隣の席の奴。
「あれっ?翔大くんじゃん!」
教室に入ったとたん、まゆがそんな大きな声を出した。
まゆが指差した方を見ると、翔ちゃんが椅子に偉そうに座っていた。
「おはよー!翔大くんっ!」
まゆは、いつもよりも半音高い声で翔ちゃんに話しかけた。
「よぉ。」
翔ちゃんは俯いたまま、まゆの挨拶に応える。
「うっわ!私と翔ちゃん席隣じゃん!」
まゆが翔ちゃんにアピールしている内に座席表を確認していると、とんでもない事実を発見した。
「えー、茜ずるいよー!」
「代わってあげたいくらいですっ!」
私は嫌そうな態度をしながら、自分の席に腰掛ける。
「おはよう、茜。」
「………。」
「おい、挨拶されたらちゃんと返せって小学校で習わなかったか?」
「おはよう。」
私は嫌味な事を言ってくる翔ちゃんに、しぶしぶ挨拶を返す。
翔ちゃんは雄ちゃんと違って意地悪で、いい所なんて1つも見つからない。
………まゆは、翔ちゃんのどこを好きになったんだろう?
「ところで、俺の弟クンとは最近どーよ。」
「なッ!」
私は、思わず立ち上がって翔ちゃんの口を塞いだ。
わざとみんなに聞こえるように言う、この性格の悪さっ……!
「っていうか、私が雄ちゃんを好きだって誰から聞いたのよ。」
「ごめんね~。私が言っちゃった。」
私が翔ちゃんの胸倉を掴もうとすると、満面の笑顔でまゆがそう言った。
「だって、翔大くんとの会話増やしたかったんだもん。」
「だからってね~!」
「いつも情報サンキューな、藤宮。」
「キャァッ!全然いいよぉ。」
………本当にまゆは口が軽いんだから……!