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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

魔法少女は追放される

作者: 駆け足狐
掲載日:2026/04/06

数年前になんとなく書いたやつです。

読みにくくてすみません。

 浜見姉沙は魔法少女である。この四方島世界では、さほど珍しい存在ではない。姉沙は小学生であるが、この日は高校に来ていた。夏休み中の学校だが、特に何もないように見える。だがそれは違う。姉沙は分かっていた。高度な偽装、隠蔽技術。この世界の高校生とは歴戦の強者である。彼らは真の学校の姿を隠している。特別な儀式でも行っているのか。はたまた姉沙の実力を試しているのか。そこまではよく分からない。

 ふと見ると、入り口に人が立っていた。さっきまでは誰もいなかったはずである。

「おはよう」

「……おはようございます」

「姉沙ちゃんかな。こっちについてきて」

 姉沙は奥に案内され、大きな扉の前に来た。この先が老女院であろう。老女院は冷静二中魔法少女部の上位組織である。本来なら小学生が呼ばれることはない。

「浜見姉沙さあ入れ!」

 大声で扉の向こうから声がかかる。

「早く行って」

 案内の人が姉沙にささやく。

「分かりました」

 扉が開く。

「えっと浜見姉沙です」

「貴様言いたいことがある様だなさっさと申せ」

 老女院主席であろうか。かなり苛立っている様だ。

「先日、悪魔コロバシが、野上市長を惨殺。市核を手に入れ、冷静市を占領しました」

「……それは、市長が殺されただけに過ぎん」

 議員の一人が口を挟んだ。姉沙は反撃を試みる。

「そうでしょうか?野上氏の擁立には我々も関わったとか……」

「仕方なくだ」

「分かりました。話を戻しましょう。この悪魔コロバシは危険な存在です。私は、冷静二中魔法少女部の総力をあげて戦いを挑むべきと思います」

 老女院の中が騒がしくなる。

「戯言を」「小学生風情が」「ロクでもない」「かえれ」

「……」

「……ふむ」

 主席がうなずくと院内は静かになった。しかし、姉沙はもう諦めていた。この人々には何を言っても無駄である。

「ではこうしよう。貴様の自由行動を許す。しかし部からは除名じゃ」

「ハハハ」

「これは良い……」

 姉沙はなんとか言葉を絞り出した。

「……失礼します」

「馬鹿はコレだから面白い」

 罵声を背に受けながら姉沙は逃げる様に老女院を去った。

 後に冷二の死神と称される浜見姉沙の伝説はここから始まったとされている。


「お姉君、お疲れですか」

 彼女は鹿波九九。小学二年生だ。姉沙とは同じ小学校で親しい。ただ九九は監査室の所属であり、顔を合わせる機会は少ない。

「九九、私、部から追放になっちゃって」

「知ってます」

「……そうだよねーびっくりだよねー……えっ?」

「なんで知ってるの?」

「これはあたしの考えだからです」

「……意味わかりません……」

「あたしがお姉君を追放させました」

「意味を分かりたくない……」

「聴いてください。悪魔コロバシがこの先どう出るのか分かりません。我々と敵対するかもしれない。しかし戦う準備をすることはできない。なぜなら警戒されるから。つまり、表向きは交渉をし、友好関係を結ぶ。その裏では、戦いの準備をする。相手の戦力を削る。そのための駒として選ばれたのが追放されたお姉君というわけです。何かあっても部とは関係ないと言い訳が効く。どうです完璧でしょう」

「……監査室は何企んでるの?」

「……別に何も」

「九九は私と一緒にいてもいいの?」

「秘密任務ですから。まぁ一応脇坂九十九と名乗っておきましょう」

「はあ」

 姉沙のやる気はゼロである。一方、九九は目をかがやかせている様に見える。

「とりあえず、証拠を見つけましょう」

「はあ」

 姉沙は端末を取り出す。画面にはどこかの田園風景が写っている。

「霊界通信ですか?何を見ているんです?」

「あのさ悪魔の目的ってさ。自分の軍勢を作り上げ、魔界で魔王になることだよね」

 悪魔コロバシの目的は皆知っている。全てを知ることが出来る霊界通信は万能だ。

「そうです。だから交渉して一緒に魔界に乗り込む派と、馬鹿馬鹿しいから静観する派の二つに分かれました」

「悪魔はどうやって軍勢を作るのかな」

「交渉で従わせるでしょう。それか洗脳が使えるらしいですけど、通じる相手ばかりじゃないですから有効とは言えないと思います」

「大規模魔法陣が崩されるかもしれない」

「そっそんな」

 姉沙が言う大規模魔法陣を語る前に、前提として、彼女らが所属している冷静二中魔法少女部は魔王の復活を目標としていることを理解して欲しい。大規模魔法陣は魔王復活のため機能しているのである。

