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お買い物と今後の課題、大人の考え方

 マンションの地下が駐車場になっており、葵が2台並んでいる車の一方に近づいていった。「こっちが私の車」と可愛いく丸っこい車を指刺した。よくみるとFIATと書いてあった。このイケメンと車の可愛さが不釣り合いだ。

「んで、こっちが明の車」と軽のトラックを示した。なるほど、これなら2人しか乗れないわけだ。

「じゃあ、乗って」

 ドアを閉めると、信じられないくらい金属の軽い「バタン」と言う音が響いた。

「んじゃ、いきますか」

 左手で変な棒を操作して、動かす時にはギュアンっとうるさい音が私の椅子の下から聞こえてくると、ガッコン、と走り出した。

 家具屋さんにつく頃には、私は少し車によってしまっていた。

「ごめんね。あの車、うるさかったでしょ」

「なんていうか、独創的な車ですね」

「まあ、今時マニュアル車なんて、どこにも見たことがないわよね」

 あの棒でガチャガチャする車を「マニュアル」というらしい。

「んじゃ、揃えていきましょう。まずはベットね」

「リビングで、なので、ソファベットではどうでしょう」

「そうね。布団は収納に入れれば、昼間はソファとして使えるしね」

「はい。比較的小さめの、これがいいですね」

「OK。これなら下が収納になってるから、ものも入れらるわ」

「リビング机ですけど、みんなが一緒にご飯が食べらえるのがいいです」

「そうね・・・大きさはこれくらいでどうかしら。ただ運んでもらわなきゃダメだけど」

「いいですね。お落ち着いた感じで」

「OK、結月ちゃん、机が必要じゃない?」

 少し考えたて、こう答えた

「そうですね、でも私、勉強はダイニングの机でしてました。いずれ必要になったらその時買います」

「えらいわね。リビングで勉強するのって、効率的って聞いたことあるわ」

「いえ、母がいつも見てくれて・・・・」

「これからは私がいますよ。マスター」

 ちょっと暗くなりそうなところで、すかさずリリアが助けてくれた。

「そうね。ああ見えて明も相当頭がいいのよ。でも、多分教える、となると全く当てにはならないはずよ。彼、“できる”けど“教えられない”人だから」

「どういうこと?」

「彼、空間で把握してるの。パッと見た瞬間、答えが浮かぶんだけど、それを言葉にしようとすると、フリーズするの。たぶん“どうして分かったか”自分でも説明できないのよ」

