変わりゆくものを、大切にしたい
side:五十鈴
今日は12月26日。
あいつの16回目の誕生日。
怒涛の4日間は、わたしが風邪で寝込んでしまった為、この1日にぎゅ~っと凝縮する事に決まった。
そして、風邪もなんとか完治して、ケーキ作りに勤しむわたし。
超特大のケーキ。
チョコプレートも3つ用意して――“メリークリスマス”と“ハッピーバースディ”が2つ。
「五十鈴ちゃ~ん!!これも、追加ね~~♪」
一緒に手伝ってくれている羽澄さんが、4つ目のプレートを持ってケーキの上に飾っている。
(ん?…“快気祝い”?……何、それ?)
怪訝な顔でプレートを覗き込むわたしに、羽澄さんは「五十鈴ちゃんの風邪が治ったお祝いも兼ねてね~♪」と笑顔で返される。
(嬉しいような…、そうでもないような…)
この際、何でもアリ?
仕上げに羽澄さんがフルーツを目一杯飾り、ようやく完成!!
食べるのが惜しいぐらいのクリスマス&バースディ&快気祝いのケーキが出来た。
パーティは始まった。
大人達は、気の置けない仲間同士。
羽澄さんと父は高校と大学が同じで、母とは大学で仲良くなったとか…。
傍で見てると、完全に忘年会状態になっている。
リビングで食べて飲んで、昔の話を持ち出しては盛り上がっている。
わたしと言えば、ダイニングテーブルに座って、食後に力作ケーキをパクパク食べる。
勿論、透も一緒に。
「ねぇ、透。羽澄さん、今日はウチでお泊りだね」
「そうだな…」
少し呆れ顔で答える透。
「羽澄さんって、お父さんと同じ高校だって言ってたけど、いつ頃から仲良くなったのかな?」
「さぁ?」
「羽澄さん、お父さんの事“トンちゃん”って呼ぶけど、理由知ってる?」
「…さぁ?」
「………」
「………」
明らかに生返事をする透。顔もムスッとしてご機嫌斜め。
「――もしかして、まだ怒ってるの?」
「今だって、旨そうにケーキばかり食べてる」
先日、透より甘いアイスやプリンを選んだ事をまだ根に持っている。
「わ、分かったわよ!今日は透の誕生日だし、何か一つ言う事を訊いてあげてもいいけど」
結局、風邪で寝込んでた訳だし、わたしはプレゼントも用意していない。
だから、このぐらいの事で許してもらえるなら…って言うより、そんな事でいつまでも怒ってるなんて!!!――大人げ無いんじゃない!!!
「じゃあ、後で俺の部屋まで来いよ」
「へっ?」
「五十鈴にプレゼントもあるし、取りに来るぐらいいいだろう?」
「う…、うん…」
透は「まだ、あとで」と言って、隣の自分の家に帰って行ってしまった。
「あれ~~?透、帰っちゃったの~~?」
と、羽澄さんが訊いてくる。
手にはワイングラス。頬はワインと同じ、ほんのりピンク色に染まっている。
「羽澄さん、大丈夫ですか?」
「うーん!大丈夫!大丈夫!!今夜は五十鈴ちゃんの部屋で休ませてもらうから~~。一緒に寝ようね~~♪」
(……そ、それは…)
背筋にゾクっと悪寒が走る。
風邪、まだ治ってなかったのかな…?
しかも、身の危険を感じるのは、なぜ?
ここは、素早く話を変えた方が!
「ねぇ、羽澄さん。どうしてウチのお父さんの事“トンちゃん”って呼ぶの?