「そうすれば安上がりで魔力が手に入る。軍勢なんか作りたい放題」

「その為にここ冷静市を襲ったのですね」

「私はそう睨んでいる」

「だとすると……」

 姉沙は首を振る。

「証拠がない。でもやられてからでは遅い」

 九九が姉沙に笑いかけた。

「大規模魔法陣を崩す為には、直通端末を操作しなければなりません。しかしそこには高度な結界が張られている。これを解除する為には……ふふ」

「とりあえず続けようか。」

「結界会館……」

「そこにあるんだ」

「霊界通信を見れば一発で分かります」


「というわけで、やってきました結界会館」

「はあ」

「はい、隠れてないで出ておいで」

「リッツ」

「はっただいま」

 九九が首を傾げる。

「貴方じゃないんだけど」

「九九、ごめん先に行かせたの」

 九九が口を一瞬膨らませた様に見えた。そして骸骨が二人に何かを見せてくる。

「やっぱり。トラップに嵌められてた」

「コウモリ男とつのババかな?」

 コウモリの翼を持つモンスターとツノが生えたお婆さんのようなモンスターが網に絡め取られていた。

「誰も気づかないなんて」

「多分隠密、遮蔽技術に特化した奴みたいですね。こいつら連れてきますね」

 そう言うと九九がモンスターを掴み、運び始めた。

「どこいくの?」

「企業秘密です。あの、端末に座標渡したんで、そこに向かって下さい。あたしは別用があるので」

「わかった」

 姉沙も指定の場所に向かうことにした。


 指定された場所は喫茶店だった。

「おーい姉沙。ここだよー」

 姉沙は九九に感謝した。このサプライズはなかなかだ。村子木夏。姉沙とは別の学校に通っている同学年の魔法少女だ。小三のころ塾で知り合った。以来連絡を取り合っている。

「じゃ入ろうか」

 二人は席についた。

「今日はどうしたの?」

「いやーそれが後輩のせいでクラブから追放された」

「姉沙が?」

「なんか駒らしい。笑えるよね」

「どう言うこと?」

 姉沙は自分の置かれている状況を説明した。

「……一人で悪魔と戦わなければならないかあ」

「悪魔は味方になり得ないと皆が理解すれば良いのだけど」

「それは厳しそう。なんか魔界へ遠征に行くんだとみんな盛り上がってるよ」

「そんなのうまく行くはずない」

「……()()が負けちゃったからね。もう終わりだよ冷静市」

「私達が勝てば良いだけ」

 木夏は一瞬ハッとした顔をし、苦々しげにつぶやいた。

「……わかったよ姉沙。協力する」

「ありがと木夏。さて早速手伝ってもらうよ」

「どこに戦いに行くの?」

「木夏は脳筋だね。違うよーまずは情報収集」

 そう言うと姉沙は端末を操り無数の仮想パネルを展開した。真ん中の小さい画面には技術系のドキュメント番組が流れている。これが霊界通信であり、その周りのパネルは姉沙が自作した分析ソフトである。霊界通信は本人に必要なこの世界の全ての情報を提示しているが、セキュリティのため映像に本人にしかわからない様な加工を施している。暗喩や連想で本人が感覚的に理解できるわけだが、解読に手間が掛かるので殆どの人は、自作ソフトを利用している。姉沙は霊界通信の解析を始めた。


 姉沙が調査したのは、諸勢力の対応である。少し前からいくつかの組織を追っていたが、さらに調べ直したのだ。

「木夏、魔法少女機構の内部は割れてるみたいだね」

「好戦派の代表がたしかUFOの魔法少女だっけ」

「……詳しいじゃん」

「なんか、市核と組織核を両方手に入れたいとか言っているらしいよ」

「それは問題児でしょ」

「その子追放された人に言われたくないと思うよ」

「その話は置いといて。あとの人達は静観かな。負けたからねー。次行ってみよー」

「わーい。次行ってみよー」

 姉沙はパネルを操作する。すると幾つかの動画が出てきた。

「レアモノじゃん」

「没陽は静観。次」

「えー観たかった」

「まあまあ」

 姉沙が木夏をなだめつつ操作を続ける。

「大崎も静観」

「戦論静観、RN(冷静ナンバーズ)全部静観、異能軍支部静観、うーん」

「私のところも静観」

「岩倉商店は規模小さいししょうがない。結論、冷静市には軟弱しかいない」

「急いだ方がいいかも。私達が悪魔に敵対することもバレちゃうかもしれない」

「……そうだね。」

 姉沙はなおもパネルを操作する。

「市外の反応は薄いね。なかなか情報が伝わっていないみたい」

「姉沙、悪魔軍の具体的な戦力は?」

「警戒した方が良い相手は、悪魔コロバシ、堕天使トゥレラ、妖狐赤鉄、吸血鬼プピレ、トロールメガドラゴ、龍仙戯鳳老人、慶九郎狸だねー。総兵力は8000。なかなかだね」

「……各勢力の主力が動いても良いと思う。そのくらいの相手だよ」

「じゃあ準備しますか」

 木夏も続く。

「わー準備しよー」

 二人は大量の物品を予約注文すると、街に繰り出した。もう日は翳り始めていた。


 二人が街を巡る理由は、生体ポイントを稼ぐためだ。生体ポイントは、歩いたり、異物や敵対者などを撃破すると入手できる。このポイントは全ての店で使うことができる。基本、街中での戦闘は、絶えず移動して行われる。ただし少し問題がある。だから姉沙は少し悩んでいた。

「……距離が出ないね。どうしよっか?」

 そこが問題である。姉沙は戦略級の魔法少女であり、距離をとってのアウトレンジ戦法を得意としている。市庁舎は街の中心近くにあり、そのあたりが最も生体ポイントが取れる場所なのだ。