「……つまり、天才ってこと?」

「残念ながら、教育者失格の天才ね」

「そんな時には、マスターには私が最適な方法でお教えして差し上げます」

「ありがと。リリア」

「まあ、リリアがいれば100人力だと思うけど」

「4.8テラ人力です」

「……ものの例えよ、リリア」

「了解しました。次回から“非数値比喩”として認識します」

「ま、そんな感じで。この家の教育係は、私とリリアでなんとかするわよ」

「うん。……ありがとう。なんか、ちょっと、楽しみになってきたかも」

「じゃあ、このテーブルは配送してもらいましょう。さすがにマンションまで持っていけないわ」

「はい。次はベットですけど・・・リビングに置かせてもらうとしたら、あまりちゃんとしたのではなくて・・・叔父さんと同じ感じで簀子にマットレスにしようと思います」

「そうね。まだどうするか、とか、いろいろあるしね。いいんじゃないかな。シンプルなの。嫌いじゃないよ」

「ありがとうございます。でも枕!枕には拘りますよ。睡眠の質は、枕で7割決まるんです。あと、私、横向きで寝るので、低反発は絶対条件です!」

「そうね。でも枕に拘る小学生って、ちょっと面白いかも」

「リリア、おすすめ3つ挙げられる?」

「了解しました。ランキングとレビュー評価を統合した、最適な3枕をリストアップいたします」

 その他、掛け布団や毛布、スタンドなんかも買って、なんだか新生活ぽい雰囲気で気分が盛り上がってきた。

 葵の携帯が鳴った。ほのかからだった。

「うん……わかった。警察から事件性なしって報告があったのね。ご遺体は葬儀場に搬送……ありがとう、手配感謝するわ。……え?葬儀の形式? ああ、そうね……」

 葵さんは会話をスピーカーモードにして、結月にも聞こえるようにした。

  「結月ちゃんのご両親、宗教的なご希望って聞いてた?仏教式でいいかしら?」

  「えっと……(少し考える)ママ、クリスマスとか、ちゃんと教会に行ってた気がする……」

  「そういえば、ご両親って海外の研究者とも親交が深かったわよね。もしかしてキリスト教式……?」

  「うん。パパが“ママは学生のときにイギリスで洗礼を受けた”って話してたの、思い出した。だから……それでお願いできますか?」

  「わかったわ。教会の手配はこちらで進める。牧師さんにも連絡しておくからね」

 電話を切った。

「結月ちゃん。お家に送らなくてよかったの?」

「だって、もう、あの家には・・・・」

「そうね。ごめんなさい」

 私は思い出し、また泣きそうになった。

「じゃあ、一旦戻ろうか」

「はい」

 そういうと私たちは購入したものを軽トラに積んで、言葉も少なく家路についた。


 玄関を開けると、ほのかさんが待っていてくれた。

  「おかえり。警察から連絡があったわ。事件性はなしと判断されて、今、遺体は葬儀場に移送中よ」

  「ありがとうございます……」

「葬儀場には、DeepLeadCompanyの佐々木さんにも連絡しておいたから、式の準備は進んでると思う」

  「さすが、ほのか。準備が抜かりない」

 ほのかは腕時計を見て、キリッとした顔になる。

  「私、一旦家に戻って喪服に着替えてくるわ。葵も準備して。明って喪服持ってるの?」

「えーと……前にスーツ買ってこいって言ったら、喪服買ってきたのよ。たしかそのまま取ってあるわ」

  「なんで喪服!?」

「本人いわく、『一番ちゃんとしてるやつ=喪服』って理屈らしい」

  「……もう、どんなロジックよそれ。ある意味すごい正解なんだけど。まあ、それならいいわね。今晩は式場で泊まりになるわね」

「うん。火葬場は明日、予約しておいたから。ただ、親戚とかどうするか・・・」

 リリアが口を開く

「神崎康太と神崎雅子には、両親ともに他界。近い親戚は明だけです」

 二人がハッとした。

「じ、じゃあ、あまり気を使わなくてもいいわけね」

 ごほん、と咳払いをして

「明、あんた自分で着替えたら、結月ちゃんのお家に行って、結月ちゃんの服、着替えたら式場に来てね」

「あいよ。でもどんな服?ちゃんとした服、結月ちゃん、持ってる?」

「あんたじゃないんだから。でも、そうか。結月ちゃんどう?」

「おじいちゃんのお葬式の時、着た服があります。大丈夫です」

「よし。じゃあ決まり。皆んな、動きましょう。明は着替えてきて」

 ほのかさんは着替えに帰っていき、明叔父さんは喪服に着替えるために寝室に向かった。

「大丈夫?」

 葵さんが優しく声をかけてくれた。

  「大丈夫そう?」

  「はい。この前、いっぱい泣かせてもらったので……でも、ちょっと……」

  「そうよね。それが普通だから。今日は、私もほのかもいるから。泣きたくなったら、我慢しなくていいのよ」

  「はい……ありがとうございます」

 その時、奥の部屋から声がした。

  「おまたせ〜」

 リビングに現れた明おじさん。

  喪服らしきスーツに身を包んでいるが――ネクタイが、まっ白だった。おまけに靴下まで白い。

 葵が一瞬、何も言わず、ピクピクと頬を引きつらせたあと、

  「……あら、早かったのね。って、どこの世界に葬式に白ネクタイで来る奴がいるのよ!!」

「え、でもこれ、清潔感あるし。ちゃんとしてる感じしない?黒もあったんだけど、あれってさ、ちょっとヤンチャ系っていうか……なんか、オレいけてます!みたいで……」

  「バカか。そういうのは“ちゃんとしてる”って言わないの。いますぐ黒に着替えてきなさい」

「でも」

「デモもデバックもない!今、すぐに、行け!」

「はい、はい」

 明叔父さんが、すごすごと戻っていく。

「本当、油断もすきもないんだから」

「叔父さん、きっと私を笑わせようとしてくたんですよ」

「まぁ、いい子ね。本当に明と血のつながりがあるのが不思議よ」

「大丈夫ですので、葵さんも着替えに行ってください」

「本当?でも靴と靴下は気をつけてね。明日の着替えも。あの兵六玉。油断も隙もないからね」

 私はケラケラ笑い。

「はい。注意しておきます」

「じゃあ、いくわね。明、靴下も黒よ!分かってる?」

「はいはい」

「じゃあ、お願いね。リリアも、よろしくね」

「わかりました。葵さん」

 玄関のドアが閉まると、あれだけ騒がしかった部屋が急にシン……と静かになった。

  その静けさに息をのむ間もなく――

「お待たせ〜」

 明叔父さんが、今度はちゃんと黒いネクタイに黒い靴下をはいて現れた。

  さっきの白ネクタイ&白靴下コンボからは、確かな進歩を感じる。

「叔父さん、明日の着替えも持った?」

 明は得意げにリュックを指さす。

  「バッチリ!じゃ、行こうか!」

 そう言って、ジャラジャラと軽トラの鍵を鳴らしながら玄関へ。

  ……そして、無造作にサンダルを履いた。

「……叔父さん、靴。」

「ん?これ?いい靴だぞ。通気性抜群、クッション性も高いし――」

「ダメです。葬儀には革靴でお願いします。」

「えー、なんだよ。葵みたいなこと言うなよ〜」

「お・ね・が・い・し・ま・す(圧)」

「……はい、はい」

 ようやく革靴に履き替えた叔父さんと並んで、私は玄関を出た。

  鍵を締めると、少しだけ、気持ちに区切りがついた気がした。

 叔父さんは軽トラで私の家まで送ってくれた。家の鍵を開けると、シンと静まり帰っていた。叔父さんと一緒にリビングに入っていくと、出て行った時のまま、そのままの状態で残っていた。もう片付ける人もいないことに改めて思い知らされた気がした。私は自分の頬を一回ピシャリとはたいた。

