捧げ合う時
前半side:五十鈴 後半side:透
“与えたい”
透はそう言った。
わたしもそう言った。
手に入れるんじゃなくて
欲しいんじゃなくて
奪うんじゃなくて――。
“全てを与えたい”
いつも傍に居てくれて
いつも助けてくれて
いつも守ってくれて
いつも想ってくれて
ありがとう。
生まれた時から、どんな時も近くに居るのが
普通で自然な事で、当たり前だと思ってた。
隣に住んでる幼馴染みの男の子が彼氏になっても
尾ままでと同じで変わらないと思っていた。
でも、それは間違っていた。
これ以上、わたしに何を与えてくれるの?
そして、わたしは何を与える事が出来る?
きっと、それは無限の想い。
わたしは今日の日を忘れない。
今、この時こそ――捧げ合う時。
* * *
“与えたい”
俺はそう言った。
五十鈴も同じ言葉を。
手に入れるだけではなく
欲するだけではなく
奪うだけではなく――。
“全てを与えたい”
いつも傍に居れくれて
いつも微笑んでくれて
いつも元気をくれて
いつも想ってくれて
ありがとう。
生まれた時から、離れるなんて出来なくて
いつも隣に居る事を、許して欲しかった。
隣に住んでる幼馴染みの女の子が彼女になれば
今まで以上に想いが伝わると思ってた。
でも、それは間違いだった。
想い以上に、俺の全てを五十鈴に与えたい。
例え、それが俺の勝手な自己満足であっても。
きっと、それは無形の想い。
俺は今日の日を忘れはしない。
今、この時こそ――捧げ合う時。