第4話 雷獣の牙
私達は朝食を取り終わり、早速冒険者ギルドへと来ています。冒険者ギルドはとても大きな建物で、周りの建物の中で一際目立っています。
レオンが扉を開けてギルドの中に入って行きます。ちなみに私はレオンに抱かれているのでいつもより視線が高くなってちょっと新鮮です。
中に入ると手前に受付があって、そのすぐ隣に酒場が、更にその奥には紙で埋め尽くされているボードがあります。そのボードの周りにはたくさんの人で溢れています。あれは依頼の紙でしょうか?
レオンがやっぱり朝は人が多いなー、とか言っていたのでこの時間帯はいつもそうなのでしょうか?私には馴染みのない光景なので不思議です。
そんな事を考えている内に、レオンは人混みをかき分けて進んでいき、ギルドの奥にある一つの扉に手を掛けました。そしてその扉を開けると東京ドーム一つ分位の広さの訓練場のような所があり、周りを見渡すとぽつぽつと剣を交わらせたりしている人達がいます。どうしてこんな所に来たのでしょうか?
「ええっと……あ、いたいた。おーい、グレーン!」
「きゅん?」
グレン?グレンとは一体誰の事でしょう?すると、
「うん?……あぁ!レオンか!」
レオンは声のした方に走って行きます。何だろう?と思ってレオンが向かっている方に視線を向けると三人の男の人達がベンチで汗を拭いたりして休憩しているようでした。
左から赤髪で少し整った顔立ちの人、緑髪でちょっと強面なお顔の人、それから茶髪で細身の人です。赤、青、緑、茶色……なんかとてもカラフルですね、流石異世界?
「よぉレオン、何か用…なんだそいつ?……ツヴァイテイル、か?」
と、赤髪の青年が難しい顔をしてレオンに尋ねてきます。
「ああ、俺の新しいパートナーだ。こいつをお前等に紹介しようと思ってな。名前はウルっていうんだ。ウル、こっちの赤髪のバカがグレン、緑髪で強面なのがアイザック、んで茶髪でもやしみたいな奴がウォルター。この三人で『雷獣の牙』って言うパーティを組んでるんだ」
「誰がバカだ、誰が。ゴホン、俺はグレンだ、よろしくなウル!」
「ぼ、僕はウォルターです。よろしく、ウルちゃん」
「きゅん!」
グレンとウォルターが挨拶してくれたので私も挨拶しましたが、ウォルターはどうして私が女の子だと分かったのでしょうか?今会ったばかりなのに、不思議です。
それより、アイザックがずっと俯いて何かぼそぼそと言っているみたいなのですが、一体どうしたのでしょうか?むむ、私のこの発達した耳でも聞きとれないなんて、無念です。
本当にどうしたのか気になって、アイザックの方を向いて、きゅん?と言いながら首を傾げるとアイザックが一瞬だけこっちを向いた後、ぐはぁっ!!と言って鼻血を出しながら倒れてしまいました。……まさかアイザックって、見かけによらずかわいいのが好きだったりしませんよね……?ちょっと面白い発見をしてしまいました。
ちらっとレオン達の方を見ると、グレンが「ああまたか……」とか言っているのを聞いてしまいました……
「それよりさ、ウルってツヴァイテイルなんだよな?」
「ん?見れば分かるだろ?」
「いや、確かに尻尾は二本なんだけどさ、普通のツヴァイテイルって毛が茶色とかだろ?それなのにウルは綺麗な金色じゃん」
「僕もグレンと同じ事を考えていました。もしかしたらウルちゃんは亜種か希少種かもって……」
「あ、そういえば……」
「って、気付かなかったんかい!どっちがバカだよ、どっちが!」
なんだか言い争いみたいになってきてしまいました。
そうなんです。グレンの言う通り、普通のツヴァイテイルは毛の色がくすんだ茶色なんです。対して私は金色。実は私化けるのが余り得意ではなくて、毛色まではどうやっても変えられなかったのです…やっぱり変ですかね…?
こんな感じで一人で落ち込んでいるとそれが伝わってしまったのか、レオン達の間が変な空気になってしまいました。なんかごめんなさいぃ……
「ほ、ほら!二人がそんな風に喧嘩してるから、ウルちゃんが元気なくなっちゃったじゃないですか!」
「うっ、わ、悪い!ウル!」
「ごめんなぁウル!」
ううっ、なんか二人が悪いみたいになってしまいました。本当は失敗してしまった私が悪いのに……ごめんなさいぃ……
まぁでも、二人が仲直り出来たなら良かったです。終わってしまったことは仕方ありませんし、いつまでもめそめそしているなんて私には合いませんしね。という事で、気持ちを切り替えます!
ふんす!と元気を取り戻した耳と尻尾を見て安心したのか皆もほっとした表情になってました。
「よしっ!ウルも元気になった事だし、早速始めたいんだが良いか?」
「きゅん?」
「は?始めるって何を?」
「何を?って、ウルの力がどの位なのか知る為に模擬戦するんだよ!」
「「はぁ!?」「はい!?」「きゅん!?」」