「叔父さん。ちょっと待っててね。着替えてくるから」

「ああ。ここで待ってるよ」

 そういうと、ソファに座って、雑誌を手にとってパラパラめくっていた。

 クローゼットの奥から、ママのスーツケースを引っ張り出した。

  深い紺色で、角に少し擦り傷がある。ママが最後に使ったときから、そのままだ。

 私はそっと開けてみた。ほんの少しだけ、ママのシャンプーの匂いが残っていた気がした。

 胸の奥が、ぎゅっとなった。

 このスーツケースは、私が幼稚園のとき――パパとママが私を連れて海外出張に行ったときに、ママが使っていたものだ。

 パパのスーツケースは、機内に持ち込める小さなサイズで、荷物も最小限。

  一方で、ママのスーツケースは大きくて、私とママの着替え、おもちゃ、絵本、おやつ……いろんなものがパンパンに詰まっていた。

「出張なんてつまらないもの、家族で楽しくしなきゃ損よ!」って笑ってたママの声が、今も耳に残ってる。

 出張先の研究所で、秘書さんがちょうど私と同い年ぐらいの自分の子供を連れてきていて、託児所で一緒に遊んでくれたのだった。言葉はわからなかったが、折り紙を教えたら喜んでくれて、特に鶴を折るのが気に入ってくれて、一緒に夢中になっておって遊んだことを覚えている。彼女、キャロラインって言ったっけ。

 私は、そっとそのスーツケースを閉じて、自分の部屋に運び、着替えや教科書を詰め始めた。ブラウスに黒っぽいスカート。ジャケットはお食事に行くとき用に買ってもらったものに着替えた。どれも思い出がある服だったが、それらをまとめてスーツケースに詰め込む。

「リリア。私。がんばるよ」

「結月さん。そんなにがんばらなくても大丈夫です。彼らは頼れる大人です」

「そうね。そうだわ。私、一人じゃないのね」

「そうです。私もいます」

「よし!。いこう」

 私たちは1階に降りてきた。

「叔父さん。お待たせ」

「ホイ。じゃあ、いこうか」

「忘れ物とか、聞かないのね」

「そりゃ、いつでもこれるしね。ここは結月ちゃんのうちだよ。これかもね」

 そう言って、私の頭をポンポンとしてくれた。たまには大人のようなこともできるのだと感心した。って、よく見たら靴下のがらが左右で違ってる。

「チャー。まあ、いいか」

「どうした?」

「いいの。行きましょ」

 小さな私の一歩が、ちょっとだけ大きくなった気がした。


 式場につくと、佐々木さんと葵さん、ほのかさんが全て整えていてくれた。キリスト教の形式ということで、シンプルなものになっているようだった。葬儀場の一室に、白い布に覆われた棺が静かに置かれている。

「こっちよ」

 葵さんとほのかさんが私の手を握ってくれた。棺に入っているパパとママの顔をみた。特に目立った傷もなく、眠っているようだった。

 ボタボタ、と涙がこぼれ落ちた。二人が私をぎゅっと抱いてくれた。私は葵さんのお腹に顔を埋めて、しばらく泣いていた。ほのかさんが優しく頭を撫でてくれていた。明叔父さんが、そっと促して、椅子に座らせてくれた。

