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分け合える喜びをあなたにも

side:五十鈴

3月14日。


今日はホワイトデー。


朝から千星ちゃんがマシュマロを。


つかさちゃんは手作りクッキーを。


光星くんは大きなビンにキャンディを。


どれから食べようか、迷ってしまう~!


どれも気持ちのいっぱい詰まった贈り物。


そして、透はなんと!苺大福をくれると言う。



(い、苺大福ぅ~~~♪)



こんな事で幸せを感じてしまう、わたしって単純?









家に帰ると、母が居て、そして羽澄さんも居て…。



「おかえり、五十鈴、透くん」

「おっかえり~~!!」



相変わらず仲の良い母親達。



「ただいま~」

「ただいま」



今日はリビングでお茶をしながら世間話をしている。


そして、お茶菓子には…――あ!



「は、羽澄っ!隠しておいた苺大福!!見つけたな!!」

「まだまだ、甘いわね!透!あんたの隠しそうな所って分かり易くって、つまんな~い♪」



羽澄さんがニヤって笑っている。


透は絶句している。


きっと透の事だから誰にも検討も付かない所の隠したんだと思う。


さらにその上をいく羽澄さん……。


そして、1個だけポツンと残っている苺大福。


もしかして、それで、最後なの?



「せっかく、五十鈴にと思って、ホワイトデーのお返しに昨日買っておいたものを!」

「…わ、わたしの…苺…だ…い…ふ…く…」



透と一緒に食べようと楽しみにして帰ってきたのに。


透の気持ち、凄く嬉しかったのに。


わたしの、この気持ちもどうすればいいの?



「は?ウソ?ホワイトデー?今日?」



羽澄さんが「まさか、お返しに苺大福ーっ?!」と手にしていた食べかけの苺大福の中身の苺がコロンっとテーブルの上に落ちる。


母も驚いて「ご、ごめんなさい!透くん!そうとは知らずに食べてしまって…」と謝っている。


羽澄さんと母が二人揃って――。



「最後の一つは五十鈴ちゃんが食べて!」

「最後の一つは五十鈴が食べなさいね!」



それはどこにでもある普通の苺大福だけど、わたしにとっては透がバレンタインのお返しにわたしの為に用意してくれた苺大福。


かなり、――ショック!!


わたしは台所に立って、ナイフを手にする。



「い、イヤ~~!五十鈴ちゃん、早まっきゃダメ~~!!」

「五十鈴!!落ち着いて!!お母さんが悪かったから~~!!」



食べ物の恨みは恐ろしいって言うけど、わたしの場合は…。



サクっ…。



「五十鈴…」



透が蒼白な顔をして、わたしの手首を掴んで放さない。


でも、もう、わたしは事終えた後。



「透!最後の1個だから、半分ずつにしよう!」


「………」

「………」

「………」



3人ともどうしたの?動きが無いように見えるけど…。


それより、最後の苺大福、いただきましょう!


透の口に半分になった苺大福を。


そして、残りの半分を自分の口に。



「美味しい~!ありがとう、透!」



二つを一つずつ分け合うより


一つを半分にして、二人で分け合う方が


何だか幸せが増えるような気がするのは、どうしてかな?










翌日、夕方。


学校から家に帰ると、苺大福の山が築かれている。



「お、お母さん…、何?これ?」



と尋ねると、力無く母が答えてくれる。



「はっちゃんが五十鈴にって。悪かったって、反省してるって」



それは、数える気も失せるほど、お店の全てを買い占めて来たの?って思うぐらいの量。



「どうしよ…」

「適量というものを知らない人だから、はっちゃんって…」



羽澄さんの気持ちは嬉しい!――けど…。


苺大福を目の前にして、ただ立ち尽くすしかない母とわたし。


しばらくは、この白いモチっとした食べ物、見たくないかも…。


と言うか、今夜、夢に見るかも……。


それは、食べきれないほどの、少し酸っぱくて、とても甘い幸せな夢――。


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