表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絶滅種族の転生譚《Reincarnation tale》  作者: 記角麒麟
王姫と執事 Und der Butler
102/159

「12」暇潰し

 暇だ。


(何か暇潰しになるものはないだろうか)


 ある日、俺はそんなことを考えていた。


 仕事は面倒くさいので分身に任せてこちらに来たものの、なにもすることがない。


「んー...。あ、そうだ」


 俺はそう言うなり、巨大な黒い鳥の幻想生物、その中でも最もレアなディンゼルに変身して、屋敷を飛び出した。


 服は部屋に置いてきた。


 だって作れば問題ないしな。うん。


 ディンゼルは、黒翼の天使の異名を持つ大きな黒い鳥で、別名、砂漠烏さばくがらすとも呼ばれている。


 こいつの爪は、固い岩盤を砕くほど鋭いと言われているが、実際のところは、触れたもののあらゆるものを腐食させるというだけである。


 したがって、ディンゼルの爪は非常に高価で、保存も難しいレアアイテムなのだ。


 因みに、一般的にはワンワンという鳴き声を発するが、年寄りになってくると、モーモーという鳴き声に変わるらしい。


 そのためか、メリゴ辺りやバルス東部では、狗烏いぬがらすとも呼ばれている。


 俺は地上の路地裏に降りると、もとの姿に戻って、黒を基調とした服を着た。


(そういえば、最近はこういうところが増えた気がする)


 建造物の増量が、こういった路地裏を作り出し、さらには、そういうところに不良街っぽいのが出来上がる。


「よぉ、そこの嬢ちゃん!俺たちと少し遊ばないかい?」


 染めているような金髪の、背の高い男が、俺を見上げて話しかける。


「誰?」


 いきなり、俺みたいな幼女幼女した少女に、遊ぼうと誘いかけるこの金髪野郎。


 きっと、危ない人に違いない。


「そう警戒するなよ?」


 警戒するなという方が無理があると思うのは、果たして俺だけだろうか?


「俺はここ一帯を仕切っているガースってもんだ。ここいらじゃ見ない顔だから、ちょいと挨拶だよ」


 こいつの言う挨拶とは、暴力と考えておこうか?


 明らかな不良コーデだし。


「なら、挨拶はちゃんと返さないとな」


 俺はそう言って、座っていた換気扇の屋根から飛び降りた。


 因みに、それは地上三階の高さだ。


 ガースと名乗る金髪不良青年(仮)は、驚いた様子でこちらを見やる。


「デバイス無しであの高さから飛び降りたのか?!」


「そうだが、問題あるか?」


 簡単だ。


 降りる途中途中で、位置エネルギーから運動エネルギーへ変換される所に区切りをつけることで、このくらいの高さからならば、降りてもなんの怪我はない。


 発動条件としては、近くに壁などの物体が存在することくらいだろうか。


「どうする?始める?」


 俺は殺気を放ちながら、彼に歩み寄った。


 ガースは後ずさりをした。


「いや、やめておこう」


 なんだ、つまらないな。


(まぁ、やりあったところで勝敗は見えているが)


「俺のことはお嬢ちゃんでかまわない」


 ここで本名を明かしてしまえば、おそらくは俺の株が下がる。下がったところで何とはならんとは思うが、一応な。


「わかった。お嬢ちゃん。俺は君を歓迎するよ」

四国連合の裏路地街


四国連合は、今やネロ王国を越える大都市であるが、反面、住宅や、背の高い建物などの隙間に、広い土地特有の治外法圏が存在している。

裏路地街には、区間ごとにリーダーがおり、それらが管轄する場所を、彼らは国と呼んでいる。


次回「13」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