 祭壇には十字架と、故人の写真。あたたかい色合いの花がその周囲を囲んでいた。香典返しも、焼香もない。

 静かな賛美歌が小さく流れてきた。

 神父は落ち着いた声で聖書を朗読し、

  「わたしたちは、ここに、神崎康太と恵の人生を讃え、その魂を主のもとへ送り出します」と語る。

 結月はじっと座ったまま、葵とほのかの手を握りしめていた。目を閉じると、あの笑顔が思い浮かんだ。ママの、そしてパパの――。

 葬儀が終わると、明・葵・ほのか、そして結月の4人だけが残った。誰からともなく自然に椅子を寄せ、丸くなる。

 明おじさんは頭をかきながらつまりながらこんなことを言った。

「……俺、なんか言わなきゃいけない気がするんだけど、うまく言葉出ないわ」

「無理して言わなくていいよ。あんたの一番苦手なことじゃん、そういうの」

「でもさ……これで、結月ちゃんはひとりじゃなくなった。少なくとも、今日この場にいる私たちは、“家族”ってことで、どう?」

 私は頷いて、

「うん。ありがとう……」

「じゃあ、まずは慶太兄ちゃんと雅子さんのご冥福を祈りながら、新しい家族に」

 そういうと、お酒の入ったグラスを掲げる。

「今晩はここに泊まって、明日出棺になるの。結月ちゃんも疲れたでしょ。ゆっくりしなさい」

 葵さんとほのかさんもグラスをあげる。私は葵さんに寄りかかりながら、ジュースの入ったコップを見つめた。

「ヒック!おい、おい。なんで結月ちゃん、3人もいるんだ?よーし。3人でも4人でも、何人でもドンとこい。この明様がオブジェクトで一まとめに面倒をみてやるよ」

 バタン。と倒れたと思うと、グーグーといびきが聞こえきた。

 私はびっくりして

「叔父さん、大丈夫ですか?」

「あちゃー。そういえば、明、絶望的にお酒に弱いのよね」

 葵さんがそう教えてくれた。

「あら、あら」

「ふふ」

 葵さんとほのかさんが呆れた声で笑っていた。私もつられて笑ってしまった。しばらく葵さんとほのかさんは話をしていたが、私は昼間の疲れもあって、いつの間にか葵さんの腕に抱かれて眠ってしまった。

 リリアがスマホから小声で

「家族が増えました。おめでとうございます」

 と言ってくれた気がした。


 翌日出棺し、火葬が終わったあと、私たちは静かにお骨を拾い、教会の納骨堂に収めた。

 最後の別れではあったけれど、不思議と「さようなら」ではなく、「またね」という気持ちだった。


「ふいー」

 明のマンションに皆んな帰ってきた。ほのかさんは今日仕事をおやすみしてくれた。

「皆んな。お茶でいい?」

「俺、モンスターで」

「ダメ。今日は仕事ないでしょ」

「チェ」

「ピンポーン」とチャイムがなった。先日購入したダイニングテーブルが届けられた。中に入れてもらい、組み立ててもらった。

 ようやくリビングにダイニングテーブルと椅子が設置された。

 じっとテーブルを眺める4人。

「俺、ここ」

 奥の壁があるところを示す。

「明、あんた、壁際好きね」

「落ち着くんだよ」

「じゃあ、私、明の向かいね」

「私、明叔父さんの隣で」

「じゃあ、私は結月ちゃんの向かいね」

 それぞれが席に座る。

「お茶、持ってくるね」

 そういうと葵がキッチンに向かった。今まで床にあぐらで、お尻が痛くなっていたが、それに比べると格段に健康で文化的になった。

 葵がお茶を持ってくると、みんなでずずっとのみ、ホーっと一息つく。

 ほのかが、学校に連絡しておきましょう。といって携帯を取り出す。こういったことに気がつくので、大変ありがたい。

 なんだかドタバタとして、何週間も経過した気がするが、まだ両親の連絡が入ってから4日たっただけだった。

「来週から新学期だけど、大丈夫?先生、1週間ぐらいお休みしてもいいっていってくれてるわ」

「大丈夫です。来週からいけます」

「そう。あまり無理しないでね」

「多分。大丈夫です。無理はしません。葵さんもほのかさんも頼りにしていますから」

「あら。ありがとう」

「俺は?」

「ある意味、とても刺激的で、気を抜けない存在です」

「え、褒められてる?けなされてる?」

「「さあ、どうでしょう」」

 二人が同時に答える。

「じゃあ私たち、帰るわね。明、できないと思うけど、少なくとも結月ちゃんに迷惑かけないでね」

「俺だって、大人だぜ」

「結月ちゃん。困ったことがあればすぐにグループラインに送るのよ」

「はい。よろしくお願いします」

「よし!」

 といって、二人が帰って行った。明叔父さんと二人になってしまったが、全く気にしている様子はなかった。

「夕飯、モンスターでいい?」

 すかさずリリアが答える

「良いわけがありません。成長期の子供に必要なのは、タンパク質・糖質・脂質・ビタミン・ミネラルのバランスの取れた食事です」

「叔父さん。お買い物、一緒にいってもらえますか?」

「おう。いつでもいいぜ」

「必要なもの、書き出しますね」

 そういって私は先日見た絶望的なキッチンを思い出す。

「リリア、リストアップできる」

「もちろんです。結月の健康で文化的な食事は私にお任せください」

「カロリーブロック食もあるんだぜ。これは、エネルギーも栄養も十分なんだけどな・・・」

「だまらっしゃい」

 ピシャリとリリアが言った。

「それでは、リストを表示します」

  主食系(エネルギー源)

 精白米(2kg)

 食パン(6枚切り×2)

 うどん(冷凍)3玉

 スパゲッティ(乾麺)1袋



 タンパク質

 鶏むね肉(2枚)

