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触れていたい、この想いに言葉はもう要らないから

side:千星

1週間後。


先週は我が家で、今週は五十鈴の家でお泊り。


出迎えてくれたのは…。



「な、何で!白澤が五十鈴の家に居る訳?」



心弾む気持ちが五十鈴の家の玄関先で、あっという間に冷めていく。



「まぁ、そう言わずに入れよ」

「千星ちゃん!いらっしゃい!どうぞ、入って」



白澤の後ろから、ぴょこんっと顔だけ出してくる五十鈴。



「う、うん。――お邪魔します」



じとっと私より少しばかり背の高い男を横睨みしながら、通り過ぎる。



「あら、いらっしゃい、千星ちゃん。この前は五十鈴がお邪魔してしまって…。ゆっくりしていってね」



と、キッチンから五十鈴のおばさんがやって来る。



「こちらこそ、一晩、宜しくお願いします」



と答えると、おばさんは指示を出す。


五十鈴に私のバッグを部屋へ持って上がるように。白澤にはリビングを少し片付けるように、と。


あまりに自然で当たり前の様に動く二人を少し呆然とその場に立ったまま見てしまう。



「さぁ、千星ちゃん。取り合えず、お茶にしましょうね」



おばさんはにっこり笑って、席を勧めてくれた。










その日の夕方。


晩ご飯の準備も始まり手伝おうにも私の入り込む隙など無いぐらい、おばさんを中心に五十鈴と白澤は慣れた感じで手伝っている。



「いいのよ、千星ちゃん!今日はお客さまなんだからね」



と、おばさんが言うと



「千星ちゃんはテレビでも観てて~」



と、五十鈴が言う。そして、白澤までもが――。



「はい、これ」



と、言ってテレビのリモコンをポンっと手渡してくれる。


まさに、至れり尽くせり…。


――ちょ、ちょっと、待って!始めに戻ろう!



「し、白澤!おまえ、何で五十鈴の家に居るの?」

「ん?」



晩ご飯の後、五十鈴がお風呂に入ってこの場に居ないのを良い事に、と言うより二人で居る事への気まずさを何とかしたいが為に問い質す。



「いつまで居るつもりなんだ?第一、親は?」

「は?親?父親は海外赴任中、母親は…」

「母親は…?」

「あれは、自由人だから」

「え?」

「つまり、誰も居ないって事」

「?!」



自由人って、何?り、理解出来ないけど、誰も居ないからここに入り浸っている事は理解出来た。



「あ~~!!透と千星ちゃん、やっぱり、仲良くなってる~~!!」



ピンクに水玉模様のパジャマ姿で五十鈴が、にんまりした顔で笑っている。


そんな事、有る訳無いじゃない!!と心の中で叫び声を上げる。それよりも先に――。



「い、五十鈴!ちゃんと髪を拭かないと風邪引くよっ!」



と、五十鈴の手からタオルを取って、優しく吹いてあげる。


五十鈴は「エヘヘ」と笑いながら、されるがままになっている。



「ところで、千星ちゃん。透と家族になれた?」

「え?」

「なりたいんでしょう?家族に」

「も、もう一度、言って…」

「透と、家族になりたいって、この前、つかさちゃんが――」

「ひっ!!!」



私は小さな悲鳴を上げるのは精一杯で、それ以上言葉が出て来ない。



(つ、つかさ~~!憶えておきなさいよーっ!!!)



白澤の目が笑っている。


何?何よ?あの勝ち誇ったような目はっ!!



「じゃあ、俺、帰るわ」

「うん、また、明日ね」



白澤と五十鈴が二人揃って玄関先まで行くのを少しは離れた所から見る。



ちゅ!!



「あ!ああああ、あんた達ーーーっ!!何、やってるのよーーっ!!」


「い、五十鈴!!おまえが何とかしろ!後は頼む!!」



白澤はそれだけ言い、そそくさと匂坂家の玄関を出て行く。



「へ?と、透!待ってよ~!千星ちゃん!!お願い!!落ち着いて~~~!!!」

「五十鈴!あんたも、何やってるのよ!!あんなヤツとーーっ!!」

「うわぁ~~ん、千星ちゃん、見なかった事にして~~!つい、習慣で~~っ!!!」



しゅ、習慣だとーーっ!!!!


何が仲良くだ!何が家族だ!!


この私と白澤が――有り得ない!有ってたまるかー!!



「白澤のヤツ!絶対、ぶっ飛ばしてやる~~っ!!!」



と言いながらも、その夜、懇々と謝り続ける五十鈴に、結局、許してしまう私が居た……。


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