「夜に移動するしかない」

「二中学区はだめかな?」

「辺境高のあたりが良いのだけど、老女院があるからなー」

 姉沙は追放された身、近くに行くのは問題である。そもそも関係を絶った理由が、悪魔への敵対行為が部の意向ではないと示すためであるのにそんなことをしては意味がない。

「……うーん。街中はだめ。二中もだめ。」

「じゃあ岩倉商店で」

 姉沙は元気を取り戻した。

「はいっ岩倉商店行こう」

 その時、木夏が路地に目線を向けた。

「木夏、何かいる?」

 木夏が姉沙の手を掴む。

「急いで。逃げられる」

「良いね。獲物かー」

 二人は変身する。姉沙は、黒いドレス。木夏はオレンジの縁取りがある白いフリルのついたワンピースだ。

 ()()はかなりの速さで建物の間を駆ける。

「あっ誰」

 木夏が声を出す。どうやらライバルが現れたらしい。姉沙は手加減して風魔法を放つ。

「ばかやろーなにしやがる」

 子供の様だ。風魔法で動けなくなっている。姉沙は無視して通り過ぎる。何かを撃ってきた様だが、障壁魔法で防ぐ。やはり火炎系の何かだった様だ。

「これで終わり」

 木夏が無事に異物(モンスター)を倒した様だ。即座に生体ポイントが支払われる。

「あのな、お前ら許さないからな。ってげっ」

 木夏が男の子に喋りかける。

「変装お疲れ様」

「知り合い?」

「ウチのマスコットのさぐるだよ」

「ズーへな」

 ズーヘは真っ黒で小さな小動物の姿に変わった。

「変な名前」

「ウチの店主名づけるの下手だから」

「それはどうでもいい。何があったんだ」

 ズーヘはイライラしている。しかし姉沙の端末が鳴り出した。

「あっもしもしこちら浜見姉沙です用件は何でしょうか」

「助けてくださいお姉君。証拠を監査室に持って行ったらなんかみんな「老女院の失敗だ」とか「悪の老女院に裁きの鉄槌を」とか叫んで、老女院に突撃しに行きました。今頃老女院は血で染まっている状況だと思います。どうにかしてください」

 姉沙には九九を助けたい思いはある。しかしそれは九九のためにはならないだろう。自分の招いたことを処理することも経験である。九九は木夏の居場所を教えてくれたが、さほどたいした恩ではない。姉沙はまた今度お礼をすることに決めた。

「……それは良い機会です。自分で何とかしましょう」

「助けてくださいお姉君おねがいします」

「……こちらは追放された身だよ」

「そこをなんとか」

 姉沙は端末を切った。

「何だった?」

「何でもないよ」

「あのな俺にもしゃべらせろ」

 ズーへは何か言いたい様だ。

「どうぞ」

 姉沙はうながした。

「こっちに来るってどう言うことだ」

「悪魔が今、冷静市を仕切っているじゃん。この悪魔を倒す根拠地が欲しいのだけど」

「岩倉商店本店を、貸すことは出来ないな。危険すぎる」

「……だめかー」

 姉沙はがっかりした。しかしズーへは話を続ける。

「だが幾つかの秘密の拠点がある。ここ数年は使ってないと思うが、それで良いか?」

「やったー秘密基地だー」

「今使えるかはわからない。これが詳細だ」

 ズーへはパネルを何枚か開く。

「すごい、軌道が描かれている」

 姉沙は定期的に移動する基地に驚いた。

「どうだ、すごいだろ。岩倉商店は老舗だからな」

「あの、店長さんの許可必要だったりする?」

 姉沙は尋ねた。

「いやこれは俺の持ち物だから」

「ナイスズーへ」

「まあ、こういう時、すぐにサポートできる様に隠れ家は個別に用意されてるからな」

 木夏が展開したパネルを見て唸っている。

「足りないな……」

 どうやら生体ポイントが上手く集まらない様だ。

「二手に別れよう」

 姉沙は提案した。

「いや、バラバラになるのはリスクがある。時間をかけても一緒の方が良い」

 姉沙はズーへの助言で閃いた。

「都市展開しちゃおー」

「……その手があるね」

 姉沙は死霊都市の都市核を持つ。これを展開することで死霊を呼び寄せることができる。死霊の力で生体ポイントを稼ぐという作戦である。

「そのまま攻撃すると言うのはどうだ」

 展開すれば相手に気付かれてしまう。そのまま攻撃する方が良いかもしれないと姉沙は思った

「まあ動きがバレちゃうからね」

「手っ取り早いかも」

 木夏も同意する。二人と一匹は場所を移した。


「この辺でどうかな」

「良いと思うよ。やっちゃおう。まずは宣戦布告だね」

「宣戦布告かあーはい情報拡散魔法」

「……えーみなさん。私、浜見姉沙と申します……っ面倒。浜見姉沙は、不正に冷静市を乗っ取り、権力を恣とする悪魔コロバシを打倒するよ!この冷静市を屍で埋め立てるから覚悟しなさい」

「はーい村子木夏だよーとりあえず悪魔はお仕置きサヨナラだよー」

「……木夏、はっちゃけすぎ……」

 放送が終わると、姉沙は核を展開した。冷静市全体に無数の無骨なコンクリート製の建物が出現した。それらは斜めに立っていたり宙に浮いてたりしている。そこから骸骨や黒い体のモンスター、鬼火の様な物が出現した。