 豚ロース薄切り(200g)

 豚ひき肉(300g)

 卵(10個パック)

 納豆(3パック×2)

 木綿豆腐(2丁)

 牛乳(1L×2)

 プロセスチーズ(スライス)



  野菜・果物

 にんじん(2本)

 玉ねぎ(3個)

 キャベツ(1/2個)

 ブロッコリー(冷凍でもOK)

 じゃがいも(2個)

 バナナ(1房)

 りんご(2個)



 調味料類

 塩

 こしょう

 醤油

 みりん

 砂糖

 顆粒だし(和風)

 コンソメキューブ

 サラダ油

 ごま油



  保存食・便利アイテム

 冷凍ミックスベジタブル

 レトルトカレー(2食分)

 フリーズドライの味噌汁(子供向け)



 生活消耗品

 食器用洗剤

 スポンジ

 キッチンペーパー

 ラップ

 指定ごみ袋(極小・小・中)

 このほか、醤油差し、タッパーなどが示されていた。

「さすがリリア。完璧よ。この荒涼としたキッチンには、これだけのものが必要よね」

「お褒めにあずかり光栄です」

「じゃあ、明叔父さん。車、お願いします」

「よしきた」

 二人で近所のスーパーに買い出しにきた。しかしこれだけのものを購入するとなると、二手に分かれないと、時間がかかりすぎてしまう。

「叔父さん。主食系と野菜・果物、お願いできますか?」

 リストを共有し、叔父さんのスマホでも見れるようにした。

「おうよ。任せとけ」

「じゃあ、リリア。私たちは残りのを集めてきましょう」

「はい。この店舗のデータはすでに解析済みです。場所も値段も大丈夫です」

「助かるわ。じゃあ、行きましょう」

 私たちは二手に分かれて、必要なものをカゴに入れ始めた。

 私の方は、順番もリリアが教えてくれたので、品目の割に15分ぐらいで全てカゴに入れおわった。しばらく売り場をうろうろして、叔父さんが来るのを待っていると、ようやく姿が見えた。

 私はカートの中を見て愕然とした。

「叔父さん。これは・・・」

 主食系

 高級食パン「金の食パン」(1袋)

 プレミアムパスタ(なんと生パスタ)

 米ではなく「玄米フレーク」(シリアル)



 野菜・果物

 レタス2個

 カットサラダ(しかもドレッシング付き)×3

 フルーツヨーグルト詰め合わせ(「果物」カテゴリに入れたらしい)

 トマトジュース(=野菜扱い?)

 ドライフルーツ(「フルーツ」って名前だからOKと思った模様)



「叔父さん……リストの“野菜”って、生の野菜のことですよね?」

  「いやー、切ってある方が早いかなと思って。あと、ヨーグルトにもフルーツ入ってるし」

  「これは……買い物じゃなくてナゾナゾですね。あと、ひょっとしてキャベツとレタス、見分けがつかないんですか?」

「ほら、丸いやつ、だろ。知ってるぜ」

 とレタスを指さす。

 リリアが静かにフォローを入れる

「栄養素としての一部要件は満たされていますが、コスト効率と調理の多様性に著しく欠けます」

 叔父さんはバツが悪そうに頭をかきながら:

  「そもそも“青果コーナー”って、文字が小さくて見づらいんだよ。あとナスが全部キュウリに見えた」

 結月はため息をつきつつ:

  「リリア、来週から叔父さんの買い物補助アプリも開発してください。あと、野菜については、写真も入れるようにして、どんな見た目かもわかるようにしなきゃダメね」

「了解しました。“大人用やさしい買い物ナビVer.0.1β”を開発開始します」

 もう一周お店の中を巡って、リストと実物を突き合わせて、覚えてもらうようにした。叔父さんはぶつぶつと「おっかしいな。いつの間にそんな風に変わったんだ。野菜も品種改良が進んだんだな」とか言っていた。


 その時、私の携帯がなった。表示にはDeepLeadCopmanyの佐々木さんと出ていた。私は昨日のお葬式の話かと思い、明叔父さんに佐々木さんから、と言って電話に出た。

「もしもし」

「もしもし。昨日は大変ご苦労様でした。

 ご両親のご逝去に際しまして、あらためて心よりお悔やみ申し上げます。ご葬儀も滞りなく執り行われたようで、関係者一同、安堵しております」

「こちらこそ。いろいろありがとうございました」

「いえ。神崎康太様と雅子様には我が社としても開発の中心を担ってもらっていたので、そのお礼も兼ねて、当然のことをしたまでです」

「本当にありがとうございました」

「ところで、主任の部下の一人が少し変なことを言ってましてね。神崎主任がさらに拡張されたシステムを作っていた、と言ってましてね」

「そうなんですか。ちょっと待ってください」

 私はスピーカーにして、明叔父さんの方をみた。

「叔父さん。佐々木さんから、お父さんの仕事で聞きたいことがあるみたいなの」

「はい。お電話、代わりました。神崎明です。」

「これはどうも。昨日はお世話になりました。すみません。うちの神崎が開発していたAIシステムなんですが、部下の一人が変なことを言ってましてね。どうも神崎博士が一人で拡張システムを作ってた、なんてことを言ってまして」

