第5話 ウルの実力
「お前なぁ……なんでいつもいきなりなんだよ!」
「別に良いだろ?お前等今日はフリーじゃん?」
「そういう問題じゃなくて……」
「もう良いですよグレン。レオンはこういう人です。諦めましょう」
「ってことで、付き合ってくれるよな!」
「「はぁ……」」
「きゅん……」
こうして、この広い訓練場に溜息が響くのでした。
「よしっ!それじゃあ早速始めるぞ!まずは俺とウル対グレンとアイザックで、ウォルターが審判な!」
「それはどう言った理屈で?」
「なんとなくだ!」
「あー……聞いた俺がバカだったよ」
「まぁまぁ、まずは始めましょうよ」
「そうそう。ウル、準備は良いか?」
「きゅ、きゅん!」
い、いきなりですか。まぁ、仕方ないですね。雰囲気的に私にはやる以外の選択肢がありそうに無いですし。それにこれからレオンと一緒に戦うんですもん!今のうちに練習ですね!
それから私達は、十分に距離をとりました。
私以外の三人は、全員刃の潰れた剣を持っています。
そう言えばさっきまで聞こえていた周りの人達の喧騒がないような…。ううん、今は集中しなくちゃ!
「それじゃあいきますよ?……始め!」
ウォルターの掛け声でウルは軽く地面を蹴り、素早くアイザックへ間を詰める。その唐突のウルの行動に驚いて二人が固まったその瞬間、寸で地面を蹴る事で身を翻しグレンへと勢い良く体当たりした。
グレンは咄嗟に剣を盾にウルを受け止めるが、ウルの力を甘く見ていた為か想像以上の力に少したじろいだ。
その間に状況を理解したアイザックはグレンへの追撃を避ける為すかさず地面を蹴りウルへ距離を詰めるが、それを確認したウルはひらりと躱して距離をとる。宙をくるりと舞うウルと入れ替わる様に後方から剣が槍のように放たれ、それを瞬時に縦に構えた剣でレオンが流す。
予想していたのかレオンは態勢を崩すことなく即座に戦線離脱、すれ違いざまにウルが『アイスアロー』を放った。放たれたのは五本の氷の矢。それをグレン達は後方に跳躍する事で三本を回避、二本を剣で弾いた。
ウルは続けて直径50㎝程の『狐火』を放つとアイザックはなんと目の前にまで迫ったそれを魔力を纏わせた剣で上から真っ二つに斬り捨てた。
流石のウルも目の前の光景に驚き、ぽかーんとだらしなく口を開けている。
「ウル!!」
レオンに名を呼ばれたウルはハッとなり、剣を振り切ってすぐに動けないアイザック……ではなく、そのカバーをしようとしたグレンへ向けて再度『狐火』を放つ。今度は小さめで速度重視な『狐火』だ。
レオンが転がる様にしてそれを回避すると、『狐火』の後ろに隠れて近付いて来たウルに追撃され、体当たりの衝撃によって態勢を崩し勢い良く尻もちを付いた。
その次の瞬間には、首筋にウルの鋭い牙が突き付けられたのだった。
アイザックの方を見れば、そちらも同様にレオンに剣を突き付けられていた。
「……しょ、勝者レオンチーム!!」