第9話 レオンの実力 〜ランクAモンスターの脅威〜
「ギャアァアアアアァァァ!!」
「っ!あれは!?ウォルター、何なんだあいつは!?」
「あ、あれは……アイスバードの王、キングアイスバードです!」
まずい事になりました……
キングアイスバード、その名の通り……そしてウォルターの言う通り、アイスバードの王であり、そのランクは……A、です。
今の私では、苦戦するだろうと思われる相手です。
ですが……今、レオン達に私の本当の姿を見せるわけには……
……仕方ありません。この姿で出来る限りのことをするしかありませんね。覚悟を決めましょう!
━━ 貴様らか……貴様らが、妾の仲間達を……!
━━ 殺してやる……殺してやる……!!
「ギャアァアアアアアアアアアアァァァァ!!」
「っ!く、来るぞぉ!!ウル!!」
「グルルルルゥ!!」
ウル達の攻撃によって怒り狂ったキングアイスバードは自らの全力の『アイスアロー』を放つ。数は50。絶対に防ぎきる事など出来ない、と誰もが思った……が、レオンだけは違った。ウルなら必ず防いでくれる、という確信めいた強い何かを感じていた。
そしてウルはそれに応えるように、キングアイスバードの渾身の一撃を……見事、結界で防ぎきった。
ぐっ!はぁはぁ、なんという力なのでしょう……
危うく私の結界が破られるところでした……
このままでは……
「ウル!!大丈夫か!?」
「グルゥ……グルルルルゥ!」
大丈夫!まだいけます!
「よしっ!ウォルターは魔法でウルを援護しろ!俺達は奴等を引きつけるぞ!絶対にウル達に近付けるな!」
「わかった!」
「わかりました!」
「……了解」
レオンが戦況を正確に見極め的確な指示を出す、それに従い全員が見事なまでの動きで徐々に戦況を動かしていく。
これこそがレオンの実力であり、才能であった。
その才能はまだ、実ったばかり。
この大きな蕾を見つけたウルは必ずそれを開花させてみせると誓う事になるが、それはまた別の話。
戦況が、変わった……?
レオンの的確な判断と正確な指示……そのおかげで、戦況が一変しました。何でしょう?この感覚は……レオンから、何かを感じる……
この感覚は、いったい……
「ギャアァアアアァ……!」
戦況が一変する。先程までとは違い、ウル達がキングアイスバード達を押していく。そして押されているキングアイスバード達は徐々に焦りを見せ始める。
━━何故だ……何故妾の攻撃が効かぬ……!おのれぇ……人間……!
戦況が一変し少しづつ攻撃を加え続けた為に、キングアイスバードは徐々にその体力を減らしていった。
はぁはぁ、あと、もう少し……!この一撃に全ての力を……!!
焦り始めたキングアイスバードに徐々に隙が出来始める。
っ!ここだ!!
ウルはキングアイスバードに出来た小さな隙を見逃さず、残りの魔力を全て魔法に込める。放つ魔法はウルの一番得意な魔法であり、アイスバードの苦手とする魔法『狐火』だ。
ウルの魔力をふんだんに注ぎ込んだ『狐火』はどんどん巨大化していき、その大きさは既に直径1mに達していた。
「っ!ウル!?」
「グ、グルル……」
これで、終わりです!!
ウルは最後の力を振り絞り『狐火』を放った。
「グルルルゥ!!」
「ギャアァアアアアアアアァァァ!!」
ウルが放った『狐火』は弱ったキングアイスバードには避けきる事が出来ずに直撃し、まるで断末魔ような叫び声をあげ、地へと落ちていった。
そして全ての力を使いきったウルはキングアイスバードの叫び声を聞きながら、ゆっくりと意識を手放した。