「そちらの企業でチームで作っているAIでしょう。そんなの一人で拡張できるもんじゃないでしょう」

「そうなんです。だから我々も全く信じていないんですけど、念のためお聞きしている次第です。彼のいうことには<Learning-Interactive Assistance>だとかなんとか・・・心当たりなんて、ないですよね」

 明叔父さんははハッとした顔をしたが、そんなことはおくびにも出さず

「聞いたことがありませんね。いくら兄が天才だって、そんなの一人じゃ無理ですよ」

「そうですよね。いや、失礼しました。気にしないでください。では、これで失礼します」

「はい」

 私には二人の会話が全く理解できなかった。ただお父さんが開発しているAIということで、ひょっとしたら、という気持ちもあった。

「・・・明叔父さん」

「ん?」

「今の話、リリアと関係がある?」

「そうかもしれない。けど、佐々木さんには今のところリリアのことは秘密にしておこう」

「どうして?」

「それは私からもお願いします」

 リリアが答えた。

「私は純粋に結月さんのみをお守りするよう設計されたAIです。他の命令やシステムへの干渉は全てオミットされます。ですので彼らの言う拡張システムではありません」

「そうよね。リリアは、教育支援AIだものね」

「はい。そうです。結月さんの成長をお守りする史上最高のAIシステムです」

「おい、おい。自分でいうかね」

「だまらっしゃい」

 また明叔父さんが怒られた。リリアはだんだん叔父さんに容赦がなくなってきているみたいだ。叔父さんは少し真面目な顔をして

「なあ結月ちゃん。リリアのこと、できれば僕らの中だけで使ってもらえないか」

「いいけど、どうして?」

「ほら、あれだ。そんな自称優秀なAIを持っているなんて、宿題とかずるしてるんじゃないかって思われるかもしれないじゃん」

「そっか。そうだね」

「私の溢れでる知性が結月さんにご迷惑をおかけすることもあるのですね」

「自慢がすぎるぞ」

「レタスとキャベツの見分けがつかない人から何を言われても、私の処理カスケードに響きません」

「ぐぬぬ」

「まあ、まあ。じゃあ、食材も揃ったし、帰りましょう。あと、ホームセンターにもよってもらえますか?」

「?いいけど、何が必要なの?」

「踏み台が欲しいんです。あのキッチン。私にはまだ大きくて」

「そっか。じゃあ、ホムセンに寄ろう」

「お願いします」

「結月ちゃん。俺には敬語、必要ないからね。そう言うのは尊敬に値する人に使ってよ」

「でも」

「こそばゆい、っていうか、慣れない、っていうか。ほら、家族って、そんな言葉使わんだろ。あと叔父さん、ってものそろそろ変えないか」

「そうね。私もだんだん敬語が出てこなくなってきたところなの。そうさせてもらえると嬉しいわ。・・・じゃあ、呼び方は、、、明パパさん。オジパパ、、」

「うぁ。なんか、不純な感じがプンプンする。パパはダメじゃね」

「そうかな」

 私はまだその辺はよくわからない。

「明100%が有名ですが」

 リリアが口を挟む

「それ、全然違うでしょ」

 叔父さんはきっちり突っ込む。

「そうだな。パパとかとうさん、ではなくて、兄貴的な感じの方がしっくりくる気がする」

「じゃあ、アキにぃ、は」

「いいね。それ、一番しっくりくるな」

「父としての貫禄も威厳もないから、ちょうどいいかもしれません」

「なんか、俺、うらまれることした?」

「結月さんの生命を脅かす買い物をしました」

「いや、あれは、ほら、アメリカンジョーク、ってやつだよ」

「威厳もなければジョークのセンスも皆無なのですね。同情します」

「おい、おい、Aiに同情されちゃったよ」

「リリア、アキにいは大切な私の保護者よ。もう少し教育的に接してあげて」

「はい。マスター。承知しました。アキにい矯正プログラムで彼を一人前の大人に修正していきます」

「修正って」

「だまらっしゃい」

 私はふたりのやり取りで、すっかり明るくなってきた

「じゃあ、アキにい。ホムセンにお願い」

「あいよ」


 ホムセンによって踏み台を買った私たちは、ようやく家に帰ってきた。

「じゃあ、早速私、夕飯の準備するわね」

「俺も手伝おうか?」

「アキにいは休んでいて。リリアと一緒にやってみて、できないことが出てきたらお願いするわ」

 私がキッチンで準備をしているころ、明叔父さんは一人、仕事部屋に向かっていた。

 部屋に入ると鍵を閉めて、明は葵に電話をかけた。

「もしもし、葵。ちょっと厄介なことになってるかもしれない」

「どうしたの明。珍しいわね」

