第6話 伝説の金狐
「……しょ、勝者レオンチーム!!」
「きゅん!」
ああ楽しかった!流石に全力は出せませんが、たまにはちゃんと運動しないと体が鈍ってしまいますから、良い機会でした!なんかとってもすっきりしました♪
「……う、嘘だろ……なぁ……俺達負けたのか?ツヴァイテイルに……?」
「負けた……」
「よお、どうだ?強いだろ、俺のパートナー!ていうか、なんで勝者に俺の名前が無いんだよ!?」
「あぁ、つえぇよ。かなり……。お前なんかした?ウルが主戦力でサポート位しかしてなかっただろ!つーか、俺等実質ウルに蹂躙されたのかよ!?異常な強さだろ!マジモンの希少種かよ!」
あれ?何故かレオン達がまた言い争いしてるみたいです。どうしたのでしょうか?私は、
「きゅん?」
と言って首を傾げます。すると、
「ぐはぁっ!!」
またまたアイザックが鼻血を出して倒れていました。だ、大丈夫ですか?
「そもそもウルは本当にツヴァイテイルなのか?」
「きゅん?」
「どう考えたってこいつはツヴァイテイル以上の……いや、ランクB以上の力を持ってる。そんな奴が例えツヴァイテイルの希少種だって言っても信じられねぇ」
どうやらグレンは、私がツヴァイテイルでは無いのではないかと疑っているようです。まぁ、当たっているんですけどね。
私は今、ツヴァイテイルに変身して普段よりも力が抑えられている状態です。ですがそれは唯単に力が"普段より"も抑えられている状態であって、"ツヴァイテイルの強さになった"訳ではありません。あれでも力を抑えたつもりだったんですが……というか、普通のツヴァイテイルの強さが分からないんですよね私。だって森の魔物達は私を目にした瞬間、皆脱兎の如く速さで逃げて行くんですもん。
そんな事を考えている間にも、どんどん話が進んでいきます。
「まぁ確かにこの力と言い、金色の毛並みと言い……ん?金色……金狐……?」
あれ?な、なんか……ウォルターが、答えを導き出してしまったみたいですね。
そう、私は金狐と呼ばれる伝説上の獣なんです。この世界で目覚めた時、何故か私はこの知識だけ当たり前の様に知っていました。まるで、何者かに"仕組まれた"かの様に。
これはウルがこの世界に生まれるずっと前の話。
昔々、とある森に金色の毛と九本の尻尾を持つ狐がおりました。
森の主であるその狐は強い力を持ち、森に住む獣達や人間からもその存在を恐れられていました。
ですがある日、その森のすぐ近くにある街に向けて敵国が攻めてきたのです。
何も知らない彼等はその街を、その森を、その国を力だけで支配しようとしました。
それがその森で静かに暮らす事が好きであった彼女の逆鱗に触れる行為だと知らずに……
総勢15万人以上の軍隊が押し寄せその軍隊により少ない大切な友を傷付けられた彼女は怒り狂い、たった一匹だけでその軍隊を壊滅させてしまいました。
そしてその戦場となった森は、彼女が放出した大量の魔力の為に魔獣で溢れかえり、後に『魔の森』と呼ばれるようになったのです。
更にその戦闘……否、その蹂躙を見た街の者達は彼女を恐れ、敬い彼女をこう呼ぶようになりました。
『怒りの神ステファノの化身』と。