それは、もっと好きになる――おまじまい 3
side:透
――あの後。
あの話って、いつの頃の事なのか、気になったので羽澄に尋ねてみた。
「え?初めての“ちゅう”がいつだったかって?」
少し、え~っと、と言って考える羽澄。
「あ!あれはね!3歳の時だったかな~?」
3歳の時?じゃあ、憶えて無くても仕方ないか。
「最初は良かったのよ~。あんたも機嫌良く五十鈴ちゃんと“ちゅう”なんかしたりして。でもね…」
羽澄が“でもね…”と言った途端、この場の雲行きが怪しいものになってくる。
「私も楽しくって“もっと見せて~!”なんて言ったもんだから、五十鈴ちゃん、あんたの事追い掛けてまでするようになっちゃってさ~」
そ、それで。
「でも、透は鬼ごっこだと思ったみたいで笑いながら逃げるし、でも五十鈴ちゃんは、おまじないの“ちゅう”が足りてないんだと思って。そりゃあ、懸命に追いかけて…。ね~」
な、何が“ね~”だ!ニヤつくな!!
「結局、捕まえる事が出来ない!!って、五十鈴ちゃん大泣きに泣いて、透もそんな五十鈴ちゃんを見て自分が泣かせたと謝ってたっけ。で、そのまま二人で泣いたまま寝ちゃって。それなのに、次の日にはケロっと忘れてるんだも~ん!!」
それって、どういう…?
「だ~か~ら~、子供って寝ちゃえば、ヤな事って忘れてしまうんだな~っと」
羽澄は当時の出来事をケラケラと笑い飛ばしている。
し、信じられないっ!そんな事があったなんて!!
初めは微笑ましい幼い日の思い出が、途中から痛い話に変わってる。
羽~澄~っ!!
幼い日の俺達をからかって、楽しんだな!!
この話、五十鈴には絶対秘密だ!と心に誓った。