そういえば、吸血鬼たちは、こういうときに血の石を使ってたっけ。


 その石に血を吸わせて、その人の動向を監視する。


(これだな)


 しかし、これだけ全員の分をやるのもな。キャパが多分足りないだろう。


 こんなだからコウモリの個体数は少ないし、いつまでたっても無属が増えるんだよ。


 じゃあ、この四人だけに絞るか。


 俺は、赤く脈打つ拳大の石、血の石を作り出して、そこに俺の血を一滴垂らした。


「陛下?!」


 ガースが驚いて、叫ぶ。


 しかし無視だ。


 いちいち構っていては、それこそキャパシティオーバーになる。


「ガース、マーリン、スターリン、カラン。これに血を一滴垂らせ」


 そして、彼らは俺と同じようにそれに血を垂らした。


 この血の石は、ヴァンパイアたちのもつ血の石とは違う。


 こいつは、俺の悪魔召喚の能力を使って召喚したものだ。


 悪魔召喚と従者召喚の違いは、それが人形であるか否かというささいなものだが。


 とにもかくにも、これでこいつらを俺の従者に仕立てあげることができたわけだ。


 一方通行的という制限は設けたが、これでパーソナルイデアを使えばこいつらの同行をいつでも知ることができる。


「これで、よろしいでしょうか。陛下」


「そんな堅苦しくするな。お嬢ちゃんでいい」


 そんなに固くしていたら、気づかれるだろうが。


「愚か者」


 俺はそう言って、紅茶を作り出して飲んだ。


 喋ってたら喉が渇く。


 俺は喉を潤すと、ふぅ、と一息ついた。


(さて、この血の石はどうしようか)


 異次元生成の物真似でもして、異空間にでも収納しておくか。


 俺は血の石を空間の裂け目のようなものを作り出して、そこに収納した。


「さてと。どうするかな」


 裏工作要員を作り出すには、やっぱりチームに分けた方がいいよな。


「あの、お嬢ちゃん?これから俺たちゃ、どうすりゃ良いのかい?」


 ガースは困った風に俺に聞く。


「ん?あぁ、そういうことか。そうだな、まずは...」


 まずは、何が必要だろうか。


 政治に疎い俺には、何をしてもらうかは全くわからん。


 なら、政治以外のことをやらせればいい。


 そうだな...。としたら、まずは...。 


「マーリン、スターリン、カラン。お前ら三人は、れぞれでチームを作れ。マーリンのグループは裏路地街での治安の維持を頼む」


 治安の維持ってのは大切だ。


 治安が悪ければ、反発してくる奴も出てくるからな。そういう都合の悪いやつらを排除する上で、結構重要な役割を持つだろう。


「スターリンのグループは、俺からの依頼を専属的に受け持つ役割を頼む」


 こういうのは汎用性が高くて助かるしな。


「カランのグループは、二チーム間の監視を頼む」


 これで、国内の抗争をさらに押さえられるだろう。


「わかったな?」

















 翌日。


「今日のスケジュールは、いつもと同じですが、晩から、ネロ王国国王との晩餐会が予定されております」


 メアリーが朝食後に、俺の今日のスケジュールを発表した。


「晩餐会?」


「チホちゃん、それ私も参加するよ!」


 朝食の席で、ヒツギがそう言った。


「ヒツギも?...あぁ、タケルが政権代理人とやらで、お前はその付き添いだろ?」


「まぁ、そうなんだけどね」


 えへへ、と笑う彼女。


「お前が行く必要はないっつったろ」


 タケルはトーストをかじりながらそう言った。


「また、騒ぎでも起こされたら敵わんしな」


「ちょっとおにぃちゃん!それどういう意味?!」


(騒ぎ?)


「なあタケル。騒ぎってなんだ?」


「あぁ。こいつ、かわいいから、よくどっかの貴族公爵に連れていかれそうになるんだよ。もうそんなのめんどくさいから行くなっつってるんだが...」


 彼はため息をついた。


「かわいすぎるのも罪、よね!」


 それとは裏腹に、彼女は元気そうだ。


「なるほど、そうか。それなら心配しなくてもいい。俺が何とかしてやる」


 スターリンのグルを使えば、まぁ、なんとかなるだろう。報酬は、そうだな。異能をひとつ、ランダムでプレゼントってのはどうだ?


「うわっ!ほんと?!チホちゃんありがとー!やったー!」


 こいつ、メアリーとは真逆だな。


「まてヒツギ!そんな、チホに失礼だろ!?一応人界の王なんだぞ?!」


「えー?おにぃちゃん固いよぉ。チホちゃんだって、そういうの嫌なんだよね?ねっ?!」


「お、おう...」


 身を乗り出すヒツギに、若干気圧された俺は、そう答えるより他は思い付かなかった。


 なんせ、事実だし。


「す、すまんな。こんなこと頼んじゃって」


 タケルは頭を下げた。


「位や、構わんよ。ちょっと遊びたい気もあったし」


 俺は首を横に振った。


 早速動かせるんだ。少し楽しみでしかたがない。


「陛下、お時間です」


「む、もうそんな時間か。それでは、またな、タケル。ヒツギ」


 そうして、彼らは屋敷を後にした。

ネロ王国


約200年前、アシロ帝国が、鎖国中のツイド帝国を無理やり開国させて、戦争により吸収したことで出来上がった国。この事により、国の領域面積が四国連合を凌駕、現在領域面積ランキング一位となっている。


次回「14」

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