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第13話 ツヴァイテイルとは

皆様お久し振りで御座います朧月です

(๑^ ^๑)

実に1ヶ月以上あけての投稿となり、申し訳御座いませんm(_ _)m

そして同時に、登場人物紹介も投稿させて頂きました!

出来るだけ間をあけないように投稿していこうと思っています

ですからこれからもどうぞよろしくお願いします(*・ω・)*_ _ )

 医務室は静まり返っていた。

 それはそうだろう、回復したばかりのウルがいきなり魔力を練り始めたと思ったら、煙と共に獣人の姿をした少女が現れたのだから。


「「「「………………………………………」」」」


 全員がアイザックのようになってしまったのも、言わずもがな。

 それからどれ程の時間が経っただろうか。長過ぎる沈黙に耐えられなくなったウルが初めての体で、初めての言葉を発する。


「……み、皆?大丈夫……?」


 鈴の音のような美しい声が小さく部屋に響く。

 それは初めて発した言葉だと言われても信じ難い、とても流暢な言葉だった。

 そしてその言葉でレオン達は我に返る。


「……はっ!も、もしかして……ウル、なのか……?」


「うん、そうだよ!」


「ほ、本当にウルちゃんなんですか……?」


「だ~か~ら~私はウルだってば!」


「……俺は夢でも見てるのか……?」


「夢じゃなーい!」


「………………………………………………………………ぐはぁっ!」


「「「えっ!」」」


 遂にアイザックが耐えられなくなり、盛大に鼻血を出しながら倒れた。

 ………( ̄∇ ̄;)


 やっと落着いたのはそれから数十分後の事だった。


「ウル、体調はどうだ?もう大丈夫なのか?」


「うん、もう大丈夫だよ!」


 心配そうなレオンの問いにウルが元気良く返事をする。


「そうですか。良かったですね、レオン」


「な〜んだ、騒ぐ程の事じゃ無かったんじゃないか」


「お、俺は唯、ウルが心配だっただけで……」


「ん?騒ぐって?」


 グレン達はウルが倒れた後の事を言っているのだが、倒れた本人がその事を知る故は当然無い。


「レオンの奴がさ、ウルが死ぬかもしれない!って勘違いしてかなりパニクってて大変だったんだよ」


「そうなんだ……皆、心配かけてごめんなさい……」


 グレンの言葉を聞いたウルは、全て自分の責任だと落ち込んでいるようだ。そんなウルにレオンは、


「いや、ウルが謝る事は無いよ。本当はあの時、俺が止めなきゃいけなかったんだ」


「でもあれは、私の勝手な行動だから……」


 するとそこにこんこんというノック音がする。

 そして、入るぞーと言って医務室に入って来たのはギルドマスターであるシヴァン=ギースだった。


「あ、マスター。おはよう御座います」


「あぁ、おはよう。ウルのようすは……」


どうだ?そう聞こうとしたシヴァンは思わず途中で言葉を呑み込んだ。ウルが横になっていた筈のそのベッドに見知らぬ獣人の少女がいたからだ。


 この世界に獣人は普通に存在する。昔は人間が獣人のその姿を見て呪われた種族だと言い、互いに種族間争いをしていたようだが、現在ではそのような事はない。むしろ友好関係を保っている。

 人間の街に獣人が、獣人の街に人間が住む事だって今となっては疑問に思う者は少ない。それは少ないだけであって、いないわけではないのだが。この事から分かるように、この部屋に誰か見知らぬ獣人がいたとしても不思議ではないのだ。

 もしかしたらウルが目覚め、ベッドを降りたからいないのかもしれない。

 もしかしたら何かの理由で獣人の少女が運ばれて来たのかもしれない。

 そう考える事も出来るからだ。


 だが、この事だけでギルドマスターであるシヴァン=ギースが思考を止める筈が無い。

 シヴァンが思考を止める事となった理由は他にある。それは単純な事だった。


 シヴァンはその獣人の少女……つまりウルに見惚れてしまっていたのだ。


 まだ幼さが残りながらも整った顔立ち、窓から溢れる光を受けてきらきらと輝く金色の髪と耳、そしてシルクのような毛並みの二本の尻尾。


 ……ん?二本の尻尾?


