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二重越工業ロボット部立志編①~虹(2005年)~

5月。

沖縄県宮古島市

沖縄県立二重越工業高校

沖縄県立二重越工業高校の1年生の電気技術科の教室では担任の濱元が出席簿をめくり、1人ずつ名前を読み上げる。

もう5月なので慣れ始めた頃。

なのでフルネームではなく、苗字が重複する生徒や気に入った生徒は名前で呼ぶ。


「出席取るよー。伊波」


「はい」


「伊良皆」


「ちょりーす」


「おいよ、何が「ちょりーす」かよ」


「いいせーがよ、先生」


「はいはい・・・次は・・・ようじゅまる」


「がじゅまるです・・・伊良部榕樹丸いらぶ がじゅまるです」


「あがいたんでぃ。そーなー?」


「そうっすよ・・・」


「次、えーっと、おうぎわし」


「先生、上野扇鷲うえの さしばです。さしばって読みますよ」


「あぁー、そうだったね。あんたたち2人はややこしい名前だね」


「すいません」


「すいません」


扇鷲と榕樹丸は濱元に申し訳なさそうに言った。

この2人だけはどうしても読むのが難しく、未だに間違えてしまう。


休み時間になり、隣のクラスである情報技術科の平良梯梧たいら でいご下里大通しもさと ひろみちと雑談する。

梯梧と扇鷲、榕樹丸は祖父同士が友人と言うことから幼い頃から知り合いで、この祖父達こそ難解な名前をつけた張本人達である。

一方、大通は小学校時代からの友人で3人の良き理解者だ。


「何でお前らってなかなか正しく呼んでもらえんかな?・・・」


昔馴染みの大通はもう慣れているのか、2人に寄り添いながらも疑問を呈する。


「まぁ、そりゃ、オジィのせいだからな」


「俺なんか、ちょっと個性的すぎるからよ。名前に丸ってつくとか、侍かよ・・・」


「だいずよ(確かに)」


「梯梧もよ、武富に間違えられてたからよ」


「やっぱりさ?」


「うん。はしごって呼ばれたさーよ」


「まぁ、そんなことよりさー、部活入らんか?ロボット部」


話題を切り替えて扇鷲は3人に提案する。


「あぁ、俺はパス。バイトを探すさ」


大通はアルバイトするらしく、スマホの画面を見せる。

画面にはアルバイトの求人画面が表示されていた。


「悪い、俺も。剣道部に入るつもりだからよ」


「お前、それだとマジで侍さいがよ」


「んぎゃます(うるせぇ)」


榕樹丸は梯梧の肩をパンチしてツッコミを入れた。


「マジにな?じゃあ、俺と梯梧か」


「まぁ、ちょうどいいっちゃあいいんじゃんな?」


「あぁ、コンビだからだろ?確かにな」


「それでいいならいいさー。俺は高校入ったからには玉竜旗ぎょくりゅうき、出たいさーよ」


榕樹丸は高校に入った以上は、と目標が定まっていた。


「うわーり(すげぇ)さっすがどー」


「うわーり(すげぇ)さっすがどー」


「うわーり(すげぇ)さっすがどー」


梯梧と扇鷲、大通は声を揃えた。


「目標がある奴とかうわり(凄く)強くなるからなぁ。頑張れよ」


「おう!じゃあ、入部届を出しに行くさーよ。あとからなー!」


榕樹丸は早速、入部届けを取りに職員室へ向かった。

それを3人は「あとからなー」と返し、見送った。

榕樹丸が出場することを夢見る玉竜旗とは一言で言えば、剣道の甲子園だ。

参加の正式な手続きさえすれば、どの高校も参加できるオープン参加となっており、まずは入部してからチーム作りをしようと考えていた。

――――――――――――――――――――


沖縄県宮古島市

ブックラックス宮古島店

放課後、勇海の妹で二重越工業1年の下地赤華しもじ せっかは沖縄では大きな書店チェーン、ブックラックスでバイトを始めるために面接を受けていた。

下地家の方針で高校生からは自分の小遣いがない事を知っているため、下地家の長女で平良高校3年の下地礼良しもじ れいらや赤華はバイトして捻出するしかない。

地元のリゾートホテルでバイトしている礼良に対し、今年から高校生の赤華はこれから始めなければいけなかった。


「えーと・・・下地さん?」


「はい!」


「成績は大丈夫?」


「あ、えーと・・・大丈夫です」


「バイト始めるとね、成績下がっちゃう子が出てくるのね。だから、あとから文句を言われるのは困るんだ。そこらへんは大丈夫だよね?」


「はい」


「うん。じゃあ、明日からよろしくね。今日はもう帰っていいよ」


「ありがとうございます」


赤華がスタッフルームから出たところで勇海と鉢合わせた。

どうやら仕事帰りに今週の週刊少年ホップを買いに来ていたようだ。

だが、先週、沖縄本島を今年初の台風が直撃したため、配送が遅れてしまい、今週号と先週号が同時に発売されていた。

そのため、勇海は先週号と今週号、両方買うようだった。


「何でいるかよ!?」


「いいさいがよ!?てか、あんた、電子書籍のほうがいいんじゃないな?」


「俺は紙のほうがいいんだよ!で、ここで何してたか?」


「は?バイトの面接。おこずかいは自分で稼ぐしかないさいがよ!」


「・・・へっ。お前がバイトさ?うわりウケる」


カチンときた赤華はとりあえず勇海の下腹部を殴った。


「あっがー(痛ゥッ)」


うめいた勇海を尻目に赤華はスタスタと歩き始めた。

勇海は顔を上げると、赤華はすでに店を出たようで、店を見回してもどこにもいなかった。

その代わり、パソコン関係の本を買おうとしている健一郎を見つけた。


「おいよ、武島」


「うわ。勇海かよ!」


いきなり話しかけられた健一郎は驚く。


「何やってるか?工業には行かないべきな?こんなところでさぶーとしてていいわけ?」


「あぁー。明日、平良さんと行くことになってるよ」


「あ?そうなー?」


「プレゼンでああは言ったけど、正直、無理だと思うよ。工業が全国制覇なんて。妙に高いハードルを突きつけるなよな」


「・・・はぁ、お前よ」


「しかも、お前がやればいいものを何で俺がやらんとならんかよ」


「いや、それはお前の裁量さいがよ。まぁ・・・寝てた俺も悪いけど・・・」


「だとしてもさ、全国制覇は無理だ。もう少し、ハードルを下げてもらわないとな」


「・・・うーん、では、まずは県大会で琉球工科を倒すってのはどんなか?」


「は?それってだいず(すごく)ハードル低くないか?那覇第一工業が強いさいがよ」


「先輩、今の沖縄のロボコンを知らんな?」


「いや、だって、琉球工科は俺らの時は2回戦までしかいけんかったさいがよ?」


「俺らの頃と今は違うんですよ。先輩。俺らが卒業したあとに急に強くなって県大会を連覇してるっつぁ」


「嘘だろ?!」


「一言で言えば、"南の怪物"に成長したってところか」


「マジか・・・」


「あ。そうそう。那覇第一工業はアイディアロボコンよりもロボット相撲に力を入れ始めたから、アイディアロボコンは実質撤退状態だ」


県大会でも琉球工科の急成長により、ハードルが高くなっていることに健一郎は絶句した。

-県大会すら危ういな・・・全国制覇とか大丈夫かよ?

健一郎は不安を覚えた。

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