「さっき結月ちゃんの携帯にDeepLeadCopmanyの佐々木から電話があったんだ」

「昨日のお悔やみ?」

「それもあったけど、なんか慶太にいちゃん。会社で開発したAIの拡張システムを作成していたみたいだ」

「それって」

「ああ。佐々木は<Learning-Interactive Assistance>っていいてたけど、これ頭文字つなげるとリアになるじゃん」

「やっぱり」

「ああ。あんな拡張システム、絶対まずいって。もしあれがバレたら、一発で拘束されちまう。それどころか、あんな化け物システム、軍事転用されたら・・・」

「ええ。そうね。これは一大事ね」

「幸いリリア自体はかなり制限がかかっているシステムになっているみたいだけど、一応俺もあとでシステムの構成なんかを調べてみる。けど、あんまり期待しないでくれ」

「明が手におえないなんて、すごいのね」

「畑が違いすぎるからな。ただ、この思考、子供の頃、なんか思い出すんだよな」

「子供の頃?」

「そう。にいちゃんと遊んでとき、こんなことがあったんだ・・・。よく覚えてないけど」

「明、気をつけてね」

「ああ。とりあえずごまかしておいたから。あとにいちゃんのことだ。絶対セーフティーがかけられてる」

「セーフティー?」

「ああ。トロージャン。絶対仕掛けてるはずだ」

「それ、踏んだらどうなるの?」

「最悪、ハッカーを情報の世界から消してしまう、ことぐらいはしそうだな」

「おっかないのね」

「ああ。兄貴、怒るときは容赦ないからな」

「まあ、とにかく、リリアのこと絶対に他言無用で頼むぜ」

「分かったわ。ほのかには私から伝えておく」

「あいつ、企業の特許がどうのとかいいそうだけどな。まあ、伝えてくれ」

「任せて。ほのかはちゃんと分かってくれるわ」

「そうだな。いざって時には法律でなんとか結月ちゃんを守ってもらおう」

「そう言った面では心強いわね」

「ああ。俺はいい友達を持った」

「彼氏もね」

「もちろんだ。葵。じゃあ、よろしく頼むよ」

「任せて」

「じゃあ」

 そう言って明は電話を切った。


 私はお米をといで、ジャーに入れた。リリアに生姜焼きの方法を教えてもらって、豚肉に下味をつけて焼いた。お味噌汁はお豆腐を切って、出汁の粉末を入れて火にかけた。カットキャベツをさらに盛り分けて、焼いた豚肉を載せる。豚肉には火が通り過ぎた間もあるが、リリアがセンサで熱の様子を確認してくれたので、それなりの出来栄えになった気がする。結構時間がかかってしまったが、そこは今後の課題としよう。

「よし!」

 私はお盆に乗せて、リビングに戻った。アキにいは作業部屋にいるようだった。ノックをしようと思ったらドアが開いた。

「おっ。いい匂いがするな」

「ご飯。できたよ」

「やった。じゃあ食おう」

 私たちはリビングに戻って、テーブルに隣同士に座った。

「「いただきます」」

 二人で声を合わせて言った。アキにいは味噌汁を一口飲むと

「美味い!」

 と言ってくれた。まあ豆腐を切って、味噌を入れただけだけど。

 次に生姜焼きを一口食べたところで、目を白黒させた。

「おい。これ、こおゆう味付けなのか?」

 私も一口食べてみた。甘い。なんか、甘い。

「リリア。なんか甘いわ」

「少しお待ちください。製造過程をプレイバックします・・・・。わかりました。醤油を入れる工程を抜かしてしまってます」

「そうか。通りで」

 私は慌てて

「アキにい。残して。これ、美味しくないわ」

「いや。味の六角形ってあるだろ。今、そのうちの塩味だけが足りないからこうなってるんだよ。だから、ちょっといいか」

 そいうと私とアキにいのお皿を持って、キッチンに行く。そこから大きな声で

「リリア、一皿にどれだけ醤油、入れればいい?」

「計算では2mL程度です」

「オッケー」

 しばらくして、レンジが完了の音がして、アキにいがお皿を持ってきた。お醤油の良い匂いがしている。

「これで食べてみな」

 私は恐る恐る一口食べてみた。

「あっ。美味しい。すごく、美味しい」

「だろ。途中までしっかり作ってあったからな。失敗じゃなくて、未完成だっただけさ」

「私、てっきり失敗しちゃったと思ったわ。アキにい、すごいのね」

「いや。僕はプロセスを考えて、調理の反応を予測して、結果の修正をしただけだよ。こんなのデバックしてればしょっちゅうさ」

 そういうと、アキにいはちょっと真面目な顔をした。

「結果なんてのはね、簡単に修正できるんだよ。失敗することは悪いことじゃない。むしろ最初はいっぱい失敗した方がいいまである。じゃないと、個々のステップの意味がわからず、結果として全体が理解できないからね」

