第一章 空の異変
誰なの? 誰が私を殺したの?
どうして私が死ななくちゃいけないの?
私は何も悪くない。何もしてないのに・・・。
私は誰の身代わりとして死んだの?
「世の中物騒になってきたなぁ」
昼休み、賑やかな教室で携帯を見ていた紫藤海は呟いた。
それを横で聞いていた春名光は海が見ていたのを確認し、同意するように頷いた。
「また神無月学園で殺人事件が起きたんだろう?」
「しかも今回は2人や。なんで校内で事件が起きるんやろうなぁ」
まるで年寄りのようにブツブツ言っている海を放って、光は空に聞いた。
「空はどう思う? 今回の事」
「………」
「……空?」
「ん? あ、なんだ?」
慌てて光に返事をした高橋空は、どこか元気がなかった。
それを疑問に思った2人は空の体をさすったり、熱を測ったりした。
しかし空が怒らなかったのを見て、2人は悟った。
空に何かあった、と。
その瞬間に海が空を羽交い絞めにし、光は上履きを脱いで空の足の上に乗っけた。
驚いた空は自分の状況を確認し、必死に逃げようとした。
しかしいくら抵抗しても2対1で押さえつけられているので、ただ叫ぶことしかできなかった。
「おいっ、離せよ! はーーーなーーーせーーー!」
「それは無理な相談ってやつや」
「離してほしかったら、お前に何があったのかを教えろ」
「ぐっ」
光の言葉に空は言葉を詰まらせ、さらには顔を顰めた。
しばらくの間3人の空気が静まり返ったが、観念したのか空が「だぁーーーーーっ!!」と叫び、ため息をついた。
それと同時に2人は空を開放し、空は2人を睨みながらも話そうとして口を開いた。
「高橋君、お願い、助けてっ! 高橋君、高橋空くーーーーーんっ!」
しかしその瞬間、窓の外から空を呼ぶ声が聞こえてきた。
驚いた空は窓のところまで行き、外を見て、目を見開いた。
光のペースに合わせながら歩いていた海は、いきなり走り出した空にぶつかった。
それに耐えられなかった海は床にしりもちをついてしまった。
「大丈夫か、海?」
「俺は大丈夫やけど……どうしたん? 空のやつ。慌ただしく出てったけど」
「さあ……」
そう言いながら光は窓のところに向かった。
そこで見た光景に、いつもポーカーフェイスである顔が崩れた。
そこにいた人物は赤髪のロングヘアーの女子で、大きくて特徴的な瞳に涙をためていた。そして彼女が着ていたのは……
――――――殺人事件が起きている、神無月学園の制服だった。
あとから海が来てその光景に目を見開いたが、その人のところに空が来たのを見て、ついに会は声を漏らした。
「嘘、やろ? なんで神無月学園の人と空が知り合いやねん」
海が言ったことに光は同意しながらも、これからのことを海に聞いた。
「どうやら、詮索するしかないようだな。お前はどうする?」
「なに聞いてるんや。こうなった以上、俺も手伝うっつーか、一緒に詮索するで」
「そうか、なら行くぞ」
そう言うと光は教室の外へ向かって歩き出した。それを追うような形で、海も教室の外へ向かった。