メザメタ・チカラ 2
side:五十鈴
わたしは、湯船に浸かりながら、ただ思う。
きっと今頃、また透は思い出して笑ってるに違いない。
わたしの石化した姿を…。
(どうして、こうなっちゃうの~~)
ぶくぶくぶく~~~。
――わたしは湯船に沈んだ。
あれ?また、電話が鳴っている。
お風呂場のドアを少し開けて「透!電話に出て~~!!」と叫んでいるのに返事が無い。
電話は鳴り止む様子も無く…。透、寝てるの?それともトイレ?
もう、こんな時、役に立たないんだから~っ!
仕方ないな~と手早く身体を拭き「はいはい、待って待ってね~」と電話に話しかけ、バスタオルを身体に巻き付け受話器を取った。
『も、もしもし!五十鈴ちゃん!!』
「はい、あれ?馨さん?」
『あ、あのね!気になって!』
「はい?」
『本当に大丈夫なんだね?』
「はい…」
さっきも“大丈夫?”って……どういう意味?
『透は?代わってくれる?』
「えーっと、それが…」
どうやって答えようか迷ってた時、玄関でドアの開く音。
「あれ?透、隣に戻ってたの?また、馨さんから――」
と言った時、受話器の向こうで『何してんのよ~~!!馨~~!!』そして、バコっという鈍い音。
『もしも~し?』
「あ、あの、羽澄さん?」
『五十鈴ちゃん、こっちは大丈夫だからね~。馨もちゃんと始末しておいたから、ごゆっくり~~♪』
ブツ、ツーツーツー。
「五十鈴?馨が何?」
「え?えーっと……羽澄さんが馨さんの事、始末しておいたから、ごゆっくりだって…」
「あ、そう」
「………」
“始末”ってどういう意味?“ごゆっくり”って…?
しかも“バコっ”って、あの音……。
想像出来るけど、しない方がいいのかも。
はぁ~っと溜め息混じりに受話器を置いて振り返ると、透がわたしをじーっと見てる。
「な、なに?」
「五十鈴が観たいって言ってた映画のDVD、光星から借りてたのを思い出して取りに帰ってたんだけど…」
「だ、だけど…なに?」
「その格好、わざと?」
「ん?――うっ!うひぇえええええ~~!!」
お、お風呂上り!!しかも、着替えていない!!
バスタオル1枚だけでは、何かと心許ないって言うか…!!!
慌てて着替えに行こうとするわたしを透はいとも容易く――。
むぎゅう~!
「捕獲」
「うわっ!は、放してよ~~!!透~~!!」
「五十鈴だって、俺の見たくせに。俺にも見せて」
「み、見てないって!(本当は見たけど)そ、それに見せないからっ!」
絶体絶命?!
逃走不可能?!
何なの?その余裕の笑みは?
爽やかさの中に艶っぽさもあって、思わず見惚れてしまうじゃない!!
「とりあえず、上へ行こう」
「へ?――ひゃっ!!」
手を取られ、連れて行かれる。繋いだ透の手はとても熱くて…。
「と、透っ!」
「夜もこれからだし、たまにはゆっくり話し合おうな」
う、うそ~~~~!!
とにかく、着替え!!
パジャマにぐらい着替えさせてよ~~!!
全く初日から、こんな調子で、あと4日間…。
どうなるのよ~~~!!