「明のくせに良いことを言いますね」

 リリアがチャチャを入れる。

「人をなんだと思ってるんだ」

「でもすごいわ。アキにい。私、失敗は取り返しのつかないことだと思ってたわ」

「取り返しなんて、どっからでもつけられるよ。要は諦めないこと、じゃないかな。もちろん諦めの必要だけどさ」

「明のくせ・・」

「リリア、ちょっと黙ってて。それって、どんな時にも言えるのかな?」

「もちろん溢れたミルクは元には戻らないさ。でも溢れたミルクを使ってミルク煎餅にすれば、さらに美味しいものが食べれるんだ。要は視点の変換と求める結果との調整じゃないかな。知らんけど」

 そう言って、アキにいは少し照れていた。

「そっか。そうね。とっても素敵ね」

「生きてりゃ失敗もすれば、うまくいかないことなんてしょっちゅうさ。そんなことでイチイチ落ちこむより、もっと楽しいことにつなげようって方がよっぽど楽しくないか?楽しくなければ、人生じゃねえよ」

 私はママが言っていた<家族で楽しくしなきゃ損よ!>って言葉を思い出し、大人の強さの秘訣みたいなのを知った気がした。

 リリアがこう聞いてきた

「最悪の結果でも、救われることはありますか?」

 結月が一瞬「えっ?」って表情を見せてから黙って明の答えを聞いている。

「ん?珍しいな。リリアが質問なんて。ああ。もちろんさ。どんな失敗でも、最悪の結果でも、誰かの死であっても、今いる人たちで乗り越えて、さらにパワーアップして楽しくすることだって可能さ。だって、今、生きてるじゃん。それだけで、勝ったも同然さ」

「そうでしょうか」

「そうさ。これは間違いないぜ。この人類史上最高の明様が言ってるんだ」

「自分で言いますか」

「じゃあ、誰がいうんだよ。言ったもん勝ちさ」

「アキにいらしい。ママと一緒だわ」

「ああ。というより、慶太にいちゃんからの受けうりだけどな」

「パパからの・・・」

「ああ。楽しくなけれりゃ、人生じゃない、ってね。きっと、最後まで楽しく研究してたんじゃないかな。こんなAi作ってたんだから」

「もちろん、いつも楽しそうでしたよ。遊び心いっぱいで。本当に子供みたいでした」

「兄貴はいつもそうだ。だから、結月ちゃんも楽しまなくっちゃ」

「私もちょうどそれを言おうとしたところです」

「ありがとう。リリアも。なんか、わかったような気がするわ」

「なんか説教臭くなっちゃったな。さあ、食べよう」

 私たちはドレッシングの好みや、お漬物のこだわりなんかを話しながら、楽しく食事をした。

「ねえ。アキにい。お願いがあるの」

「なんだい。改まって」

「できればどんなに忙しくても、ご飯の時には一緒にいて欲しいの」

「そうか」

「やっぱり、一人で食事は、ちょっと悲しくなっちゃうの」

「ああ。そういうことなら、OKさ。葵にも言っておくよ」

「朝もよ」

「エッ!!朝も!それは、ちょっと」

「お願いです。1日の始まりは笑顔のある食卓、希望です」

「朝から絶望させちまうかも・・」

「ダメかしら」

 リリアが「大丈夫です。どんな手を使っても起こしますよ」と言ってくれた

「分かった。分かったら。大丈夫。ドンっと任せな。頼むから穏便にな」

「人の皮膚の比抵抗はおおよそ10^5〜10^6オーム×メートル、電導率に換算すると10〜100マイクロジーメンスです。

 よって、20V未満の電圧であればタンパク質の熱変性温度(およそ42℃)には達しません。

 物理的覚醒刺激としては安全圏です。お任せください」

「あのな、俺は物理法則で動く機械じゃないの!人間なの!」

「把握しています。ですが、どちらも電気信号で制御されています」

「リリア。大丈夫なの?……ちょっとだけ怖くなってきた」

「ご安心ください。出力は法定範囲内です」

「じゃあアキにい、お願いね」

「まあ、がんばるよ」

 食べた食器は二人でざっと水洗いしたのち、食器洗い乾燥機に入れて、洗い物を終わらせた。

「じゃあ、明日から学校だな。早くおやすみ」

「はい。アキにい。おやすみなさい。アキにいも明日、無事に起きてきてね」

「お、おう。まかせとけ」

 そういうと、アキにいは仕事部屋に戻って行った。私は歯を磨いてから寝ることにした。明日から4年生だ。新しいクラスはどんなだろうか。


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