 悪魔コロバシは異変に気付いた。

 コロバシがいるところは冷静市庁舎だ。モダンな作りだが、ところどころにひびが入っている。戦闘の跡だ。

 市長室の窓から外を眺める。

「都市展開か……」

「その様でございますな」

 龍仙戯鳳が応える。

「すでに妖狐が見に行っております。心配ないかと」

「そうか。ところで結界会館の方はどうなっている?」

 龍仙は首を振って答えた。

「何度か潜入を試みていますが突破出来ません。魔界側の霊界通信分析技術はそれほど良くないので」

「あそこが開けば大量の魔力が手に入る。トゥレラにやらせろ。元天使なら結界技術はあるはずだ」

「奴は命令に従いません」

「そうか……」

 人間も魔物も様々で、とても駒のように操ることはできない。組織の掌握は難しい。今更だがコロバシは思い知らされるのだった。


 その頃、市庁舎の屋上に三人の人影があった。

「戦略級とはいえここまでの展開はすごいですね」

 大人びた様子のメガネをかけた女の子がうなずく。

「データベースちゃんは世界改変できるくせによく言う」

 ランニングシャツを着た女の子がからかう。

「うむ退廃的な美しさがあるな。余は気に入ったぞ」

 身長がかなり高い長髪の女性がおごそかに宣う。

「また何か閃いたかー」

「またいつか魅せる時が来るだろう」

「遠慮するわ」

 悪魔側はこの三人に気づいていない。じつは仮に察知できたとしても見逃すくらいの戦力差があるのだ。


 姉沙の都市展開の後、死霊都市の住人は破壊行為を開始。副市長である()()()のリッツは市庁舎を襲おうとするも、謎の空間に囚われた。

「初めましてじゃの、骸骨殿」

「妖狐赤鉄でございますね」

「長柵縛魂」

 リッツの周囲にまがまがしい柵が作られる。

「なるほどここは魂魄、精神空間ですか」

「狐天火威砲」

 妖狐の尾が三つに裂け、燃える球体が尾の先から発射される。リッツは対抗魔法を発動させる。

「防御の法」

「なんじゃ、単純な防御魔法か。能がないのお」

「吸魂域」

 リッツが反撃する。しかし赤鉄は笑みを浮かべた。

「レジストじゃ」

 リッツの技は無効化されてしまった。だが、リッツは術を止めない。

「これで終いじゃ。雷星炎起末道海翔決斬空」

「護界の法」

 巨大な光る塊をリッツは汎結界魔法で抑えこむ。赤鉄が苦しそうに叫ぶ。

「……何故じゃ。この技は無効化したはず」

 リッツが赤鉄に説明する。

「吸魂域は高度神聖系魔術で無効化できます。なるほど、貴方は妖狐であり、神に近い存在で、それなりの神通力を持つ。神聖魔法が使えるはずだ。しかし貴方は悪魔と契約を結んでしまった。だから、神聖魔法を発動させると自らが侵されてしまう。悪魔と関係を持った貴方の失敗だ。」

「不覚、人間界と魔界を制圧する面白い()()だと思ったのだがな……」

 妖狐赤鉄はリッツに敗れ、消滅した。リッツは、周りの空間が元に戻ったことを確認すると、市庁舎へ向かった。

 リッツと赤鉄が戦っていた頃、ほかの地点でも遭遇があった。

「ククク……いいよ。すごく良い。相手してやろう」

 吸血鬼プピレは()()を見つけた。その相手は同じ吸血鬼。死霊都市の住人で浜見姉沙の配下バンプである。一方のバンプは相手がなぜ興奮しているのか理解できず、若干引いていた。

「おまえ悪魔側か?」

 バンプは一応確認した。

「ククク……市長側さ」

 バンプは頭を抱えた。彼の言動が理解出来ない。とりあえず殴ることに決めた。

「おりゃー」

「紅血の劔、青血の波動」

 プピレが血系魔法を展開する。バンプは強引に突破する。

「どりゃー」

「……恐ろしい力だ。巨人族に引けを取らない……血神装盾」

 バンプは攻撃を続けるが、手応えが無い。それでもバンプは攻撃を続ける。

「おおおおー」

 バンプは雄叫びを上げ、ついにプピレが倒れた。魔力が尽き、防御魔法が破壊されてしまったのだ。

 バンプはプピレが死んだことを確認すると、市庁舎に向かった。



「ふーんどうしよう。合流する前に少しポイント稼ごうかな」

 バールの魔法少女有藤真梨は、銀河学園所属の魔法少女で、空飛ぶ円盤(UFO)の魔法少女の配下である。用事があったので、単独行動をしていたら、この変事に巻き込まれた。仲間と連絡をとり、合流する途中である。