「……し、シヴァン?」


「……はっ!あ、いや、こいつは……獣人、か……?」


「あ、あの……何て言うか、こいつは……その」


「こいつはウルなんだよ」


「…………はぁ?」


「ウルちゃんが人化したんです」


「……………………はぁ?」


 シヴァンは人化と聞き、あり得ないと言ったように二度も間抜けな声を出してしまった。


「いやいや、あり得ないだろ。そんな事ツヴァイテイルに出来る訳が無い」


「でも、ウルちゃんはツヴァイテイルですよね?」


「……見た目は、そうなんだよなぁ」


 シヴァンは困惑気味に言う。

 そう、シヴァンの言うように普通のツヴァイテイルであれば人化する事など不可能だ。新種だとしたら少しは可能性があるかもしれないが。


 ツヴァイテイルとは狐の魔獣であり、通常ならその毛は銀色だ。

 そしてツヴァイテイルの種族は長い年月を生きると二又だった尻尾が3つに別れ、上位の魔獣として判断される。だがその中でも人化出来る者はとても少ない。

 それなのにツヴァイテイルが人化するなんてあり得ない、シヴァンのその考えは決して間違ってはいないだろう。


「ん?それ、どう言う事だ?」


「強い力を持つ魔獣の中には、化けたり幻影を見せたりして正体を隠す奴がいるんだよ」


「…………それじゃあマスターは、ウルちゃんが僕達を騙していると言いたいんですか?」


 ウォルターが顔色を変えずにシヴァンに問う。

 が、ウォルターを良く知っている者がその顔を注意深く見れば、ほんの少しだけ怒りが混ざっている事が分かっただろう。

 そしてこの部屋にいるのは、ウォルターを良く知っている者達だ。


「別に、そう言いたいわけじゃない」


「それじゃあ何だって言いたいんですか」


「それは……」


 その時、ひゅんっという音と共にシヴァンとウォルターの間に長剣が現れた。

 アイザック愛用の、柄の付け根から切っ先に駆けて一本の青いラインが入っている美しい長剣だ。


「二人共、ウルの前で……恥ずかしく、無い?」


「で、でも!」


「………………」


 アイザックの言葉を聞いても引き下がらないウォルターに、アイザックは鋭い視線を向ける。


「ウォルの言いたい事、分かる。でも、マスターが言いたい事も、分かる。マスター……そう言う奴も、いるって言いたい」


「そ、そうそう。マスターはそう言う奴がいるから気を付けろって言ってるだけで、別にウルが騙してるって言ってる訳じゃ無いだろ?」


「…………分かってますよ」




            せい

 ……………………私の所為、なんでしょうか


 そう思うと悲しみが込み上げ次第に視界が霞んでいく。

 そして気付いた時には、ウルは涙を流していた。


「「「っ!?」」」


「ウ、ウル……?どうした……?」


「……分からないけど、とっても悲しくなって……涙が、止まらなくて……」


 ウルは悲しみに顔を歪め、消え入りそうな小さな声が部屋に響く。

 すると、ウォルターが意を決したような顔をしてウルの前に立つ。

 そしてウルの目の高さにあわせて屈み、優しく微笑んで、ウルの頭にぽんっと手を置いた。


「ウルちゃん、僕はウルちゃんの事を信じてるし、ウルちゃんの事が大好きだよ。だから泣かないで、ね?」


「で、でも…………私、は……」


 ウォルターの言葉を聞いたウルは、自分が嘘をついている事を……皆を騙している事をよくわかっているが故にどう答えれば良いのかわからず、何かを言おうとして、言い淀んだ。

 そんなウルの気持ちを汲み取ったのか、ウォルターが言葉を紡いでいく。


「例えウルちゃんが嘘をついていたとしても、僕達はウルちゃんに騙されたなんて思いませんよ。嘘をつくなんて誰でもありますし、誰かの為に嘘をつく事だって、ありますからね」


「そうそう、俺達だって嘘をつく時あるからな」


「ん……皆、嘘つき」


「あ、アイザック、さん…?」


「お、おいおい……」


「ふふっ」


 アイザックのどストレートな言葉によって、ある者は笑いだし、ある者は心にぐさっときたようだ。



「やっと笑ってくれましたね」


 そういってウォルターは悪戯っぽく微笑んだ。

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