冷たい冬の風に揺れる、君を想う胸の振り子
――翌日。
馨さんと羽澄さんがたくさんのお土産を持ってやって来た。
後から透も…。
「昨日は、ごめんね~~!」
「どうも、すいませ~~ん」
謝りに来たにも関わらず、二人はニコニコを機嫌が良い。
しかも、海外旅行から帰ってきた訳でも無いのにそんなに大量のお土産。
一つずつ、取り出して、お土産の説明をしてくれる馨さん。
チョコレートやワインやら……、た、食べ物ばかり。
我が家ではしばらくワインの持ち込みは、26日以降禁止になったんですけど。
リビングのテーブルの上には、溢れるほどのお土産を見てるだけのお父さんとわたし。
最後に馨さんが「これ、五十鈴ちゃんに」と言って見せてくれた物は、小さな箱。
「誕生日とクリスマスとお土産と、早いけどお年玉も兼ねて」
お、お年玉も兼ねてるの?
ゆっくりと中身を開けてみると――。
「き、綺麗…」
それは、ハートの形にカットされた青紫色の宝石の指輪。
「実は、知り合いに宝石商が居てね。格安で譲って貰ったんだよ~」
馨さんはそう言って、その指輪を取りわたしの指に嵌めてくれる。
たった、それだけの事で、この部屋に暗雲が立ち込めてくるのが分かる。
「か、馨さんっ!!あんた、俺の前で五十鈴に指輪を送るなんてイイ度胸だなーーっ!!」
原因は、かなり親バカな父。
そんな父に馨さんは驚いて「五十鈴ちゃんに似合うと思ったから、プレゼントしただけだよ~」と言う。
「プレゼントだぁ~?あん女と結婚して、デカいガキまで居る50近い男が女子高生に指輪なんて送ってんじゃねぇーーっ!!!」
そ、そこまで言わなくても…。
父は機嫌が悪いのか、完全にキレている。
「あ、あんな女って何よーっ!!」
羽澄さんもキレた。どうもあの26日以降、ピリピリしてる二人。
こんな時は、やっぱり頼りになる唯一の存在は母。
「勇くん!はっちゃん!年末の寒空も中、路頭に迷いたくなかったら仲良くしようね」
にっこり笑ってる分、空恐ろしい。
この中で一番強いのは母。
「詩帆~~!」
「しぃちゃ~ん!」
「追い出さないでくれ~!」
「ひもじいのはイヤよ~!」
「まるで、餌付けだ」
と傍観していただけのの透がボソっと言葉をこぼす。
それより、この指輪を外してしまえば、それで解決するんじゃないの?
――え?あれ?きつくて…、ちょっと…、は、外れない?!
「あ、あの~、これ、外れないんだけど…」
この場に居る10の瞳がわたしに集中する。
せっかく、母が追い払った暗雲はこの先どこへ行くのだろう?
わたしは“あはははは…”っと、この場を何とか和ませようと引きつる顔で笑ってみせた。