「なんだろあれ」

 真梨は不思議なものを見つけた。それは高さ十メートルほどの、すべすべした体を持つ生きた何かである。

「ほぼほぼぼはぼ」

「喋ったよこいつ」

 真梨は既に変身している。手には数本のバールを持ち、周りにもバールが浮かんでいる。

「殴るか」

「しゅどぼぼほぼはぼほ」

 でかい化け物は激しい攻撃を仕掛ける。真梨は対処が遅れ、後手に回る。

「レバスラッシュ」

 真梨は反撃するが、皮が硬く効果があるように感じなかった。

「……時間かかるなこれ」

 この後、数十分戦いは続き、両者ダウンで決着がついたのだった。



 市庁舎にいる悪魔コロバシは寒気を感じた。何かが来たとわかった。

「戯鳳よ。貴様が相手をしろ。」

「承りますぞ。この強烈な殺気。瘴気。怨霊系でございますな」

「……この我の安寧を奪った悪来の眷属よ呪ってやる。祟ってやる。霊技死晩会」

「わしが相手をしようぞ名は何という」

 戯鳳は攻撃を受けても平然としていた。

「我が名は布木の石生。浅葱の大臣(あさぎのおとど)なり。」

「ではわしの術を受けてみよ。古式、封解二門囲い」

「何だこれは」

 大臣は困惑した。明らかにおかしい攻撃である。

「……これは封印とその解除を繰り返す術でな。ここがミソなのだがその術は完璧では無いのだ」

「完璧では無い……とは」

「不完全な封印とその解体により、身体、いや霊体に歪みが生じてやがて自壊する。残念だな」

「……それはわかった。しかしなぜ我の怨念がきかぬ」

 大臣はなんとか声を振り絞った。戯鳳が笑う。

「先延ばしにしたのだ。怨霊系の術は時間設計が緩い。何年かかっても良いからな。だから数十年後か数千年後にはわしは大臣殿に祟られるかもしれぬな」

「覚えていろ小童」

 姿がぼやけ消えかけている大臣が叫ぶ。戯鳳は自分の髪を撫でた。

「わしの方が年上だぞ。この世界が始まった時から存在していたからな」

 こうして龍仙戯鳳は浅葱の大臣を封じ込めたのだった。



 薄暗い遊具がいくつか置かれた公園で、二人の魔法少女が話している。一人はベンチに座っていて、もう一人は近くのブランコの支柱に寄りかかっている。

「姉沙、戦果はどう?」

「既に悪魔側の半数が死亡。名のある者も討たれているね」

 木夏はさらに質問する。

「こちらの損害は?」

「大臣がやられたくらいかな」

「私も行こうかな」

「木夏は突撃愛好ガールだからねー」

「どういう意味よ」

「そのままだよ」

 姉沙もう嫌いだーと言いながら木夏は飛び出して行く。姉沙はやれやれと呆れ果てるばかりだった。

 木夏は猛スピードで戦場を駆け抜けたが、突然攻撃を受ける。木夏は相手を確認する。それは天使だった。いや、天使だった者である。

「……堕天使トゥレラ」

「そうだ。この僕が堕天使トゥレラだ。貴様らは僕の家来となるのだ」

「いやだと……」

 木夏が言いかけた時、トゥレラは呪文を唱えた。すぐに何かが現れる。

「……神。違う。なんなのこれは」

「邪神だ」

 トゥレラが応える。木夏は邪神に攻撃する。

「……邪紋火鏡」

「無駄だ。貴様では相手にならない。勝負あったな」

 木夏は無視して呪文を唱えた。木夏の身体から巨大な紋様が浮かび上がる。

「何だ。これは」

 トゥレラは激しく動揺した。

「邪極神ノノヒト召喚だよー」

 木夏が召喚した邪神はトゥレラが呼び出した邪神より数倍大きかった。

「こんなはずでは……」

「私も邪紋使いだからね」

 木夏は笑みを浮かべた。

「こいつめ……これはどうだ」

 トゥレラは呪文を唱えた。


「脳機狂乱」

 トゥレラが魔法を展開する。

「……精神系か」

 木夏はつぶやいた。すぐに自分の腹をさわる。

「何をしている。気分が悪いのか」

 トゥレラが問う。木夏が応える。

「……この辺りに()()()の邪紋があってね。どうなるか楽しみだなあ」

「裏走り……何だそれは」

「あんたは私の頭をそちらから操っているでしょ。その情報の流れを逆流してそっちを破壊するってこと」

 トゥレラは首を振る。

「……それは対策済みだ。この魔法は一旦魔界共通の仮想空間に入り、経路をわからなくしてある」

「じゃあ魔界が壊れるね」

 木夏は満面の笑みを浮かべた。トゥレラは口を歪めた。

「まさか。そんな」

 トゥレラの背後に黒い何かが現れた。トゥレラは反応できず、なすすべなく切断される。そして、黒い何かは木夏を見つめている。

「……仮想空間の管理人かな。多分、トゥレラは勝手に仮想空間に入り込んでいたけど黙認されていて、ちょうど今負荷をかけ過ぎたから破壊されたと言う感じかなあ。原因は私だけど、直接接続していたのはトゥレラだからね。私悪くない」

「……ギギ」

「わるくないからあー」

 木夏は邪紋を展開しつつ逃げ出した。管理人は追いかけてくる。

「こんなの聞いてない」

 木夏は唐突に思い出した。

「そういえば拠点があるんだっけ」

 木夏は近くの拠点に移動する。門のある立派ないえだ。門から入ってすぐの隠しボタンを押すとテンキーが出現した。

「これでおしまい」

 番号を入力すると罠魔法が展開し、管理者は蒸発した。

「疲れた。ちょっと休もう」






 魔法少女機構冷静支部は悪魔コロバシに敗れた。しかし戦力が乏しいわけではない。現在この組織は幾つかの派閥に分かれており、主流派と非主流派の緩い対立がある。非主流派である空飛ぶ円盤の魔法少女はバールの魔法少女と合流しようとしていた。

