水しぶきをあげて
いつ………?
いつから、君と僕の間に壁が生まれたのだろう。
「葵………?」
「……。」
「葵ッ。」
「………ッ。どうしたの…?」
いつからだろう。
お互いの表情を確かめ合うのをやめたのは。
自分の事だけを考え。
君の事なんて……何も。考えてなかった。
「…ごめんな。」
「何で、謝ってんの…?」
「葵の気持ち…何にも分かってなかった。」
「え。」
「別れよう…。」
「「………。」」
風鈴に乗せられた涼風が僕らの間を埋めてゆく。
決して柔らかくなく……堅くもなく。
ただ……ただ。
靡いている。
「な…ん、で?」
一瞬にして現実へと引き戻す君の。
言葉に。 涙に。
表情に。 ぬくもりに。
迷いを感じた。
「もぅ…おしまいだよ。」
「そんな事ないッ。やだよ…。別れたく…ナイ。」
「葵だって気づいてるだろ……?僕らはもぅ…。
あの頃には戻れない。」
「………ッやだ…。やだよぉ。」
ひたすら…、君は僕に抱きつく。
そのぬくもりも今ではとても冷たい。
僕の手の甲に堕ちた…誰かの雫。
雫はやがて…僕の手を擦り抜け…。
力のない程…簡単に零れ落ちる。
まるで…僕らのように。
抵抗もなく、迷いもなく。
簡単に崩れていった。
「蓮は…私の事嫌いになったの…?」
「あぁ。嫌い………。」
これで…良かったんだ。
お互いの為。
ホントは今でも…僕は君の事を愛してる。
だけど…。
君には本気で幸せになってほしいから。
僕では君を幸せにすることはできない。
「そ………、っかぁ。私…一人恋愛ごっこ…。
してたんだ、ね。」
君の目から零れ落ちた雫は。
もぅ、僕の手には届かないところで。
静かに流れる。
……もぅそれを僕は、拭き取ることはできない。
「蓮が……私の事……ッキライなんだ、った、ら…。
仕方、ない、っね。」
「葵……。」
「ゴメンッ……。さいごまで…泣き虫で……ッ。
さよならッ。」
淡いオレンジ色のバッグだけを抱え。
君は僕から姿を消した。
もう一度。 もう一度。
もう一度。 もう一度。
抱きしめたかった。
「だけど…。これで良かったんだ。」
お互いの為。未来の為。
仕事の為。生活の為。
愛を置き去りにして去ってゆく人は、この世の中に。
沢山いる。
僕もその一人であり。
大切な人を、傷つけた。
でもそれはきっと。
これからに繋がってゆくはずだからッ。
たとえ届かなくてもいい…。
彼女が…葵が。
幸せになってくれれば、それだけで。
「………ッ。」
……良かったんだ。
僕を照らす夕日は、いつの日か君と見た夕日に。
そっくりだった。
あの夕日をいつの日か、見なくなり。
君への愛を忘れてしまう…そんな時がくれば。
きっと僕らはそれぞれの道へと歩きだしているはず。
だからそれまで……それまで。
葵を好きでいたい。
溢れ出てくる涙は、僕から君への愛より。
遥に少なかった。
はじめまして。
恋那です。
なんか…、切なくなりましたぁ!!!!((テンション違ぇー。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。