カタログギフト争奪戦
女ばかりの家族というのは、怪しいものへの反応が二種類に分かれる。
即座に距離を取る者と、目を輝かせて近づく者だ。
母と三姉妹の四人暮らし。長女の茉莉は二十六歳、婚活アプリを三つ掛け持ちしている現実派。次女の清香は二十三歳、勢いとロマンで生きている。末っ子の私は二十歳の学生で、警戒担当だ。
事件の発端は、知り合いの知り合いの知り合いの結婚披露宴に、数合わせで私が出席したことだった。
後日届いた引き出物は、やけに高級そうな薄いカタログギフトだった。箱だけで元を取ろうとしている気配がする。
びくびくしながら開いた瞬間、背筋が凍った。
美青年、ずらり。
どのページも顔がいい。眩しい。説明文はこうだ。
「ちょっと訳ありで、僕たち結婚できません。ぜひ誰か選んでください。これだけイケメンだと、すぐに売れちゃう!早い者勝ち!」
訳が書いてない。そこが一番怖い。
どう考えても、返品不可の気配しかしなかった。
テーブルに放置していたら、清香が熟読していた。
「これ、私もらうね」
「だめ!怪しい!」
そこへ茉莉が来て、「何それ」と覗き込み、目を輝かせた。
「最年長の私がもらうべきでしょ」
じゃんけん、あみだ、トランプ。争奪戦の最中、母が洗濯物を畳みながら言った。
「一人しか選べないの?」
確認すると、第三希望まで書ける仕様だった。
姉二人の顔が、完全に「わくわくすっぞ」になった。
数日後、姉たちは順番に三人の男性と会った。
一人目は、席に着くなり自分語りを始めた。
「で、俺がすごいのはそこからなんだけどさ~」
清香は五分で帰ってきた。
二人目は会話中ずっとスマホを構えている。
「あ、今の角度いいわ。もう一回撮ろう」
茉莉は無言で帰宅した。
三人目は、ひたすら昔悪かった自慢だった。現在の話が一切出てこない。
「オレ、昔ちょ~う悪くてさ~」
家の空気が一段暗くなった。
最終的に、例のカタログギフトはゴミ箱に入れられた。
母が覗き込みながら言う。
「で、これは燃えるゴミ?」
私は思う。
やっぱりギフトは、お菓子が一番安全だ。