「バールと連絡取れたよ」

 空飛ぶ円盤の魔法少女の部下の消波ブロックの魔法少女が話しかけた。

「何か変な化け物と交戦して負傷。結界を張って避難中だって。助けは必要ないみたい」

「……放っておこう」

「同意。あの子ならどうにかなるでしょ。それより何とかならないのゾンビとかスケルトンとか気持ち悪いんだけど」

「見つけ次第撃破するしか無い。しかし趣味が悪いよな」

「ほんとそれ」

 消波ブロックの魔法少女は憤慨している。

「きっとこの術者よっぽどの変人だな」

 二人で笑い合ったその時、手のひらほどの葉っぱがひらひらと落ちてきた。

「……拙者慶九郎狸と申す者これより尋常に勝負願いたい。

「市長核は吾輩が貰い受ける。悪魔にはそう伝えろ。雑魚とは戦わん。さっさと失せろ」

 空飛ぶ円盤の魔法少女は強気に出た。

「ふんっ青濁り」

 慶九郎狸が呪文を唱えた。すると、あたり一面に草木が生えて成長し始めた。その勢いはだんだん速くなり、次第に渦を巻き始めた。

「ブロック百烈投げ」

 消波ブロックの魔法少女は周りに消波ブロックを展開して応戦する。しかし慶九郎狸側の術に対抗できていない。

「仕方ない……奥義重力波干渉砲白浪(ビギニングショット)

 辺り一面に閃光が走り、極端な破壊がもたらされる。地下シェルターや結界内に退避していた非習得者はもれなく炭化あるいは蒸発してしまったであろう。

 しかし慶九郎狸はその場から離れていなかった。

「そんな、かなりの衝撃のはず」

 消波ブロックの魔法少女は、慶九郎狸をよく観察する。そして気がついた。

「映像……」

 隣の空飛ぶ円盤の魔法少女が話しかけた。

「さすがだ。すばらしい攻撃だった」

 消波ブロックの魔法少女は、霊界通信を開いた。

「おもしろそうだな。どれどれ」

 空飛ぶ円盤の魔法少女が興味深そうにホログラム画面を見つめた。

「……おまえかー」

 消波ブロックの魔法少女は叫びながら、空飛ぶ円盤の魔法少女を殴った。

 空飛ぶ円盤の魔法少女は、ぼすんと音を出して、狸の姿になった。少し人間味があるのは化け狸だからだろう。

「……うーん」

 消波ブロックの魔法少女は少し離れたところから、空飛ぶ円盤の魔法少女の寝ぼけた声を聞いた。

「大丈夫」

 消波ブロックの魔法少女が空飛ぶ円盤の魔法少女に話しかけた。

「ああ。何があった」

「狸、倒したよ」

 消波ブロックの魔法少女が倒れた狸の映像を端末で見せる。

「……よくやった。それに比べて吾輩は……不甲斐ないな」

「そんなことない。それにまだ戦いは終わっていない。次頑張って」

「そうだな市庁舎はもうすぐだ。向かうぞ」

 こうして二人の魔法少女は、狸に勝利した。






「木夏殿ではありませんか」

 話しかけたのは黒いフード付きマントを着た骸骨。リッツである。

「ここの結界がどうしても開かなくてですね……」

「そう言うことなら、結界会館特製万能鍵第百四十九番三号で……開いた」

「万能鍵の威力は凄まじいですね」

「……うーん……でもまだ結界があるよ。ここには罠魔法だね」

「しかしまだ新しい。できたばかりの様ですね……あっ」

 リッツは何かに気がついた。後ろを振り返る。

「お前たち何している」

 その者は敵……ではなくリッツと同じ姉沙配下のバンプであった。

「この先に結界の山があって、困ってるよ」

 木夏がバンプに事情を話した。するとバンプは言った。

「結界が目の前にあれば壊す。山が目の前にあれば崩す。困っているなら殴れば解決する。おれはいつもそうしてきた」

「……ばかな」

 リッツが止めようとするがもう遅かった。

 バンプがおびただしい数の結界、罠、防壁に向かって突撃する。バンプが拳を突き出すたび、激しい轟音と共に対象が破壊されていく。リッツと木夏はただ見ていることしかできなかった。

「……そうか。これでは同志がやられるのは当たり前じゃのう」

「龍仙」

「そうじゃわしが龍仙戯鳳じゃ」

「こいつ――」

 バンプが血を撒き散らしながら吹き飛ばされた。

「一人……いや一匹かのう。戦闘不能じゃな」

「いや。奴は不死身ですので問題ないかと」

「……次はお主の番じゃ」

「神墜し」

「転移する羽根、無垢の正円、放射の仮面。誓いは時を見失い、延びる石柱の調べを聞け。反魔鏡」

 龍仙とリッツの魔法がぶつかった。はじめは神墜しの方が押していたが反魔鏡が反射に成功した。

「効かぬわ。豪仙火」

 巨大な炎が反魔鏡を包み反魔鏡が崩れる。リッツは防御魔法を張り直した。

「守護の法、多元壁の法」

 リッツはなんとか相手の魔法を防いだ。

「まだまだ行くぞ。爆浄焼き」

 さらなる炎系の魔法であった。爆発が起き、その後急激に温度が上がると言うものだ。

「……私だって。風そよぐ空、光の真中、舞え刹那の内に」

「花紋蝶」

 木夏の体から人の顔ほどのアゲハ蝶の様なものが飛び立つ。木夏の体には入れ墨のような邪紋が刻み込まれており、それによって魔法を出す。紋が大きくて複雑なほど大きな魔法になる。花紋蝶はそれほど複雑ではないが、大きいので、かなりの大魔法である。

