それを、人は恋の病と言う…?
「ただいま~」
「ただいま」
「おかえりなさい。五十鈴、透くん」
母が出迎えてくれる。
一緒に学校に行って、一緒に帰ってくる。
いつの間にか、それが当たり前になっている。
「今日も透くんの為に夕ご飯作るわよ~!五十鈴も手伝ってよ!!」
「…うん」
透の母、羽澄さんはピアノの先生。
だから、子供の頃から羽澄さんがお仕事の日はウチで透をお預かり。
今でも透は自分の家よりウチで過ごす方が多いかも。
って言うか、すでに自分の家と化してると思う。
取りあえず、わたしは制服から私服に着替える為に2階の自室へ。
「――どうして、ついて来る?」
「ん?俺も着替え…」
「着替えるなら下で着替えなさいよ!」
「今さら、恥ずかしいとか?」
「あのね~~」
「子供の頃は一緒にお風呂も入ったり…」
「一体、いつの話をしてる!!!!」
「確か、最後に入ったのが小3の8月2日」
「ちょっ!何!的確に答えてるのよ~~~!!!」
透はにっこり笑って指差す。
そこはわたしのベッド。そして、ベッドの上には…。
「俺の服、そこにあるし」
「!!!!」
お母さん!何で、透の服をわたしの部屋に~~~!!
服を鷲掴み、透に押し付けるように渡す。
「下に行って着替えな…っ!!!」
むぎゅう!!
(い、いきなり何を~~~!!!)
「と、透!!」
「少しだけ…」
透の鼓動が聞こえてくる。
わたしの心臓もバクバク言ってるけど、透の方が早い?
ちゅ!!
(今、ちゅ!って、ちゅ!って、なに?)
おでこに温かく柔らかいものが!
「~~~~~~~~っ!!!!!!!!」
「五十鈴、耳まで赤い」
そう言って、涼しげな顔して降りていく。
お母さんが「顔が赤いけど、熱でもあるの?」と訊いてくるけど、答えようが無い。
「だ、大丈夫…だから」
翌朝、本当に熱が出て学校を休む事に。
透は「知恵熱?」悪戯っ子みたいに笑う。
(誰のせいだと思って`~~!透のバカ~~~!!!)