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雨音は、君への想いを募らせる甘い調
side:透
梅雨なんだから、仕方ない。
朝からどんより曇った空を見上げながら、そう思う。
【今日の降水確率は午前30%、午後は――】
テレビの中の気象予報士は爽やかに原稿を読んでいた。
放課後。
家に帰ろうという所で雨が降ってくる。
(あと15分、せめて10分あとなら濡れずに済んだのにな)
傘が無い訳じゃない。でも、雨の日は灰色の世界に居るようで…。
「透!一緒に帰ってくれる?」
下駄箱で靴を履き替えていたら、甘い声で名を呼ばれる。
「五十鈴?先に帰ったんじゃ…」
「えーっとね、それがね…折りたたみの傘を鞄に入れた――つもりになってたみたい」
えへへへ…と苦笑する、俺の彼女。
「いいよ、帰ろう」
「うん!」
いつも一緒に帰ってるせいか“一緒に帰って”も“一緒に帰ろう”も言わなくなって、自然と並んで帰るのが普通になってしまっている。でも――。
“一緒に帰って”と言われて心が弾む。
“一緒に帰ろう”と言ったら心が和む。
今日は雨だけど悪くない日だ。
悪くない?――いや。
俺にとっては、最高の日になった。
隣に五十鈴が居れば、それだけで色鮮やかな世界に変わる。