「……毒か。厄介だ」

 龍仙は一目で魔法の性質を見抜く。

「ならば、高速機動第三式常早」

 龍仙は高速魔法を使った。木夏は体に強化術式が施されており、龍仙の機動についていく。リッツは射撃魔法を連射し始めた。

「貫通の法、斉射の法、光弾の法」

 木夏は龍仙との距離を詰めていく。龍仙はリッツの攻撃の対処に精一杯で、速度が保てない。

「くっ」

「そこー」

 木夏は掴んでいた花紋蝶を龍仙に叩きつけた。龍仙の表情が苦悶に歪む。

「……ぐはあ」

 龍仙は地面に叩き落とされ決着がついた。


「……トロールねえ」

 姉沙は都市展開を絞って、先を急いでいた。すでに敵の大物である妖狐、堕天使、龍仙を討ったと言う情報は得ており、これ以上戦果を拡大する必要はない。後は悪魔だけである。正直言ってリッツと木夏だけでは厳しい。姉沙は空飛ぶ円盤の魔法少女達のことは考えないようにしていた。空飛ぶ円盤の魔法少女はかなりの実力を持つ。催眠など搦め手に弱い傾向にあるが、火力は特異戦術級であり、姉沙以上の能力はある。

 ただ現在飛行魔法で飛んでいたら、魔法少女らしき人物とその隣に大きな肉の塊があり、肉の塊が起きようとしていた。多分起きたら魔法少女は攻撃を受けるかもしれない。そう思い降りると、悪魔の一団にこんなのがいたと思いついたのである。

「やっとこうかな」

 姉沙は覚悟を決める。

「刺し風」

 姉沙はトロールを串刺しにした。うーんとトロールは倒れ込む。

「……この子どうしようか。まあ、結界を張り直してあげよう」

 姉沙は結界を張ると市庁舎に向けて飛び立った。彼女の飛び方は大きな鎌の穂に腰掛けるようにして周りの気流を操作すると言うやり方である。

「いざ決戦の時」

 姉沙はこの時楽観的だった。悲劇はいつも突然始まるのである。






「不甲斐ないのお。コロバシよ」

 コロバシは反射的に平伏する。

「配下はほぼ全滅。おのれで駆けずり回った方がよかったのお」

「……魔王様申し訳ございません」

 コロバシはわなわなと震える。コロバシは魔王ユルガシの眷属である。ユルガシは中堅の魔王だか、それでもその魔力はコロガシの比ではない。

 コロバシが何か弁明をしようとしたが、それを制してユルガシが話しかけた。

「余が行こう。敵はリッツ、邪紋、バンプ。そしてこれら百鬼夜行の総帥、死神の魔法少女浜見姉沙だ。貴様は血雨の女王を相手にしろ。わかったな」

 ユルガシは返事を待たずに消え失せた。

「くっ……」

 コロバシはただ天井を睨みつけて居ただけだった。





「ここがシチョウシャと言うのか」

 バンプはよくわからないと言う表情をしている。

「この奥にコロバシがいるよ」

 木夏がバンプに教える。

「……やれやれ市庁舎も理解できないとは。死霊都市にもあるじゃないですか。よく私が紅茶を飲んでるところです」

「じゃあここでもおまえは紅茶を飲むのか」

「……いや違いますよ。機能が同じなんです」

「紅茶のティーパックがここにもあるのか」

「そう言うことではない」

「おまえはいつもおれをバカにする。機能が同じならティーパックがあるはずだ。ナメてるのか。そうか、一発なぐるぞ」

「そこまで。面倒だから突撃するよ」

 木夏が彼女なりに止めに入る。しかしリッツは。

「……この二人は……先が思いやられる……」

 と一人嘆いていた。

 三人は正面の入り口に入り、何かの空間に囚われた。

「またこれですか。破空の法」

 リッツがうんざりといった感じで対抗魔法を放つ。

「……限界かも」

 木夏が空間魔法の圧迫を受ける。

「今助けるぞ」

 バンプが木夏の所まで向かおうとする。

「犠牲環」

 バンプに多数の魔法陣が生まれバンプが爆発した。そして木夏の周りにも魔法陣が組まれ、木夏が弾け飛んだ。

「……」

 リッツは木夏の死を悟った。バンプを犠牲として木夏に高度な攻撃を仕掛けたのだ。本来ならそのような犠牲式は成立しないが、この短い間に誰かがバンプを眷属にしてしまったようだ。

