夏は、麦わら帽子にワンピース
今、わたしの目の前には二人の友達が手に水着を持って立っている。
千星ちゃんは、ピンクに花のデザインのホルダーネックタイプの水着を持っている。
つかさちゃんはフリルがいっぱい付いた白いタンキニタイプの水着。
二人して「こっちが似合う」と言って一歩も引く様子が無い。
事の発端は、わたしが「夏休みになったら、皆でプールに行こう」という言葉。
確かに、言ったよ!このわたしが!
どっちも可愛い水着!二人ともわたしの好みをよく知っている。
買えるものなら両方欲しいぐらい。
でも、このままの状態で居るのも……。とにかく、どちらかに決めるしかない!
「試着してから、決めよっかな~」
二人から奪うようにして、試着室に駆け込んだ。
まずは、千星ちゃんお勧めのピンクの水着。
鏡に自分の姿を映す。
外では二人が「どう?」「着替え終わりました?」と声が掛かる。
「こんな感じだけど…」
パシャ!
(え?今、パシャって…?)
「つ、つつ、つかさちゃ~ん!?何してるのーー?」
「あら、せっかく可愛い五十鈴さんの水着姿ですもの、記念に1枚」
そう言って、片手に携帯電話を持っている。
「綺麗に撮れてますよ」
「あ、本当だ」
と、千星ちゃんが答えてる。
「さぁ、次の水着も着替えて見せて下さいね」
外では、二人が何やら密談しているのが聞こえてくる。
“添付して送って”とか“1枚××円です”とか……。
(こんなわたしにだって、きっと肖像権とかあるんだから~!)
2着目も携帯で撮られ、つかさちゃんは「送信完了♪」と言って、にこっとしている。
「私達だけでは、決まらないでしょう?だから第3者に決めてもらおうと思って」
「だ、第3者?」
「勿論、白澤くんよ♪」
(う~~~、やっぱり…)
私はがっくりと肩を落とす。
「つ、つかさ!何であんなヤツにっ!!」
千星ちゃんは機嫌が悪くなる。
~~~♪~~~♪
「返信来ましたわ。…えっと、ピンクの方がいいそうよ…」
つかさちゃんは「千星さん、良かったですわね。白澤くんと同じ趣味で」とにこにこ笑う。
千星ちゃんはさらに機嫌が悪くなってきたのか、こめかみがピクピクしている。
よく、分からないけど、千星ちゃんは心の中で何かが何かと闘ってるように見える。
つかさちゃんも怖いもの知らずって言うか…。天然って、凄い!!
わたしはこの場から早く離れたい気持ちで、ピンクの水着を手に会計へと向かった。