「死ねえ」

 復活したバンプがリッツに襲いかかる。

「……困りました。コロバシでしょうか」

 リッツは霊界通信を確認する。それにはのどかな田園風景がひろがっていた。リッツは解析した。

「魔王ユルガシですか。ひどいですね姿すら現さないとは見縊られたものです」

 リッツはバンプをあしらいつつ考えを巡らせた。

「一旦引きますか。いやバンプだけでも元に戻して……常態の法」

「……ありがとなリッツ」

 バンプが我に帰る。

「バンプ。死体を回収しなさい。脱出は私に任せなさい」

「ああ」

「させるか……極震砲」

 ユルガシが姿を現し、特大の光線を放つ。リッツは極震砲に対し魔法を放つ。

「解釈の揺らぎ、死地の緩和。その力、我等の利器と変え、錠を解き、地を支え、運命を斬り拓く。さあ我が元へ来い。……大乗船」

「……余の力を利用して脱出したか。まあもう余力は残っておるまい。あとは浜見姉沙だけじゃなあ」

 ユルガシは笑いながら術を解いた。三人は姉沙の元に向かった。








「楽勝だったね」

 消波ブロックの魔法少女は喜んでいた。二人は市庁舎に入った後一気に市長室まで向かった。そこで異空間に入り、コロバシと戦ったのであった。初手で消波ブロックによる爆撃や、空飛ぶ円盤の襲撃を行ない、コロバシに致命的な損害を与えることに成功。コロバシの得意な洗脳、認知能力の低下、運動性能の低下といった状態異常攻撃は完全に封じられた。特に謎技術の空飛ぶ円盤が効果覿面だった。

「これで吾輩は、晴れて市長様だ」

 空飛ぶ円盤の魔法少女は上機嫌である。

 こうして悪魔戦役は事実上終わりを迎えた。しかし姉沙の戦いはまだ終わっていなかった。








「申し訳ございません。守り抜くことが出来ず……」

「リッツ。あんたは何も悪くない。悪いのは遅れた私。」

 木夏は死んだ。私のせいで。魔王を必ず倒す。今すぐ。

「もう一度、市庁舎に行く。必ず奴はそこにいる」

 リッツはくびをかしげた。

「いないと思います。戦いは終わったようです」

 私は慌てて霊界通信を調べた。競馬の映像が流れている。解析すると、消波ブロックの魔法少女と空飛ぶ円盤の魔法少女がコロバシを討ったとある。

「……ダメか」

 バンプが何か言い出した。

「……あいつはユルガシと名乗った死んでない。まだこの近くにいる」

「その通りだ」

 私は体の中が湧き上がるのを感じた。負けてはいけない。今ここで魔王を討つ。

「覇斬海龍撃」

 先に魔王ユルガシが攻撃を放つ。しかし私には全く効かない。効くわけがない。これは知っている。コイツは私と同類だ。

「引き伸ばし留める。移りては離れる。昇っては固まる。裂いては輝く。当たれば全てを薙ぎ倒し、掠れば焔の香り立つ。その風まさに吹き掛かれば、世の一つや二つ傾ける。……恐れ風」

「こんな術効かぬわ」

 私の魔法は破壊されてしまった。ダメか。ならこれで

「赤死龍、デゥラハンロード、デススライムいけ」

「ふん」

 鼻息で吹き飛ばされてしまった。時間稼ぎになったと思ったのだか。バンプやリッツが魔王に攻撃をしているがあまり効いていない。どうしたらいいのか。

「ではこちらから行こう……十七光衝」

 現れたのは十七の光、それが相手を追尾する魔法のようだ。何もできない。力に隔たりがある。自分には足りない物があるのだろうか。相手は……。

「市長。ちゃんと戦ってください」

 わかっている。わかっているけど。

「はあ。ようやくここに来られました。お姉君……」

 九九が突然現れた。この状況で加勢は有難い。

「展開、犯罪都市、宇宙都市、ハートのエース」

 九九は複数の都市核をもち、トランプ魔法が得意だ。それほど強くないが。私もやるしかない。

「流れ行くは波動の理。加速する流体は鋭き刃の如し。それを以て敵を穿つ……流刃装槍」

「うぐ」

 私、九九、リッツ、バンプ、赤死龍などが同時に攻撃していたため何が効いたか良くわからないが、魔王の動きが遅くなった。私達は畳み掛ける。しかし。

「一人目だ」

 バンプがやられた。


 ユルガシはバンプを倒したものの既に満身創痍だった。

「獄乱流」

「試爆砲」

「浸透撃法龍波」

「ミラクルガンズアタック」

 姉沙や九九の都市展開で、多くの敵に囲まれ、なす術がなかった。ユルガシは自分が死んで行くのを実感した。ユルガシがコロバシにこの冷静市の占領をさせたのは、神代魔王サカシキの復活の為である。冷静二中魔法少女部の者達特に死神少女浜見姉沙を覚醒させるためであった。結果は微妙だ。友人の死にむしろ気が抜けてしまったようにも見える。しかしそれでもいい。いつかその日が来る時、その時までに力をつけておけば良いのだ。悪魔は空飛ぶ魔法少女が破った。それもいい計算どおりだ。新たな舞台、新たな役が必要だ。全ては神代魔王サカシキの手のひらの上。アンテナの魔法少女という例外を除けばである。

「弱いわね魔王」

 弱いのは当然だ。ユルガシの役職は仮の姿。元は人間。魔法少女だ。元々老女院の一員だった。その前は魔法少女。その前は悪魔。転生者なのだ。

「……そろそろ終わりか」

 魔王は倒された。世界は再び元に戻る。破壊された街並みも、朝になれば元通り。四方島世界は神の世界。全ては管理されている。

「終わった」

「勝ちましたお姉君」

「ひとまず……といったところでしょうね」

 彼らは勝利を喜び合った。


 

 

続きがいつか作れたらいいなと思います。

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